石垣島を「クリエイティブ産業の島」に 人に根ざした地域活性のあり方

2015.11.27 09:00

広大な青空、綺麗な海とサンゴ礁、独自の島文化が織りなす伝統芸能。日本最南端の自然文化都市である「石垣市」は従来、サトウキビやパイナップル、石垣牛といった農畜産業、美しい自然を売りとした観光の2つを生業にしてきた。そんな石垣市が3本目の産業の柱に据えようとしているのが「クリエイティブ産業」だ。その狙い・背景を、石垣市役所 企画政策課の多宇 直之(たう なおゆき)さんに尋ねた。

東京出張中の多宇直之さんを直撃

■美しいデザインのふるさと納税サイト

石垣市ふるさと納税 特設サイト( https://ishigaki-furusato.jp/ )

「クリエイティブの力で石垣の活性を」まさにその決意を体現するかのように今年9月に立ちあがった「石垣市のふるさと納税」特設サイト。ECサイトで買い物をするかのような感覚でふるさと納税ができてしまう。シンプルなつくりが特徴のこのサイトは、地元沖縄県のベンチャー企業である琉球インタラクティブ社との協力によって立ち上がった。

昨年1年間で石垣市に集まったふるさと納税額は約1,000万円。今年の9月10日にサイトをオープンしてから1ヶ月半ほど運用した10月末の時点で、既に1,300万円を超えるふるさと納税が行われているという。

多宇:
ふるさと納税ののプロジェクトでは、島の特産品を集めたり、協力してもらう業者を探すのにも苦労したのですが、何よりも協力してくれる方々に「クリエイティブ」への意識を高めてもらうことに苦労しました。"シズル感"のある写真素材を使い、見た目やデザインで付加価値をつけること。これは当たり前のようですが、とても大切なことです。

■石垣市のビジネルモデルとその課題

石垣市がデザインや見た目といった「クリエイティブ」にこだわるのは、それ自体を産業を新しい柱に据えていきたいという狙いがあるのだ。

石垣の美しい海(写真提供:琉球インタラクティブ )

--石垣市が「クリエイティブ」に力を入れる理由はなんでしょうか?

多宇:
石垣市は農畜産や観光といった産業に支えられている都市です。ところが、農畜産業は日本のTPP参加で先が不透明で、観光業に関しては過去にリーマンショックの煽りを受けて観光客が激減したという経験があります。ならば、安定的な三本目の産業の柱をつくるべきだと考えました。

趣きある民家( 写真提供:琉球インタラクティブ )

多宇:
その三本目の柱を何に求めるべきか。石垣市にはエネルギー資源もないし、企業誘致をできるほどの人口もいない。そこで考えたのは「人」でした。つまり、人を介したフィー(手数料)ビジネスです。今の時代、パソコン1台とネット環境さえあればどこでも仕事ができる。物理的なものを送る必要も在庫も抱える必要もない、アイデアや知恵を使って仕事ができるデザインやアートといった「クリエイティブ」の仕事を石垣市の主要な産業にしようと考えました。

■クリエイターコミュニティ「石垣島Creative Flag」

石垣島 Creative Flag( http://creativeflag.com/ )

そこで石垣市が立ち上げたのは「クリエイティブで島を盛り上げる」ことを目的にしたクリエイターコミュ二ティ「石垣島Creative Flag」だ。石垣在住のクリエイターはもちろんのこと、親族が石垣在住であったり、子どもの頃に石垣に住んでいたことがあったり、石垣島に「ゆかり」のあるクリエイターならば誰でも参加することができる。デザイナーやプログラマーだけでなく、染め物が得意であったり、彫刻・彫金師まで様々な技能を持つクリエイターが50人程度所属。設立当初は石垣市が運営を行っていたが、今では一般社団法人として民営化され、銀河ライターの河尻享一氏らを理事に迎え、石垣を盛り上げる活動を日々実施している。

-- 行政が主導してクリエイターコミュニティを立ち上げということですが、その過程で工夫した点などはありましたか?

多宇:
通常、役所の仕事は細かく計画を立てて、その通りに公平・公正に、慎重に進めていくという仕事の仕方をします。しかし、「石垣島Creative Flag」に関しては入口と出口だけを決めて、その間はあえて決めませんでした。入口とは、現在の石垣市が抱える課題設定。出口とは、クリエイティブ産業、すなわち「文化産業」を確立するという目的です。クリエイティブの仕事は厳密な計画なものと進めるのではなく、過程にある"遊び"の部分こそが重要であると考えています。そのために、私たちはあえて計画の部分は決めませんでした。

-- 東京や他のクリエイティブ集団とはどのように差別化をするのですか?

多宇:
私たちは「競争」はしません。Creative Flagのメンバーの作品は、綺麗な海やサンゴ礁、独自の島文化や伝統芸能にインスパイアされたものが多いです。他のところと、競争をしてしまえば、最終的には価格競争になってしまうでしょう。だから、私たちは、オリジナルなもの、石垣を素材にしたものを重視して、そこに価値を感じてもらおうと考えています。

■石垣島を若い人で活気あふれる島に

-- 確立を目指されている「文化産業」は石垣市にどのような影響を与えるでしょうか?

多宇:
若い人が石垣に来て、人口が増えたり、街自体に活気が生まれることですね。「クリエイティブ」に注目したのには若者から人気だからということもあります。石垣市は高校までしかないので、高校を卒業したら島を出る選択をする人がとても多いです。そうした若い人たちに石垣にまた戻ってきてもらいたい。幸いにも、石垣市はデータ上では2025年までは人口は増える計算ですが、その時がピークです。なので、今のうちから若い人のためにクリエイティブ・文化産業で仕事をつくり、帰ってきてもらう下地を整えているのです。

-- それは「Iターン」や移住促進にも一役買いそうですね。

多宇:
もちろんです。ゆくゆくは石垣は観光だけでなく、「仕事をしに来る場所」になってほしいです。学校の空いているスペースにインターネット環境整備した一時的なレンタルオフィススペースを設けて、都会の会社の人たちが「一ヶ月だけ石垣で仕事をする」といったこともできないかと考えています。そうして、石垣に興味を持ってもらって、若い人に移住してもらう。若い人が増えると、ひょっとしたら恋も生まれて、もっと人口が増えるなどどいうこともあると思います。

今回、取材に応じて下さった多宇さんも元々は東京在住で石垣市に移り住んだという経歴を持つ。東京では不動産の競売を担当しており、物件をどうやって売るかと考えているうちにクリエイティブやデザインに興味を持つようになったと語る。

石垣島が持つ魅力は言うまでもないだろう。都会の喧騒を離れ、豊かな自然と個性あふれるクリエイター達に囲まれ、石垣で「仕事」をしてみてはどうだろうか?

取材:石塚たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。面白法人カヤック所属。@takerou_ishi

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