博報堂アイスタ「HACKist」の"のびのび"した創作物たち

2015.05.22 22:14

「博報堂アイ・スタジオ」に所属するクリエイターが有志で集い、通常業務とは別軸に、独自の制作活動を展開する社内ラボ「HACKist」(ハックイスト)。今年で2回目の開催となるハックイストの作品展示会にSENSORSが訪れた。最新のWEB・デジタル技術を応用した遊び心溢れる作品たちを紹介していく。

会場全体の様子

「博報堂アイスタジオ」は博報堂グループの中でもデジタルやインタラクティブコンテンツに特化した制作集団。通常業務ではクライアントの課題解決に向けたWeb、モバイルアプリ開発・運用などが主となるが、HACKistでは、有志で集まった所属メンバーが、業務外の時間を利用して通常業務では行うことができない独自のアプローチから新しいモノづくりに挑戦する。

トーカブルベジタブル

以前SENSORSで取り上げた、触ると語り掛けてくれる野菜「トーカブルベジタブル」もスダラボとHACKistの共同開発の成果。"デジタルとリアルを掛け合わせて新しい価値"を作り出すことを念頭に活動しているHACKistは、5月16日(土)~17日(日)に、これまでに手がけてきたトーカブルベジタブルを含めた12作品(+飛び入り1作品)を展示する「DIGITAL FRAGMENTS」を原宿で開催した。その全作品を紹介する。

■どっちに転ぶかわからないメッセージカード「Schrödinger」

Schrödinger

会場に入ってすぐのカウンターで展示・販売されていたのが「Schrödinger」(シュレーディンガー)。タロットカードをモチーフにしたメッセージカードで、受け取った相手は記載されているQRコードからメッセージを読み取ることができる。メッセージはあらかじめ2通りのものが用意されている。例えば「こんど動物園いこうよ!返事待ってるね!」「今年はもっと仲良くなりたいな。」というもの。友達としての親睦と深めるものと、恋愛対象として距離を縮めるようなもの。いずれにせよ、少し奥手な送り手に何かしらのアクションを促すことができるカード。2通りのメッセージはぞれぞれパターンがあり、シーンに合わせた使い方ができる。販売価格は200円。

■WEBでカスタマイズしたオリジナル・ロケットを打ち上げる

Customize Journey

Customize Journeyは、タブレット上の画面でカスタマイズして作ったロケットを、宇宙空間を模したPCブラウザ上の画面に飛ばすことができる作品。カスタマイズするロケットのパーツでロケットのスピードが異なる。PC画面の宇宙空間上には、他のユーザーが作成したロケットが浮遊している。タブレットとデスクトップPCのWebSocket通信で実現されている。また、Customize Journeyの開発者は、SENSORSでも紹介した空飛ぶペンギン社「フォトシュシュ」にも関わっていた。

■スマホ2台を使用した次世代「FAX?」装置

POSTIEと著者が手書きした「こんにちは」

POSTIEは2台のスマートフォンを使用したFAXのような装置。一方のスマートフォンで、タッチで手書きしたり、スタンプを使用して作成したメッセージを送りたい相手に送信する。すると、相手のスマートフォンが受信して、専用の機器からメッセージが印刷されて出てくる。紙はレシートと同じものを使用しており、動作中の受信側スマートフォンの画面は、キャラクターの目がキョロキョロと動いていた。

■声入力で家電を操作

「でんせつ」のデモの様子

"でんせつ"はスマートフォンに声入力することで家電を操作できる。家電と紐づいている専用のタブレットに表示されているQRをコードを自分のスマートフォンで読み取ると、ブラウザ上に声入力の画面が表示される。その状態で「電気をつけて!」と声を吹き込むと、机に取り付けられた電飾が光るというデモンストレーションを披露していた。

■表情が変化するインタラクティブアート

Vincent

Vincentは人が近づくことで様々に表情が変化するアート作品。何もないキャンバスにUnityで読み込んだ手書きイラストをプロジェクションし、超音波センサーをもちいて作品と人の距離を判別して表情を変化させる仕組みだ。

■自分の発する「ヤバい」のやばさを判定

「ヤバい」

私たちが日常で何気なく使う「ヤバい」。そんな「ヤバい」の深刻度を客観的に認識させてくれるのがこの装置だ。手前のマイクに向かって、自分が「ヤバい」と思うシーンを想像しながら「やば~い」と吹き込む。すると、そのヤバさを0~100の数値で表現してくれる。体験後の「いまどんなヤバいこと想像してたんですか?」「いや~...実は銭湯の入浴中にロッカーの鍵を無くしちゃって...」という展示スタッフとの何気ない会話が楽しかったりした。

■東京の地下鉄網を3Dグラフィックで表現

metrogram3D

当日飛び入りに近い形で展示を行っていたのが、metrogram3D。東京メトロ オープンデータ活用コンテストをきっかけに生まれた作品。東京メトロの駅の座標を用いることで、地下鉄の線路をWebGL上に立体的に再現することを可能にしている。普段何気なく乗っているだけではあまり意識することのない東京の地下がこんなにも入り組んでいるということを気づかせてくれる作品だ。

■笑顔を検知して撮影する自撮りツール

Smilfie Pod

Smilfie Podは、カメラが機動しているタブレットの前にたったユーザーの笑顔を識別して自動で写真を撮影してくれる。タブレット自体には笑顔認識の機能を持たせているだけなく、タブレットに付随している白いBOXに笑顔を認識するセンサーが取り付けられている。撮影した写真をその場で印刷することもできる。

■立体物で音楽を奏でるプレイヤー

Dimensions Record

回転するターンテーブルの上にブロックを積み木を組み立てていくと、その凹凸に応じた音楽を奏でることができるプレイヤー。テーブルに付随したスタンドから超音波を発することでブロックの凹凸を検知する仕組みだ。

■画面の"お持ち帰り"ができるタンジブル・アート

Clippable CODE

Clippable CODEでは、スクリーン上でユーザーが任意に選択した範囲をタップするとQRコードが表示される。そのQRコードをスマートフォンを使って読み取ると、選択した範囲の画像がスマートフォンに表示され、画面「お持ち帰り」ができるというもの。展示では東京の鉄道路線図の切り取りができるデモが披露されていた。

■あなたの声で色が変化する宝石

声色アレキサンドライト

ユーザーの声を検知して色を変化させるジュエリー。男性ならば青色に、女性ならば赤色に変化させるなど、その人にしか出すことができない色パターンが出すことを目指したプロトタイプを展示していた。

■お互いの居場所を確認し合えるウェアラブルデバイス

without words

ペアリングされた2台のウェアラブルデバイス。片方のデバイスを押すと、それに反応してもう片方のデバイスが光る。混雑した場所での待ち合わせの際に、お互いを見つけるための用途で使われるシーンが想定できる。

■クリエイター達によるのびのびとした創作活動

"社内ラボ"「HACKist」の活動は、業務で使える技術を獲得するためのスキルアップや、他の仲間と切磋琢磨することで仕事のモチベーションコントロールのために役立っているのだろう。展示会に訪れるまでそのように考えていた。しかし、実際に展示を行っているクリエイターの方々と会話をしていると、それとは少し様相が異なるらしい。もちろん仕事のことを意識していないわけではないが、それぞれの所属メンバーそれぞれが遊んでいるかのような純粋な気持ちで創作活動を楽しんでいるようだ。「普段はクライアントのための制作物をつくっているので、自分のつくりたいものをのびのびとつくれる環境はうれしい。」という声も聞くことができた。

もともとWEB領域に強みを持つ会社が母体であるだけに、WEBの最新技術を応用した展示が目立ったが、スクリーンの中から飛び出してユーザーとのより強いインタラクティブ性を実現しようとしているチャレンジも垣間見ることができた。HACKistは次はどんな遊び心を溢れる作品を見せてくれるだろうか。

取材:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、大手企業とスタートアップの共同事業開発支援や、VR領域のスタートアップに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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