メディアアートに触れ、未来を占う。ICC「オープン・スペース 2016」レポート

2016.07.07 16:30

国内でも数少ないメディア・アートの展示を中心とした文化施設、NTTインターコミュニケーションセンター(以下、ICC)。現在、ICCで会期中の「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」展は、メディア・アート作品をはじめ、現代のメディア環境における多様な表現をとりあげ、幅広い観客層に向けて紹介する展覧会だ。

クリスタ・ソムラー&ロラン・ミニョノー 《ポートレイト・オン・ザ・フライ》 2015年

ICCは、日本の電話事業100周年の記念事業として、1997年に東京オペラシティタワーにオープンしたNTT東日本が運営する文化施設。オープン以来、展覧会活動では、ヴァーチャル・リアリティやインタラクティヴ技術などの最先端テクノロジーを使ったメディア・アート作品を紹介してきた。20周年を目前に迎え、先日ウェブサイトがリニューアルされ、これからの未来に向けた意気込みが感じ取れる。

定期的に行われる「オープン・スペース」 では、メディア・アートにおける代表的な作品、先端技術を取り入れた作品、批評的な観点を持つ作品、さらに研究機関で進行中のプロジェクトなどを展示。作品を楽しむだけでなく、その背景にある現代の多様化したメディアやコミュニケーションの在り方について考えるきっかけとなることをめざした展示となる。

11回目になる今回のオープン・スペースのテーマは、「メディア・コンシャス」。メディアに意識的に対することで新たな価値を見出していくという、メディア・アートの持つ性質に焦点をあてた展示という概要だ。さまざまなメディアによって表現された展示中の作品をいくつかを紹介する。

明治大学 渡邊恵太研究室「インタラクションの現象学 人間の輪郭、世界体験の変容」

ICCは、東京・初台駅に隣接したビルの4階にある。館内入ってすぐに展示された数十点の作品は、インタラクションデザインに関する研究を行う、渡邊恵太氏を中心にしたグループによるもの。iPhoneを使ったIoTの要素を含んだ計量カップや、マウスカーソルの軌跡をシミュレートした作品など、インタラクション要素を盛り込んだ作品たちは、見た目がシンプルだが明確な意図があり制作されているので、キャプションを読むと研究結果の観点の鋭さがわかる。

津田道子《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》 [2016]

階段を登った上の階の開けたスペースには、枠が12個吊るされている。スクリーンが貼られた枠、鏡が貼られた枠、筒抜けの空の枠、そしていくつかに向けてプロジェクターに映像が投影されるインスタレーションが行われる。鑑賞者をプロジェクションする、鏡で枠内に反映する、など空間内を移動するだけで何が本当に実在するのか惑わされる。視覚を試される展示に驚かされた。

藤井直敬+GRINDER-MAN+evala《The Mirror》2015年

手頃な価格のヘッドマウントディスプレイが発売されて身近になり、未知の視覚体験を求めて盛り上がるVR。本作は、ヘッドマウントディスプレイとヘッドフォンを装着して着座することで約8分間の没入型体験ができる。VR特有の仮想現実にどっぷり浸かる没入感とは違い、鏡をテーマにしながら現実と仮想現実を行き来する。理化学研究所脳科学総合研究センター適応知性研究チームにより開発された、SRシステム(Substitutional Reality System:代替現実システム)を使っている。

藤本由紀夫「ランデヴー」

会場の一角には、作家活動の長い藤本由紀夫の過去の作品が並び、軌跡を辿る個展的な意味合いも強い。テーマは「聴く」こと。レコードプレイヤーからカセットテーププレイヤー、そして旧型のMacintoshまで、音が記録されるさまざまなメディアをモチーフにした作品がずらりと並ぶ。メディアの多様性と歴史を感じ取ることができる。また施設に常設されている無響室内(まったく音の響かない部屋)での体験型の展示「still life」も、シンプルながら時間を音で感じさせる内容。

他には、ビットコインをテーマにした作品や、3DCGによるインスタレーションなど、多様なメディアを使った作品が並び、今後は真鍋大度率いるライゾマティクス・リサーチとアートコムによる企画展も12月から開催される予定。テクノロジーの進化によってメディアアートを制作しやすくなり、チェックしきれないほど作品が増えている現状だが、厳選されたメディアアートに触れたいのなら本展に足を運ぶべきだろう。

写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
撮影:イトウユウヤ

会期:2016年5月28日(土)〜2017年3月12日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11 時〜午後6時
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日),年末年始(12/29-1/4),保守点検日(8/7,2/12)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

取材・文:髙岡謙太郎

ライター / オンラインや雑誌で音楽,カルチャー関連の記事を執筆。共著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』など。

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