『カマコンバレー』鎌倉の地元愛で結び付くイノベーター達

2015.06.04 11:50

SENSORSオープンイノベーション連載第2弾「面白法人カヤック」。カヤックは、鎌倉を愛するIT経営者らを中心とする「カマコンバレー」をリードする存在だ。各業界のトップランナーも多く参加することで注目を集めているコミュニティの裏側を代表の柳澤大輔(やなさわ だいすけ)氏にCreww石井こずえが訪ねた。  

■鎌倉を愛する人達が集う"カマコンバレー"

鎌倉周辺に拠点があったり、在住しているIT企業の経営者を中心とする鎌倉を盛り上げるためのコミュニティ「カマコンバレー」。IT企業のメッカ「シリコンバレー」と鎌倉を掛け合わせた造語だ。月1のペースで参加者同士が集まって定例会を行い、鎌倉を盛り上げるアイデアを出し合い、そのアイデアに反対する人がいなければすぐに動き出すことができる。つまり、全員がジブンゴト化してプロジェクトを推進することができる。参加者はエンジニアリングやデザイン、地元のネットワークなど自分たちの得意分野を生かしてプロジェクトに貢献する。立場や肩書を越えた鎌倉を愛する人達による運命共同体。それがカマコン(鎌魂)バレーだ。

面白法人カヤックの柳澤大輔氏もカマコンバレーの活動を盛り上げる一人。なぜ「鎌倉」がこれほどまでに愛されるのか尋ねてみた。

柳澤:
鎌倉のロイヤリティが高い理由は、敢えて選んでそこに住んでいるからだと思います。海があって山があって、昔ながらの寺・神社があって、街全体に風情がある。古き良きもののにおいがするんですよ。昔から変わらないものがありつつも、新しいことも取り入れている。それがコンパクトに纏まっているんです。

■"T部長"こと土屋敏男氏が主導する「鎌倉今昔写真」

カマコンバレーでは既にいくつかのプロジェクトが実行されているが、その中でも「鎌倉今昔写真」( http://kamakura.konjyac.com/ )は他の地域にも同様のモデルが展開されるなど注目を集めた施策だ。これは電波少年でおなじみ、現在はLIFE VIDEO社( http://www.lifevideo.jp/ )の社でカマコンバレーにも参加する土屋敏男(つちや としお)氏が主導して行われた。お年寄りを中心に昔の写真を持つ方と、ボランティアの学生がチームを組む。昔の写真と同じ撮影ポイントを探索し、その場所で今の様子の写真を撮影する。同じ地点で撮影した今と昔の写真を比較する形でアプリを通じて配信するというもの。

今昔写真の肝は、アプリそのものでなく、写真を撮影することを通じて若者とお年寄りの交流を促すことである。実際に参加したお年寄りがものすごく喜んでくれたという。福井県の鯖江市をはじめ各地方自治体で同様のプロジェクトが実施された。

カマコンバレーについて語る柳澤氏

このプロジェクトには面白法人カヤックも参画しており、プロジェクト立ち上げ時の逸話を柳澤氏はこう語る。

柳澤:
最初、土屋さんからの提案があったときは今と昔の写真を比較する「アプリ」がメインだったんですけど、僕たちはずっとインターネット・モバイルの分野でビジネスをやってきて、アプリはそう簡単にダウンロードされないことがわかってたんですよ。そんな時、以前鎌倉の防災イベントを企画した際に、関東大震災を経験したおじいちゃんたちのリアルな話を若者が聞くというのがすごく好評だったのを思い出して「これだ!」って思いました。人と人とをつなげる「イベント」の要素を取り込むというアイデアを土屋さんと一緒に考えて実現しましたね。土屋さんは成果物へのこだわりはものすごいけど、とても気さくな人で、全然めんどくさくないんですよ(笑)。みんなのことを楽しませようとするし、他のメンバーも多分友達みたいな感覚で接してますよ。

テレビ的なオールドメディアの発想と、ネット的なデジタルメディアの発想が自由に行き来するのもカマコンバレーならではの魅力。それが実現できるのも、地位や肩書にこだわらない大らかな人たちによって構成されているからなのだろう。余談だが、柳澤氏と土屋氏は一緒の電車で通勤したり、共に旅行に行ったりする仲だそうだ。

■カマコンバレーモデルで地方を元気に

柳澤氏と横浜オフィス

現在の面白法人カヤックの中心機能は横浜オフィスに集約されているが、鎌倉本社と比べれば比較的簡素なオフィス設計になっている。横浜は仮住まいで、いつかはまた鎌倉本社を中心に活動したいと思いがあるようだ。そんなカヤックの鎌倉本社は、今はスタートアップらが入居するシェアオフィスとして使われている。特筆すべきなのは、デザインやエンジニアリングに精通した専門人材が集まっている場所なので、「Webサイトをつくりたい」、「インフラネットをつくりたい」といった地元の人達からの「よろず相談所」のような役割を担っているということだ。

柳澤:
本当はどこの街にもそうしたクリエイティブに強い集団がいればいいですよね。誰でも自分の住んでいる地域を盛り上げる活動って楽しいし。帰ったら気の置けない仲間がいて、専門家を巻き込んで地域を盛り上げて、その地域がもっと好きになる。そんな世界が鎌倉以外でもつくれると思ってるんですよ。

今昔写真館が各地で展開されるなど、カマコンバレー発のアイデアが他の地域にも浸透しつつある。こうした「地元愛」に根差したプロフェッショナル達が、会社や業種の垣根を越えて連動し合い汎用的な新しいイノベーションを生み出す。これも一つの「オープンイノベーション」の形だ。カマコンバレーから次はどんなアイデアが誕生するだろうか。

取材:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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