カズワタベに聞く、半年で月間100万PVに成長「釣報」の舞台裏

2015.12.01 17:30

国内最大規模の釣り関連サイトに成長した「釣報 [ツリホウ]」。11月5日に配信されたプレスリリースによると半年で月間100万ページビューに達したという。この「釣報[ツリホウ]」の運営元は、釣果共有カメラアプリ「ツリバカメラ」を開発している「ウミーベ」だ。この急成長の舞台裏とは?

この「ウミーベ」の代表取締役を務めるのが、Twitterでも12,000フォロワー以上の発信力を持ち、東京から福岡に移住したという経緯から「移住」等の文脈でも、多くメディアに登場しているカズワタベさん。福岡のまさに"海辺"のオフィスで「ツリバカメラ」開発を進める傍ら、短期間でそのオウンドメディアと言える「釣報[ツリホウ]」を急成長させた。その運営はどのように行っているのだろうか?今回は、カズさんの"オウンドメディア運営"面にスポットを当てお話を伺った。

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ウミーべ株式会社 代表取締役CEO カズワタベさん

■極力「お洒落にしない」こと

--まず「釣報」を立ち上げることになった経緯をお教え頂けますか?

カズ:
最初は、とある投資家の方とお話していた時に「釣りのメディアやったらいいじゃん」って言われたんですよ。その時には「いいですねー」と相槌を打つ程度だったのですが、帰った後にじっくり考えてみて、これはいけるかもと思い、立ち上げてみたんです。
当時はアプリの方の開発が予定より遅れていて、僕はデザインまでが担当で、そこから先はエンジニアに任せていたので、ちょうどそのタイミングで自分の手が比較的空いていたのもありました。
元々フリーランスの頃に、サイトのデザインとコーディング、ライティングの仕事はしていましたし、写真や編集も趣味レベルですが好きではあったので、WEBメディアを運営する最低限のスキルを自分ひとりでカバーできていました。なのでまずは立ち上げてみて、ダメだったら一ヶ月か二ヶ月ほどで閉じれば良いか、という感じで。

--立ち上げ時にこだわられた点は?

カズ:
「お洒落にしない」ことですね。自分の好みのせいで、普通にやるとお洒落っぽいサイトを作っちゃうんですよ(笑)。ただ今回は、訪問者には「釣りの情報」を伝えることが目的なので、その上では(お洒落さは)不要だと思いました。それよりも、いち早くサイトを立ち上げ、情報の発信を開始するというスピードをなにより重視していましたね。そのかいあって実際にサイトは4日で立ち上がりました。
あとは、サイトの名前を釣りの情報を発信しているということがひと目で伝わる、分かりやすいものにすること。「釣報」ってダサいかギリギリですよね(笑)。他に、ドメインはドメインハックができる、もしくは.comが取れる、といった点くらいですかね。なんにせよ、今回は何より立ち上げのスピードを重視しました。
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釣報 [ツリホウ] トップページより。シンプルなデザインだ

--「よし、行ける」と思ったタイミングはいつ頃ですか?

カズ:
初月が終わったタイミングです。立ち上げてみてダメなら閉じようという位で始めたのですが、初月で5万PV位いって。Facebookページの、1いいね!あたりの獲得コストが安かったのもポジティブに感じられました。

--サイトへの流入経路としてはどこからが多いですか?

カズ:
今のところ一番はFacebookですね。ただ検索流入も右肩上がりで伸びてきています。

--執筆体制は。

カズ:
一日7本記事を出していて、全て内製しています。一部寄稿記事もありますが、社員かアルバイトが執筆しています。釣りはいわゆる専門分野なので、誰でも書けるわけじゃないんです。情報も極力裏は取るようにして、僕も全部の記事には目を通して校正しています。

--今後の構想についても聞かせてください。

カズ:
これまでは単なるニュースサイトとしての位置づけが大きかったのですが、今後はより幅広く、ストック型のコンテンツを増やしていきたいですね。
また、せっかくユーザーのコミュニティが生み出されるアプリも運営していますし、「ツリバカメラ」での情報を元ネタにして記事にするとか、「ツリバカメラ」のアプリの中で「釣報」の記事を配信しようとか、連携も色々と考えています。

■福岡で起業することで「選択肢」を増やしたい

最近はSNS上でも積極的に、プライベートも含めた「釣り」の成果を発信しているカズさん。そもそも「釣り」にハマった経緯はどのようなものだったのだろうか?そして、カズさんは福岡に移住して約2年。改めて今「福岡」でこの事業を展開する意義・現状についても伺うことにした。

--ところで、カズさんが「釣り」に目をつけた経緯というのはどのようなものだったのですか?

カズ:
デザイナーの友人に誘われて始めてから、ここ数年釣りにハマっていたんです。ハマると、例えばグルメなら食べログやRettyで情報を探すように、釣りの情報も「どこがいい釣り場だろう」「何がいい釣り具だろう」と色々調べようとするじゃないですか。するといわゆるモダンなサイトがなくて、情報も古くて非常に不便だったんですよね。なので自分で作ってしまおうと。

--「ツリバカメラ」アプリのアイデアが浮上したのも、東京にいた頃からですか?

カズ:
2013年末くらい、まだ東京にいた頃です。その後福岡に移住して、様々な事業アイデアがある中で「福岡でやるなら」と考えた時に成功率が高いアイデアがこれだと思いました。西日本の方が人口に対する釣り人の割合が高かったり、大手釣具メーカーの本社が集中しているといったデータもありました。あとは福岡にいると実際に周りで「釣りをやっている」という話を聞く機会も多かったので、肌感覚でいけそうだなと。たいていのビジネスは東京にいた方が成功率が高いのですが、これは福岡でやるのがアドバンテージになるかなと思いました。
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ウミーベの入居するオフィスからの眺め(カズワタベさん提供)

--東京以外の街で起業することで、どのような点をメリットと感じていますか。

カズ:
外からのノイズが少なく、事業に集中出来ることですね。同じ費用であれば生活の質は確実に向上しますし、無用なストレスを抱えずに済むのは大きな利点です。ただし、初めてスタートアップをやるなら一度は東京に行った方が良いと思います。やはり東京が日本では一番情報やノウハウが集まっていて、地方ではなかなかそれが共有されていなかったりするので。最初から地方で起業しても、自分の目線を上げるのが難しいんです。同世代で成功している人たちのレベルが肌感覚として分かっているかどうかは大きいですね。

--カズさんは今も東京と行ったり来たりされていて、東京時代の人脈も繋がっていて、バランス感覚を維持されている印象があります。

カズ:
そうですね、ただ「スタートアップ、東京ばっかじゃね?」という感覚はあって、福岡でやっているのはそれに対するアンチテーゼのような部分はあります。東京でもスタートアップをやること自体はマイノリティではあるんですが、その中でも、それなりに数が増えてくると面白くなくなっちゃうタイプなんですよね(笑)。
なので、まずは福岡のスタートアップとしての成功事例を作りたいという思いはあります。「福岡でも出来るよね、いけるじゃん」となると、例えば、札幌や仙台、名古屋のような規模の近い都市でも「できるはず」となるはずなんです。やはり、地方に住んでみると東京がどこか他人事というか、別の世界の出来事に感じられるところがあります。そういった「他人」ではない存在が上手くいっていたら、後に続く人も増えるんじゃないかなと。

--そういった「大多数」に対するアンチテーゼを感じる、そのルーツは元々どこからなのでしょうか?

カズ:
転勤族だったことが大きいです。子どもの頃、友達や住む環境が2〜3年に一回リセットされるということを経験してきたので、その時々、その場所の常識に囚われないというか、子どもながらに「あ、場所が変わったら常識も変わるんだ」と感じながら育ってきました。そのため、何かに対する執着がないというか、固定観念に欠けるところがありますね。あとは出自が音大なので、クリエイター寄りの考え方で「新しいコンセプトを作っていきたい」というマインドは強いです。
スタートアップ業界に関して東京の方に話を聞いているとやはり三角形の先を"尖らせる"ことをやっている方が多い。もちろんこれは一つ、必要なことです。一方で三角形の"横を広げる"ところは、まだまだ出来る余地があるなと。尖らせる人と広げる人、両方いた方がいいと思っているんですよ。自分が「福岡(地方都市)でスタートアップ」を実現して、成功させることで「世の中の選択肢が広がる」ことになったら、個人的にも達成感がありますね。

「釣報[ツリホウ]」立ち上げから急成長の舞台裏と合わせて、福岡での起業の意義についてもお話を伺った。カズさんのお話を伺っていて印象的なのはやはり「柔軟性」。自分の型や世の中の常識に囚われることなく、その時々の状況を柔軟に判断して前へ進む点は「釣報[ツリホウ]」運営の面でも、ご自身の生き方の面でも、やはり共通しているようだ。

取材・文:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
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