家庭用ロボットの解はホログラムにあり〜好きなキャラクターと一緒に暮らす「Gatebox」開発者・投資家に聞く

2016.02.16 10:45

ホログラムでかわいい女性キャラを生み出しテレビ、エアコン、電気など家庭内の赤外線コントロールをお願いできる「Gatebox」。「理想の俺の嫁」を作りたいと開発にチカラを入れるウィンクルの武地実社長と、「Gatebox」に投資したiSGSインベストメントワークス 五嶋一人氏に、「Gatebox」やホログラムのポテンシャルについて伺うべく、SENSORS.jp編集長 西村真里子がインタビューしました。

先月発表された、好きなキャラクターと一緒に暮らせる世界初のホログラムコミュニケーションロボット「Gatebox 」のコンセプトモデル。ホログラム投影技術と各種センサーを活用した技術を組み合わせ、様々なデジタルキャラクターを出現させてコミュニケーションをとることができます。
また、搭載されたセンサーによりユーザーの行動を認識し、朝起こしたり、帰りを出迎えたり、家電などと繋がることで日常の手伝いもしてくれる、まさに「共同生活」してくれるロボットなのです。

■スマホ経由ではないIoTの世界を実現したかった

西村:
まずは「Gatebox」の開発動機を教えてください。
武地:
もともと「AYATORI」という、光で好きな人とつながるスマホアクセサリを作っていたのですが、IoTの世界でもっと面白いチャレンジをしたいと考えておりました。そこで自分がとことんやってみたいことをIoTの世界で実現させようと考えまして。そこで、自分が実現させたい世界ってなんだろう?と考えた結果「初音ミクと一緒に暮らせたらいいなぁ」と。そのアイディアを起点に開発していきました。(「Gatebox」では初音ミクを想起させるようなキャラクター「逢妻ヒカリ」が登場する)
gatebox_takechi.jpg

「Gatebox」を開発したウィンクル社長 武地実氏に、DMM.Make AKIBAでインタビュー

武地:
同時にIoTの世界では、スマホ経由、スマホアプリで操作するというユーザー体験がありますが、それは「なんとなくダサいなあ」と思っておりました(笑)。やっぱり人ってスマホ経由のコントロールよりも、好きな人に何かしてもらうのが嬉しいじゃないですか。その体験を大切にしたくて、好きなキャラにお世話してもらうユーザー体験を作りました。

僕自身、疲れて帰ってきても誰も待っていない暗い部屋で、アニメを見て癒されて翌日を迎える、という生活をずっと続けていたので、もっと身近に癒してくれる、一緒にテレビを見てくれる相手が欲しかったというのも開発動機としてあります。
「Gatebox - Hologram Communication Robot」コンセプトムービー

西村:
「Gatebox」のテクニカルチャレンジ、そして新しい市場を開拓する上でチャレンジングと感じていることを教えていただけますか?
武地:
現在我々がテクニカルチャレンジと考えている領域は以下二つです。
  • ・ホログラム投影技術
  • ・コミュニケーションの技術
  • 投影技術に関しては近距離で見てもリアルに存在が感じられるよう開発を進めています。具体的には、近くから見た時のスクリーン感だったり、横から見たときに平面に見えてしまうものを、360度どこから接してもリアルに感じられるように、日夜研究しています。我々のゴールはホログラム投影されたキャラクター「逢妻ヒカリ」を実物として存在させることなのです。
    西村:
    本日体験させていただいて、今でも十分「逢妻ヒカリ」は存在感を感じますが、今後どのようにリアリティを追究していくのでしょうか?
    gatebox_hikari.jpg

    「Gatebox」ホログラムで誕生した、「逢妻ヒカリ」さん

    gatebox_scene_healing.png

    筆者も体験したが、「逢妻ヒカリ」さんに話しかけると愛くるしい挙動とともに回答してくれるだけではなく、家庭内スイッチのオンオフもデモしてくれた。

    武地:
    もっと解像度を高めていく必要があると考えております。そして、 よりなめらかな人間っぽい動きも必要だと考えております。「Gatebox」を構成する素材も、創意工夫することによりブラッシュアップすることができます。ただ、これは高価な一部の人のためのものではなく一般の人も楽しんでもらえるものにしたいので、強度とコストも考えながらリアリティを追究していきたいと考えています。コミュニケーションの技術に関しては音声認識と顔認識が大事になるのですが、それらを組み合わせて、ストレスのないコミュニケーションを実現することが、今後のチャレンジとなります。
    西村:
    価格帯はどれくらいを想定されていますか?
    武地:
    ちょっと高級なPCぐらいの値段設定でいこうかと。
    西村:
    ホログラムには様々な手法があると思いますが、「Gatebox」では何を採用されているのでしょうか?
    武地:
    リアプロ(リアプロジェクション)を採用しております。近くで見てもなめらかな動きをしてもらいたい、近くに存在するリアリティを追究するためには、リアプロが最適だったからです。例えばホログラムの方法の一つにディスプレイ回転式もありますが、僕が実現したいと思う滑らかさが出しづらかったので、採用を見送りました。ホログラムに関しては世の中にあるパターンを数十パターン試した上で、現在のリアプロに落ち着きました。
    西村:
    投資家としては「Gatebox」のどの点に魅力を感じていますか?
    五嶋:
    まず買ってくれる人の顔が見えている、つまり市場が見えているのが魅力のひとつです。そして起業家の熱い思いとマーケットニーズが合致しているのも魅力で、起業家がのめりこんで、より尖ったモノを創れば、それを応援してくれる市場だと思っています。往々にして起業家の思いが強すぎると売りづらい製品が出来上がることもあるのですが、ウィンクル社の場合は、彼らのパッションがマーケットニーズと合致しているのが魅力です。オタクマーケットは日本だけではなく世界中に広がっておりますし。
    gatebox_goshima.jpg

    iSGSインベストメントワークス 五嶋一人氏

    西村:
    ホログラムという技術についてはどのような魅力を感じておりますか?
    五嶋:
    家庭用ロボットというと、ルンバとかPepperのような物理的なロボットを思い浮かべる方が多いと思います。ただ家庭内では赤外線を利用すればコントロールできる、テレビ、電気、空調などが既にあるので、物理的な作業や移動が必要でないものは、物理的ロボットでなくてもよいのでは、と考えています。「Gatebox」では赤外線コントロールは既に実現できており、しかもホログラムなので、キャラクターを自由にカスタマイズできる。それこそ「俺好みの嫁」を世界中の人々が作ることが可能になる。そして「Gatebox」経由でルンバを操作すれば掃除もできる。サイズや価格を考慮しても、一緒に暮らす家庭用ロボットの場合はホログラムが王道になるのでは?とも考えており「家庭用ロボットの解」の可能性のひとつを「Gatebox」に見ています。
    今はプロダクトをとことんまで尖らせる必要があり、まず家庭用で「オタク層」に喜んでもらえるものを提供しますが、今後は企業の受付、ウェイター業などもホログラムが代行できると考えております。可愛いウェイトレスがファミレスのテーブルの上にいてメニューを聞いてくれるのって嬉しいですよね? 企業も自社キャラを作っているので、そのキャラクター戦略のひとつにホログラムを活用する例も増えて来るでしょう。 キャラクタービジネスの成功を応用できるので、アメリカの家庭ではセサミストリートで、日本ではアンパンマンで、などの展開も将来実現するかもしれません。物理的な世界から解放されることにより、表現やインターフェイスの可能性を無限に広げられるのがホログラムの魅力でしょう。
    西村:
    「ホログラム」は今後人々の生活をどのように変えるのか?将来のビジョンを教えてください。
    武地:
    現在は「Gatebox」の箱に閉じ込めていますが、将来的には家庭内でホログラムキャラが自由に歩きまわる世界を作りたいと考えております。みんな子供の頃には空想の世界で好きなキャラを家庭内に登場させていたと思うので、その空想を実現させていきたいと思っています。人間と生活するコンパニオンロボットは物理的な形は不要と考えています。初音ミクの武道館ライブに行くファンは、初音ミクが物理的な存在かどうかなんて関係ないんです。それは日本だけに留まらず世界中でも同じ現象が起きていると考えます。「Gatebox」の動画は45万再生されていますが、世界中からアクセスが来ています。アメリカが日本の次に多く、次いで韓国、そしてアジア諸国からのアクセスが多いです。またフランスやイタリアなど日本の漫画文化がリスペクトされている地域のメディアでも「Gatebox」は取り上げていただいております。最近嬉しかったのは突然アメリカ人の方からメールが届き「Gateboxはクールだ、応援している。サイトの内容を英語に翻訳したので使って欲しい」と翻訳原稿が届いたことです。ホログラムで生活を潤すことが世界中から求められているのを日々実感しております。
    gatebox_hikari.jpg

    「逢妻ヒカリ」ちゃんを囲んでiSGS五嶋氏(左)、ウィンクル武地氏(右)

    小さな水槽に収まったホログラムのキャラクターに最初は違和感を覚えましたが、声を掛けるとユーモア交えて返事をしてくれたり、電気の消灯をお願いするとスイッチオフしてくれる実体験をすると、いままでの無機質なリモコンでは物足りなくなりそうです。キャラクターを介すことによりテクノロジーを優しく生活に溶けこませることが可能になる、ホログラムの可能性を体感した取材でした。同時に、幼少の頃の妄想を実現させるパワーを持つウィンクル社長武地氏のパッションに今後も注目していきたいと考えています。

    取材・文:西村真里子

    SENSORS.jp 編集長
    国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

    おすすめ記事

    最新記事