アーティストとして、ファッションリーダーとして chayがファンの心を掴む理由

2016.09.09 09:30

8月15日〜21日、渋谷のFabCafe Tokyoで行われた「SENSORS SHIBUYA FASHIONCODE WEEK」19日にはクリエイティブディレクター・箭内道彦氏がMCを務める「風とロックとHulu」、同じく箭内道彦氏が理事長を務める「渋谷のラジオ」とコラボした、公開生放送トークイベントを実施。ゲストとして登場したのは博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー・原田曜平氏と、シンガーソングライターでファッション誌CanCamのモデルも務め、若者のファッションリーダー的な存在であるchay。 渋谷という場所で、ファッションと若者について考えるトークを繰り広げた。

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この公開生放送では「ゲストからリスナーへの質問をする」という番組のコンセプトのもと、ゲストが会場の観客、そしてラジオの向こうのリスナーへ呼びかける。 chayからの質問は、「chayのことを好きになった理由」。 会場にはchayのライブに毎回参加するというファンも詰めかけ、客席からもさまざまなコメントが飛び交った。

◼︎テレビ出演をきっかけに世界がガラリと変わった

小学生の頃から音楽にのめり込み、ピアノで作曲をしては学校の友達に聞かせたりしていたというchay。大学生になり、本格的に歌手を目指すためにギターの練習を一日に6〜8時間も続けていた。現在は歌手として音楽活動を中心に行っているが、その名前が最初に広く知られたのは全く別のルートだった。

chay:
一軒家で共同生活をするというテレビ番組に出演したことで、それまでとは全く違う世界に入ってしまったという感覚がありました。たしかに自分は昔から周りの人に誤解されることが多かったのですが、放った言葉や、行動がテレビの向こう側の人にまで間違って伝わってしまう状況に戸惑いました。テレビを見ていた女子高生から電車の中で直接心無い言葉をかけられることもありました。
箭内:
chayさんには初めてお会いしましたが、とてもピュアな方という印象を受けます。言葉や行動に嘘があるように見えない。面と向かっているとなんだか自分の内面を見透かされているように思うのかもしれませんね。それに対する反応として、少々きついバイアスがかかってしまうのかもしれない。
「愛の反対は無関心」とマザーテレサがいうように、嫌われる、というのも人の心を動かしている証拠で、その意味でchayさんは人の心に訴えかけることのできる力が大きいんですよね。
原田:
最初から人のことが大好きになってしまうと、あとは嫌いになっていくだけになってしまう。最初に嫌われたとしても、いまはSNSなどで自分のことを発信する機会が多くなっているので、挽回するチャンスがありますよね。事実chayさんは現在歌手として、多くのファンが居ます。
箭内:
お客さんの中にも、テレビでのchayさんは嫌いでも、音楽を聴いて好きになったという人が多いのではないですか?
観客:
全力で歌う姿や、歌詞に共感することが多くて、歌を聞いてから大好きになりました。言葉選びが丁寧で、素直な感情を表現しているところが好きです。つらいときchayさんの歌に救われることもありました。
箭内:
会場のファンの方も見ている限り笑顔の素敵な方が多いですよね。
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番組のMCを務める箭内道彦氏(写真右)とゲストのchay(写真左)

◼︎︎誰の真似もしない。「まいまい売れ」ムーブメントを起こす秘訣とは

chayは、現在女性ファッション誌「CanCam」のモデルも務めている。テレビ番組のなかで彼女が来ていた私服が爆売れするという現象に「まいまい売れ」という名前がつくほど、彼女の私服のセンスは同年代の女性の心を掴んでいる。歌手としてではなく、ファッションリーダーとしても絶大な支持を得る理由とは。

箭内:
買い物はどこでしますか?やはり渋谷?
chay:
事務所が渋谷にあるので、よく109やマルイで服を買います。CanCamのテイストに近い、女の子らしい服装が多いですね。
原田:
参考にしている女の人などはいますか?
chay:
流行りに疎いので、そこはすっぱり諦めて、自分がいいと思ったものをとにかく着ます。おばあちゃんやお母さんも洋服が大好きなので、家族三代でファッションについての情報共有をしますね。あとは、ライブに来てくれたお客さんと洋服の情報交換することも結構あります。ファンの方はみんないい人で、お店のことやいいお洋服について教えてくれます。
原田:
chayさん自身がいい洋服を選ぶお手本になっているんですね。だから誰かの真似をする必要もないのかもしれません。
箭内:
確かに、お客さんもchayさんと同じ雰囲気の方がとても多いですね。
観客:
chayさんがTwitterで紹介している、実際に通っている美容院に自分も行かせてもらっています。同じ場所で切ってもらったり洋服を参考にすると、chayさんに似ているかどうかなど、周りの目を気にするようになって、自然とおしゃれになっていきます。
箭内:
実際、隣で見ていてもファンの方とお友達同士のように話をしていて、とてもいい距離感ですね。とても丁寧にお互いを尊敬しあっている。
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コメンテーターを務めた原田曜平氏(写真手前)

◼︎︎シンガーソングライターでファッションモデルという二足のわらじ

箭内:
歌手として活動しながら、ファッションモデルとして、事実とても影響力のあるchayさんですが、その二つのバランスはどのように考えていますか?
chay:
両方自分自身のありのままなので、特に意識はしていません。たしかに、ファッションモデルを始めることになった時は少し驚きましたが、新しいことに挑戦することは悪いことではないと思うので、できうる限りの挑戦はしていきたいと思ってやらせていただいてます。
歌手としては、いまは音楽を聴いてくれるきっかけがどんどん少なくなっていることをひしひしと感じています。
耳に触れる機会が少ない中で、「自分の曲に最終的に来てくれる入り口は多い方がいいのでは!?」と思っています。
例えばCanCamを読んで自分のことをスキになる人がいてくれるように、表現をする場を多くして、本当に伝えたいことをきちんと伝える姿勢は大事にしたいです。
箭内:
モデルをやっているからこそできる曲もあるかもしれないしね。
原田:
なかなかいないですよね。
chay:
不思議なことに、服を見るとメロディが浮かぶことがあるんです。
chay:
楽曲を作る時、コードやメロディを先に考えて、そこから思い浮かぶ世界観の中で歌詞を書くというスタイルなのですが、欲しい洋服をみた時に、浮かぶ世界観がメロディになって聞こえてくる、ということがたまにある。この服をきて、こんな曲を歌えたら、と思い浮かんで曲にします。
箭内:
視覚からメロディを思いつくというのはたしかに稀有な才能です。
chay:
耳で聴くだけでなく、目で見ても楽しいアーティストとして活動していきたいと考えて、最近はそれが一つの基礎になっています。その時その時で感じたことをそのまま歌にする。それを音楽として世に出すと同時に、私自身もファッション雑誌の上で自分を表現して、その音楽を聴いてくれて、好きになってくれる人を増やしていくことが必要だと思っています。

思いがけずマイナスのスタートを切ることとなってしまっても、自分を曲げることなく「いい」と感じたことを発信する。そしてその思いをファッションや音楽といった様々な分野で発信することで、自分のことを理解してくれる糸口を作る。chayが歌手としてもファッションリーダーとしても受け入れられた根幹には、自分を信じる強い気持ちがあった。 SNSなどの普及で自分の意見を簡単に発信できるようになった反面、あらぬことを大げさに非難され、必要以上に傷ついてしまうということも多く起こりうる。もし自分がその状況に陥った時、自分自身を信じることが次の一歩を踏み出す大きな力となっていくのかもしれない。

■このトークの全編は「風とロックとHulu」で順次配信! Key_Art_Template_kazetorock042516.jpg

取材・文:兵藤 友哉

1995年生まれ。フリーライター。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系在籍。専らの興味は「メディアテクノロジーの進歩による人間の認知の更新」。SENSORSでは「VR」「ドローン」の記事を担当。
Twitter @do_do_tom

写真:松平伊織

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