120組のアーティストが参戦「インターネットヤミ市」〜ネット時代の"今"を表現する

2016.10.26 12:00

インターネットに関するモノや体験を売るフリーマーケット「インターネット ヤミ市東京 2016」が、2016年10月16日(日)に、小学校を改装した施設「アーツ千代田3331」の体育館内で開催された。ヤミ市といっても違法なものが売られているわけではなく、何が出てくるかわからないヤミ鍋なニュアンス。インターネット上の秘密結社「IDPW」によって発案された、日本発のフリマ形式のルールはオープンソース化され、現在は世界各国で行われる。

インターネットが自由だったのは昔の話。失言をすれば炎上、法に触れることをすれば通報、間違えてクリックすれば即課金、街中の「Free Wifi」と書かれたアクセスポイントの大半は無料ではない。インターネットは規約と広告と課金に囲まれてしまった。まるで監視カメラが増えたショッピングモールを歩いているかのよう。そんな空気感になる前から行われていたイベントが、このインターネットヤミ市だ。

昨年はニューヨークなどで行われ、今回日本での開催は3年ぶり。久々の開催はタイムラインを湧かせ、当日の出店者は120組超となり、結果2000人以上が来場。ネットで体験できないネット感に湧き、会場内の室温が上昇するほどの盛りあがりとなった。では、当日出店したブースの一部を紹介していこう。

・体験型ブース

会場入ってすぐのブースにあった、バーチャルろくろ(略してVR)。センサーの前で捏ねる仕草をすると、ディスプレイ内の粘土がゆがむ。そして製作した粘土のデータは、別料金を払えばプラスチックもしくは陶器に3Dプリントできるという、sngazmさんのチームによるブース。

ロードサイド、つまり国道沿いを走行できるドライブシミュレーター。チェーン店が建ち並び、殺風景な地方の街並みを体験できる。ログインすれば、オンラインでユーザー同士が同時に走行可能。ネットレーベル、つくしレコーズによる作品。

・データを現実化?

大便の絵文字の3Dデータを3Dプリントした「Internet Real Shit」と題された作品。見た目の可愛らしさもあってか、びっくりすることにこれが完売。3Dプリンタのノズルの詰まりから発生したピュアグリッチのバージョンもあり。アーティスト、やんツーさんによる作品。

インターネットでは匂いを転送できない。そのジレンマを作品にしたもの。インターネットに関するデータを香水を作る業者に託し、作ってもらったオリジナルの香水がハコの中に入っている。アーティストuraunyさんによる作品。

・データを販売

ブースの上には、QRコードの紙の入った空の弁当箱。QRコードを読み込むことで、弁当のおかずの3DCGデータがダウンロードできるという、「バーチャル手作りお弁当」。プロゲーマーアーティスト志望のつきちゅうさんによるブース。

パソコン内にあるミニコミのデータを、Air Drop機能を使って、スマホに転送して販売。テーマは果物料理。書評サイト「ブックニュース」を運営する永田さんとデザイナーkuroki keigoさんによる、現代ならではの販売方法。

・ネットで遠隔操作

自宅の蛍光灯のスイッチを押せる権利を販売。登録者はサイトにアクセスすることで、出店者の部屋の明かりをオンオフできる。まさにIoT。鹿くんさんによる作品。

ディプレイ内のSkypeの先では、ミシンが待機。ネット越しに刺繍が注文できるという、 サービス。他にはラッパーECDのチャリティTシャツを販売。インターネット発のヒップホップクルーT.R.E.A.Mによるブース。

・海外からの参加者も

画像データファイルを破壊することで歪んだ画像を作る手法、グリッチ。その画像データを衣服に転用した作品を販売。ヤミ市のためにアメリカから来たJeff Donaldson さんによる作品。

謎のインドのVFX会社「VFX TECHNOLOGIES」も出店。パソコンからは制作した動画を上映。インドからCEO本人も来日して名刺を配っていた。動画を見てもらいたい。

・他にもいろいろ

「iPhoneのホルマリン漬け」と称して、部品をホルマリン漬けにした作品。外側のみを綺麗に取り出した「iPhoneの剥製」や、イベント終盤では、Macbookの空箱を売ったりもしていた。

パソコンで設定されたWi-fiにログインすることで、今までに行ったことのある場所を占ってくれる「Wi-Fi占い」。セキュリティに詳しい人は仕組みがわかるはず。ギークハウスによるブース。

会場は出店だけでなく、インターネットに詳しい方々による教室も設けられた。こちらはメディアアート研究者の水野勝仁さんによる、ポスト・インターネットに関する講義。5枠行われ、毎回満席。ディスプレイ越しに文章を読むよりも理解が早く出来たはず。

日本各所に点在するインターネットに関心の高いコミュニティが集合して、参加者や客同士がネットでは語り尽くせなかった話題に盛り上がった。これだけの人数が参加して楽しんだイベントはなかなかないだろう。筆者は東京での開催に毎回参加していて、インターネットっぽい感覚が楽しむ人が以前より増えたことを目の当たりにした。技術の進化や受け手の感性によって、インターネットへの捉え方は時代によって変化するので、今後の開催ではどう表現されるのか気になるところだ。

取材:髙岡謙太郎

たかおかけんたろう: オンラインや雑誌で音楽,カルチャー関連の記事を執筆。共著に『Designing Tumblr』『ダブステップ・ディスクガイド』『ベース・ミュージック ディスクガイド』など

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