MIT特別研究員にも就任 アスリート、経営者、教育者...本田圭佑が様々な顔を持つ理由

2016.09.06 09:30

世界的にも有名な研究機関であるマサチューセッツ工科大学のメディアラボ(以下MITメディアラボ)に、日本代表・ACミラン MF 本田圭佑が日本人アスリートとして初めて特別研究員に就任した。その経緯や、様々な活動を通して"夢を与えること"の意義とは。

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MITメディアラボは「アンチ・ディシプリナリー(アンチ専門分野主義)」-- ひとつの専門分野に特化した学問ではなく、既存の学問領域には当てはまらず、異分野を組み合わせた研究をミッションとして掲げる機関。サイエンス、テクノロジー、建築、デザインなど多岐にわたるテーマを組み合わせ、世の中に新しいアイディアを生み続けるスタイルは、本田圭佑の生き方にも似ている。
今回本田が選ばれた「ディレクターズフェローズプロジェクト」は、世界各地の様々な分野における第一人者を特別研究員として招き、MITメディアラボと協同でデジタル面から世界の問題にアプローチする取り組みだ。
様々なアスリートが現役時代から多岐にわたる活動を展開することは珍しくなくなった。そんな中で、なぜ本田はMITの特別研究員に選ばれたのだろうか。マネジメント事務所「HONDA ESTILO」(以下「H」)に聞いた。

■高いレベルの教育を提供する、持続可能なプラットフォームを創りたい

--MIT研究員に就任した経緯や、引き受けることを決めた理由をお教えいただけますか。

H:
私たちは、「サッカー(スポーツ)を通して、世界中の人々に夢や希望を与え続ける」という理念を掲げています。その理念のもと活動している様々なプロジェクトを通して、世界中の子ども達に出会い、各国の教育事情に触れてきました。そして、「世界にいる全ての子ども達に、高いレベルの教育を提供する持続可能なプラットフォームを創りたい」という想いを抱くようになりました。

実際にHONDA ESTILOの活動は、2016年6月には国連財団の『Global Advocate for Youth(青少年のための国際的な支援者)』に選ばれるなど、世界的にも注目されていた。若者が直面する社会的な課題を、一過性のものではなく、どう持続的に解決していくべきなのか。そんな課題を抱く中で出会ったのがMITメディアラボの所長、伊藤穰一氏だった。

H:
今回の研究員の就任は、こういった想いを実現するためのきっかけになると考えています。以前から伊藤穰一氏と本田圭佑は繋がりを持っており、この研究所の技術力や新たな発想力には興味を抱いておりました。「この研究所は、何か考えていることを可能にしてくれる特別な場所」と本田自身も感じており、今後一緒に活動していくことになりました。

■「経営者」「教育者」「投資家」。様々な顔を持つ生き方

本田圭佑に関する話題は"スポーツニュース"の枠に留まらない。直近では、エンジェル投資家として創業間もない企業や起業家のスタートアップを助ける事業に投資を決めた。世界各国でサッカースクールを主催、SVホルンのオーナーや国連財団のグローバル・アドボケート、また安倍晋三首相に直接面談しての教育提言も行った。なぜ、本田はアスリートとして以外の活動も積極的に行うのだろうか?

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--アスリート以外の活動も積極的に行っている経緯や、考えをお伺いできますでしょうか。

H:
オフィシャルインスタグラムのプロフィールにもありますが、本田圭佑は、「サッカー選手」だけでなく、「経営者」、「教育者」、「投資家」という肩書を背負っています。子ども達の教育の改善は一つの取り組みですが、世界を平和で明るい未来にしたいという根底の部分を改善したいという強い想いが、アスリート以外の活動を積極的に行う背景です。
上記にもあるように、「スポーツや教育で世界中に夢や希望を与え感動させ続ける」という経営理念を目に見えるカタチで実現し、子ども達の教育の改善につなげたいと思います。

--なぜ、「世界を平和で明るい未来にしたい」という強い想いを持つようになったのでしょうか?

H:
日本の子ども達の多くは、「夢」を持つことができる環境に身を置くことができています。「夢」は活力になり、それを本気で目指すことで、明るい未来が開けると考えています。一方で、日々の生活で精一杯で、「夢」を持つことさえできない子ども達が世界にはたくさんいます。そのことを、本田圭佑自身が世界に出て、世界を回る中でその実態に触れ、実感してきました。
世界中の子ども達が平等に「夢」を持てる環境に身を置くことができ、「夢」に向かって突き進める環境をつくりたい。そうなれば、明るく平和な未来になっていく。そう考えているのが理由です。
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--これまでの活動の中で、反響が大きかった活動(夢を与えた活動)をお伺いできますか。

H:
たくさんありますが、やはり、世界各地で行っているサッカークリニックだと思います。
これまで、タイ・ベトナム・アメリカ・インドネシア・台湾・中国・日本など9か国・16箇所で開催しており、現地の子ども達を集めて、本田圭佑自らサッカーを教えています。このイベントは、サッカー経験の有無は問わず、誰でも参加することができます。サッカーの技術だけでなく、子ども達にサッカー技術を教えることはもちろんですが、それよりも「夢を持つことの大切さ」を伝えることが主目的としています。

2009年から取組み、世界中で実施してきたサッカークリニック。その中には貧困や教育を受けていないことから「夢を持っていい」ことさえも知らない子供たちが多く住む地域もあった。

H:
特に、夢を持つことが困難な発展途上国の国々の子ども達に対して、「夢を持つことの大切さ」というメッセージを伝えています。毎年、募集数に対して倍以上の応募数があり、参加した子ども達が目を輝かせながらボールを追いかけている姿を見ると、その影響力の大きさを感じます。もっとたくさんの国の子ども達に対して、こういった活動を出来る限り、続けていきたいです。

"若者と彼らの夢なしでは、この世界はより良いものにはなりません"と言い切る、本田圭佑。彼はこれから、どんな夢を与えようと企んでいるのだろうか?

--今後の構想についても、お教えいただけますか。

H:
本人にも「挑戦したいこと」が山ほどあります。掲げている経営理念に対して、サッカー選手としてだけではなく、様々な角度からアプローチしていきたいと思っています。今回のMIT研究員も、今までにはなかった角度からのアプローチになります。世界の子ども達が夢を持てるような明るく平和な未来を構築するために、前例のないことにどんどんチャレンジしていきます。

科学も革新も融合しなければ大きなものは生まれない、とMITメディアラボの伊藤所長はかつて語った。分野や肩書という壁を越え、あるひとつの目的のために手段を択ばないというのは、これからの時代にフィットした考え方なのではないか。
世界を舞台に戦ってきた豊富な経験を、社会に還元し夢を与え続ける本田圭佑の「経営者」として、「教育者」として、そして「アスリート」としての多角的な取組みにこれからも注目していきたい。

画像提供:HONDA ESTILO

取材:羽佐田瑤子

ライター。日本文化と食と寅さんを愛する87年生まれ。47都道府県を訪れ、「職人」「地方」「映画」「アイドル」「漫画」「アート」などサブカルチャーから伝統文化まで幅広く執筆。『SENSORS』のほか、地域媒体『フリーペーパーKAMAKURA』など複数の媒体で執筆を行う。趣味は小学生から続けている能。
Twitter:@yoko_hasada / URL:http://yokohasada.com/ 

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