きゅんくん×池内啓人 ロボットとプラモデル "レトロフューチャー"なクリエイティブ論

2015.11.20 18:00

SENSORSでこれまで追いかけ続けてきたロボットクリエイター、きゅんくん。最近ではGoogle AndroidのCMに出演するなど活動の幅を広げている。ロボットとファッションを組み合わせたロボティクスファッション作品を次々と発表し、国内外から注目を浴びている。そんな彼女が文化庁メディア芸術祭で出会って以来、気になっているというクリエイターが池内啓人だ。"レトロフューチャー"をコンセプトにデジタル機器とプラモデルによる空想の具現化に挑んできた。池内氏の自宅で行われた対談、創作のルーツを辿る中で浮かび上がった二人の共通点とは?

21歳の若きクリエイター、きゅんくん。ロボットとファッションを組み合わせたロボティクスファッションで注目を集め、「SXSW2015」や「Ars Electronica」といった国際展示にも出展した。

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METCALF(メカフ): きゅんくん制作のウェアラブルアームロボット。モデルは猫守ざーにゃ

「イベントで一度すれ違ったことがあるけど、ちゃんと話したことはない...」
「どういう考えでモノづくりに向き合い、どこからインスピレーションを受けて創作しているのか...」

きゅんくんはプラモデル作家・池内啓人に、同じクリエイターとして聞いてみたいことが沢山あった。

今回の対談は、プラモデルがうず高く積み上げられ、創作のインスピレーションとなった本や雑誌に囲まれた池内氏の自宅で行われた。

海外をまたにかけるクリエイターとして活躍する二人が語ったクリエイティブ論とは?

■︎︎︎既製のパーツを再構築し、非現実的な世界観を具現化するプラモデル作家・池内啓人

プラモデル作家・池内啓人氏は市販のプラモデルなどの部品を使い、分解・改造・再構築することで独自の着想から作品を創作している。

2nd Diorama [発掘基地]:パソコン内部の重要なデータを守る要塞をテーマにしたジオラマ作品。

さらにイヤホンやメガネ、洋服など斬新なウェアラブルガジェットも制作。女性のファッションとしても話題になっている。

撮影:萩原楽太郎

細部にまでこだわった緻密なディテールと空想で創られた非現実な世界観が高く評価され、世界最高峰のメディアイベント「アルスエレクトロニカ」や文化庁主催の「メディア芸術祭」へ招待されるなど国内外から注目を集めている。

■︎︎︎池内氏の作業場を訪れたきゅんくん、二人の創作ルーツの共通点とは?

メディア芸術祭で初めて池内氏の作品を目にしてから気になり、SNSで動向をチェックしていたというきゅんくん。
「かなり私の理想に近いものを創っている人だな。模型でオリジナルのものが造れるなら、皆やればいいのに」と感じていたという。
池内氏の創作のルーツやインスピレーションの源泉を探るため、まずは池内氏の作業場を訪れた。

池内氏の自室兼作業スペース。ここに創作のルーツが詰まっているという。

きゅんくんがまず初めに目を惹かれたのが、池内作品の代表作「ウェアラブルイヤホン」だった。自身もウェアラブルなロボットを創作する彼女は、興味津々に作品に触れていた。

"スチームパンク"をイメージした作品。

ジオラマのイメージを蓄積し、膨らませるためにインプットは欠かさないという池内氏。本棚には模型雑誌やアート事典がズラリと並ぶ。中でもきゅんくんが気になった一冊が...。

1950年に刊行されたアイザック・アシモフのSF小説短編集『われはロボット』だった。きゅんくんも読んだという本書において有名な"ロボット工学三原則"が示され、後のクリエイターに多大な影響をもたらした。 二人のクリエイターの着想の根底に共通点が見える。

池内氏が書きためた制作スケッチ。創作に影響を受けた作品として、池内氏は『バブルガムクライシス』や『宇宙の戦士』といったアニメ作品のメカニカル・ディティールを挙げた。

さらに池内氏が作品制作に入る前に行っているというのが、自由な空想で描く"スケッチ"だ。これをもとに作品を具現化していくという。

池内:
模型や既製品を使う分、既製品に左右されることも多いんです。実際に分解してみると、別に使いたいものがあるので、漠然としたものしか(スケッチは)描けないんです。描いて、描いて、ばらばらのパズルを組み立てていくような感じです。
きゅんくん:
3Dプリントでオリジナル・パーツとして造っちゃっても面白いと思うのですが、やはり模型での制作にこだわっているんですか?
池内:
有りモノを見立てられる面白さが絶対にあると思うんです。例えば、(プラモデルの)足の部分があるのですが、この足が頬に沿うマイクに見えたりする。偶然見かけたモノが、付けてみたら案外良くなったり、そういう面白さを感じながら制作しますね。
きゅんくん:
私は最初にシルエットを書きます。その後にロボットの写真を見たりして、一つの系譜にしていく。それも一度全部取っ払って、機構だけを考えます。「このパーツはこれらくらいの重さだから、サーボモータにはこれくらいの力が必要だ」というように計算していって、機構が決まったらデザインに戻る。紙に設計図を書いてから、3Dモデリングをして、CNC(数値制御装置)で金属切削して、さらに色んな加工をして組み立てていく。その後、細部の動きをプログラミングして、終わりという流れですね。

■︎︎︎︎"レトロフューチャー"で目指す先端テクノロジー

ロボットとプラモデル。互いに扱う素材は異なるが、"ウェアラブル"も制作しているという共通点がある。二人のクリエイターはそれぞれ、人間の身体に取り付けるテクノロジー"ウェアラブル"をどのように捉えているのだろうか。

池内:
"ウェアラブル"という名前の通り、実際に装着して使わないと意味がないと思います。街で普段使いできるのが一番いいんじゃないでしょうか。
きゅんくん:
池内さんは生身の人間を女性のアンドロイドに見立てるように作っていますよね。私は性別の概念がない中性的なロボットを作りたいと思っているんです。
池内:
感情とかも自分で制御できるので、性別がない方が楽チンかもしれないですね。

【左】池内啓人氏 【右】きゅんくん

きゅんくん:
池内さんはウェアラブルイヤホンを売っていると聞きました。
池内:
はい。僕は普段使いを目指しているんです。価値としては普通のヘッドホンと同じであってほしいんですけど、レトロコンセプト的なものを持ち込んで、アート作品にしたいという気持ちも少なからずありますが...。
例えばチームラボさんはメディアアートを広めていますよね。ビジネスとして成立させながら、一つ一つがアートだというか。

世界最高峰のメディアアートイベント、アルスエレクトロニカ2013「TOTAL RECALL展」にも招待された池内氏。国内外で活躍する二人の作品は、日本と海外で異なった反応をされるという。

池内:
日本と海外では受け取られ方が大分異なります。海外では模型をおもちゃとして見ないです。例えば、海外にジオラマを持って行ったら、「これは福島を再現したアートなのか?」と言われたり、日本人は表面的なところを見るのに対し、海外では文脈的なところに注目する。
きゅんくん:
メカって、すごくロマンじゃないですか。"文脈"を聞かれたときはどうやって答えるんですか?
池内:
アニメやゲームが好きだからとは言えないですけど、「サイバーパンク的な、技術はすごいけど外観が追いついていない"レトロフューチャー"的な寂しさがある」とは言うようにしています。
きゅんくん:
今後はどんな展開を考えているんですか?
池内:
技術は無限に進化していくので、それに追いつきたいです。以前作ったジオラマも10年前に買ったパソコンで作っているんです。もっと最新の技術を追いかけていきたいです。あとはもっと大きいものを創りたいです。

二人の創作のルーツに影響を与えたというアイザック・アシモフのSF短編小説『われはロボット』(I, Robot )。プラモデルとロボット、アウトプットの形こそ異なれど、二人の"ウェアラブル"に対する考え方には近いものがあった。今後、池内氏が探求する"レトロフューチャー"というコンセプトが最先端のテクノロジーと融合したとき、どんな姿形でメディアアートを具現してくれるのか。今後も注目したい。

文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。最近の関心領域は「人工知能」。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

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