飲食店特化クラウドファンディング「KitchenStarter」の可能性~馴染みの店は「探す」から「育てる」へ~

2015.06.09 13:00

SENSORS SALONのテーマにもなったクラウドファンディング。「READYFOR?」や「Makuake」などのプラットフォームが市場を牽引し日本でも盛り上がりを見せ始めており、新規参入業者も増える中、注目を集めるのは「特化型」だ。SENSORSは飲食店に特化したクラウドファンディングサービス「KitchenStarter」(キッチンスターター)を立ち上げる試みを訪ねた。

■飲食店特化型クラウドファンディング「KitchenStarter」とは?

新しい飲食店の開業に際する課題は山積みだ。

開業計画立案→開業資金集め→物件確保→オープン準備→オープン→集客...。

新しい店舗の需要を調べるにしても客観的なリサーチは困難で、営業開始時の集客活動にも大きな労力がかる。そんな開業初期の飲食経営者が抱える課題を解決するのがクラウドファンディング「KitchenStarter」。

KitchenStarterの仕組み(http://kitchenstarter.jp/ )

本格的な運用の開始はこれからだが、KitchenStarterは新しくお店を立ち上げたり新メニューを開発したい飲食店経営者が、自分のアイデアを投稿して、それに共感した支援者から資金を集めることができる。他のプラットフォームの飲食店立ち上げプロジェクトでは「日本酒飲み放題店」というアイデアで約300万円、「馬肉専門店」というアイデアで約550万の調達に成功した事例も存在する中、KitchenStarterをリードする渡辺浩志(わたなべ ひろし)さんと菅原 優(すがわら ゆう)さんは立ち上げの経緯をこう語る。

渡辺さん(左)と菅原さん(右)。青山のオフィスにて。

渡辺:
今の日本の飲食業界は成熟期にあると思います。新しくお店を開く人は乗り越えないといけない障壁が多すぎて、最初に抱いていた「楽しいこと、変わったこと」からどこかで「失敗しないこと」にベクトルが切り替わってしまう。だから結果的に"ありきたり"なお店が増えてしまっているのだと思います。
菅原:
飲食メディアを見てみても、一般の人が良いお店を探す手伝いをすることはできるけど、オープンする前の段階の課題解決を誰もしていないんですよ。飲食店がそもそも持っている課題は「集客」と「初期費用」です。クラウドファンディングを使えば、そのどちらも課題も解決できる。

渡辺さんはKLabの営業部長・事業部長やフリービットのクラウド事業統括を担ってきた実績を持つ。菅原さんは飲食キュレーションメディア「テリヤキ」のディレクションをはじめ、数々の広告・メディアビジネスに携わってきた。そんな二人が手を組んで実現させようとするサービスの中身を詳しく伺った。

■不動産業者や内装業者を巻き込んだ支援体制の構築

飲食店特化は日本初

飲食店特化のクラウドファンディングKitchenStarterを利用すれば、生の声を聞きながら自分のアイデアの需要の有無を調査することができるだけでなく、初期費用の一部を賄うことができたり、コアなファンになりうる顧客と開店前から関係を持つことができる。これ以外にも飲食店特化ならではのメリットが存在する。

渡辺:
飲食店の経営に必要な必須条件は集客とお金以外にもあります。物件、照明、店内設備、内装・・・。今、私たちはこれらに関係する会社とも事業提携も推進していて、キッチンスターターで経由で申し込んだ人が有利に利用できるようにする準備をしています。著名なシェフの方にもアドバイザーとしてご参画いただけるように調整している最中です。
渡辺:
こうした提携を進めているのには別の理由があります。普通に考えれば、アイデア出すだけでお金も提供してくれるし、お客さんも集めてくれるサービスって都合良すぎで疑いたくじゃないですか(笑)。そもそもクラウドファンディングという仕組み自体がまだ世の中に認知されていません。 だから、飲食に関わるたくさんの会社にKitchenStarterに賛同していただいていることを示すことで、プロジェクトを掲載いただく飲食店経営者の方に安心感を持っていただきたいんです。

■「新しい飲食メディア」としてのKitchenStarter

シェフエプロンを着る渡辺さん

プロジェクトを掲載する飲食店経営者にとってみれば願ったり叶ったりの機能が詰め込まれているKitchenStarterだが、支援者は具体的にどのような恩恵を得ることができるのだろうか。お店の割引券や優先予約券、クローズド・イベントの開催など、例には事欠かないが、従来のクラウドファンディングサイトと大きく違うポイントとは、支援者と支援した飲食店が長期的な関係を築きやすいということ。

菅原:
私たちのクラウドファンディングは、プロジェクトが終わった後も飲食店のCRMツールとして機能するという特徴があります。メッセージの送信とプロジェクトの報告機能だけでなく、優先的に最新情報をお送りしたり、クローズイベントに招待したりすることもできるようにしたいです。飲食店側からの一方通行ではなく、双方向のやりとりができるメディアにしていきたいので、支援者が優先予約や貸しきりの申し込みできるようにする機能も想定しています。
渡辺:
KitichenStarterはクラウドファンディングであると同時に、双方向なメディアでもありたいと思っています。お客さんかお店の一方だけに寄り添うのではなくて、公平な関係のもと「育てる」という視点を持って、企画段階からアイデアや意見を出し合って、より良いお店を一緒につくっていく、盛り上げていく。そんなコミュニティにしたいです。

成熟した市場で大きなチャレンジができなくなってしまった飲食店業界に問題意識を感じ、出店前のフェーズに注目することで、自分の馴染みの飲食店を「育てる」という視点を生活者に与えようとするKitichenStarterの試み。そうして自らが立ち上げに関わったお店は、自分にとっても懇意の店になるし、店側にとっても大事な常連客になる。

既に掲載するプロジェクトも何件か決定しており、後はリリースを待つばかり。どんなワクワクするようなアイデアを持った飲食店が誕生するのだろうか。「馴染み」の店を持つことにとても憧れる。今からとても楽しみだ。

取材:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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