Kickstarterに出品・欧州音楽フェス「Sónar」ピッチ優勝--「KAGURA」はどのように海外に打って出るのか

2016.07.26 11:45

身体の動きをPCに付属のカメラで認識することで直感的に音楽を演奏できるソフトウェア・KAGURA。6月にはヨーロッパ最大級の音楽フェス「Sónar 2016」内の「Startup Competition」で優勝。この夏はKickstarterに出品、サンフランシスコでの「J-POP SUMMIT」にも参加。 海外進出において、それぞれの地域にフィットすべく意識していること・今後の構想などを探る。

お話を伺ったのは、KAGURAを開発するしくみデザインCEO 中村俊介氏と、エンタテイメントとテクノロジーが融合したビジネスのプロデュースを行い、KAGURAの海外進出もサポートしている、ParadeAll Inc. エンターテック・プロデューサー鈴木貴歩氏。 Kickstarterを皮切りにしたアメリカでの展開、「Sónar」でのピッチをきっかけに感じたヨーロッパの音楽市場、それぞれについて詳しくお話を伺うことが出来た。

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KAGURAを手がける しくみデザインCEO 中村俊介氏(「Sónar +D Startup Competition」優勝トロフィーと、「Keiretsu」賞のトロフィー、娘さんからのメダルと共に)

■KickstarterかIndiegogoか。どのように決めた?

--まず、Kickstarterへの出品を決めた経緯をお聞かせ頂けますか?

中村:
最初は資金調達を想定していたのですが、「NAMM Show」(カリフォルニア州で行われる楽器ショー)に出展した際、Indiegogoの人から「これは絶対クラウドファンディングに出すべきだ」と言われ、「その方法もあるな」と思ったことがきっかけです。クラウドファンディングに出品することは、そのサービスを知ってもらえる、PR的な側面も大きいですから。そういう時に、現在サポートしてくださっている鈴木さんの独立やDMMによるクラウドファンディング出品支援(DMM Starter)の動きがあったことも大きいです。 その中で、どこに出品すべきかと色々調べているとKickstarterの方が向いているのではないかと。

--Kickstarterの方が向いていると考えられたのは何故でしょうか?

中村:
比較的"何でもあり"のIndiegogoと、クリエイティブやテクノロジーに振っているKickstarterならば、後者だなと。Kickstarterの方がちゃんと審査をされる分、プロダクトの精度も高いです。KAGURAの場合はサービスをこれから作るのではなく、サービスがすでにある状態なので、審査ではねられることも少ないのではと思いました。 ただKickstarter出品はゴールでは全くなく、プロモーションの一環という位置付けです。
鈴木:
KAGURAは言語を超えて楽しめるものなので、使う人のコミュニティをつくることが大事なんじゃないかと。最終的にはいろんな人がKAGURAで音楽を演奏したり作ったりすることがゴールなので、英語圏でもKAGURAを使う人のコミュニティを作っていこうというのがKickstarter出品の狙いですね。

--サンフランシスコで開催の「J-POP SUMMIT」にも出展されたそうですね。

中村:
やはりアメリカのイベントで、「Kickstarterやるよ」と言っておくことは大事だと思っています。
鈴木:
Kickstarterがアメリカのサービスなので、アメリカのメディアを呼びたいという面もあります。
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「J-POP SUMMIT」での模様

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■ヨーロッパでピッチする時に意識したこと

--海外での動きとしては、「Sónar」のピッチコンテストで優勝というトピックもありましたね。改めて、現地での反応はいかがでしたでしょうか?

鈴木:
反応がよかったですね。優勝したあとヨーロッパで文化に造詣の深いVCや投資家が何人も来てくれました。声をかけてくれる一人一人が"濃かった"です。
中村:
「ヨーロッパで展開するときはアーティストを探すから」と後でメールをくれた方もいました。今回の受賞で一番嬉しかったのが、これまでは主にテック系のピッチに出ることが多かったのが、音楽系のピッチで評価されたことでした。「これは技術的に面白い」だけではない「音楽業界のサービスとして可能性があるんじゃないか」と思ってもらえたことですね。
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「Sónar」ピッチコンテストにて

--ピッチの際に意識された点はありますか?

鈴木:
実は最初スペインということで、フラメンコ風の楽曲をというアイデアもありました。ただスペインの中でもバルセロナはカタルーニャ地方。フラメンコはアンダルシア地方のものなんですね。そういった地域特性を同じ国の中でも加味して、その地域にフィットしていく必要があります。また、日本発のサービスということで和服という案もあったのですが、KAGURAは国境を超える、もっとユニバーサルなサービスだと思ったので、日本発であることはファクターとして打ち出す必要がないと考えました。

--前回の記事(「欧州最大級フェス「Sónar」ピッチコンテスト優勝--KAGURA 中村俊介に聞く喜びの声・今後の展開」)で「KAGURAとヨーロッバの音楽文化は相性がいいと感じた」と教えて頂きましたが、具体的にはどういう面でそう感じられましたか?

中村:
オーケストラなど、伝統を守りながら音楽を文化にしている、それでいながら新しいことも取り入れている点が、KAGURAと相性いいのではと感じました。実際に「オーケストラにKAGURAを入れたらいいじゃないか」と言われたりもして、アメリカのどんどんお金が回るような感じとはまた違うなと感じました。「このサービスでどれだけ儲かるの?」と聞かれたことは一回も無かったです。
鈴木:
「資金ニーズは今あるのか」という話から入って来ないのが面白いところですね。 例えば、これまでヨーロッパで出会った中で印象に残ったのが、今はNYベースのようですが、ジョン・アクアビアという人です。彼はリッチー・ホウティンというアーティストのビジネスパートナーで、他にはBeatport(アメリカの音楽配信サービス)や、Pacemaker (コンパクトなDJ機材)の立ち上げをやったりしながら、リッチー・ホウティンやBBCの有名なDJのピート・トンらとファンドの運営もしているんです。それでいてDJ活動も引き続きをしていたりしています。 そういった、音楽もビジネスもテックも分かっている人がいるというのがヨーロッパの面白さです。

--ヨーロッパの中で、今後より音楽ビジネスが盛り上がっていきそうな都市はどこでしょうか?

鈴木:
今回もいろんなセッションを聞いたんですが、ベルリンですね。ベルリンはSoundCloudやNative Instrumentsもありますし。北欧の音楽系スタートアップが「エコシステムがあるから」と移住したり、アーティストやエンジニアも数年前から移住したりしているようです。私はベルリンには注目しています。
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「Sónar」ピッチコンテストにて

■YouTube→YouTuberのように、KAGURAを使って新たな表現をする人が出てきてほしい

--「Sónar」優勝、Kickstarter出品や「J-POP SUMMIT」を経て、さらに次はどのような展開を予定されているのでしょうか?

中村:
実は今、アブダビのイベントから話が来ています。
鈴木:
いまアブダビはEDMのフェスがみんな集まっていたり、エンタメに関心が高まっているタイミングなんですね。「Sónar」に来ていた人からオファーがありました。
中村:
さらに大きな話でいうと、"逆輸入"です。海外で話題化して、日本で音楽をやっている方々に一ツールとして使って頂けるようになりたいです。
鈴木:
いつも中村さんがおっしゃっているのですが、「KAGURAを使って新しい表現をするアーティスト」が出てきたらいいなと思っています。YouTubeがYouTuberを生み出したように、新たな表現をする人を増やして、独自の文化にしていきたいです。
中村:
来年にはKAGURAを"一般化"させたいです。今は体験版のみですが、まずはKickstarterでWin版・Mac版を用意、その後一般でも購入出来るよう商品化して、買ってもらった中にはサウンドセットをシェアできるようにして、他のユーザーがそのセットでiPhoneやiPadで遊ぶ...というところまで持っていきたいです。

取材:市來孝人

SENSORS Web副編集長
PR会社勤務を経てフリーランスのWebエディター・PRプランナー・ナレーターなどとして活動中。「音楽×テクノロジー」の分野は特に関心あり。1985年生まれ。
Twitter:@takato_ichiki / Instagram:@takatoichiki

取材協力:THE BIG PARADE

エンターテック=エンタテインメント x テクノロジーをテーマにした日本初のカンファレンス/メディア/コミュニティ。
https://thebigparade.themedia.jp

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