kz(livetune)のルーツを探る〜インターネットに出会い、初音ミクを起用した理由

2015.11.04 18:40

10月14日、「未来の都市とライフスタイルをつくるイノベーション」をテーマに、六本木ヒルズアリーナで行われたオープンイベント「INNOVATION TOKYO 2015」。今回は音楽とITの新たな未来を考え、発信するプロジェクト「THE BIG PARADE」協力の元、このイベントでライブパフォーマンスを披露した音楽クリエイター・kz(livetune)氏。イベント終了直後のkz(livetune)氏に、デジタル音楽ブロガーとして活躍しているジェイ・コウガミ氏(以下ジェイ)がインタビューを行った。前編では、kz(livetune)氏自身の音楽に関わる様々な"きっかけ"を探っていく。

kz(livetune)氏は、インターネットにおいて初音ミクを使用した音楽を生み出した先駆者と言われる音楽クリエイターである。"先駆者"となると、どうしてそれをしようと思ったのか、どういう経緯でその活動を始めたのかなど様々な"きっかけ"が知りたくなるものである。前後編でお送りする今回のインタビュー、この前編ではkz(livetune)氏(以下kz)が音楽を始めたきっかけ・原点に迫る。

■小学生の頃、音楽への関心の出発点は

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ジェイ:
早速ですが、kzさんがコンピューターで音楽を作ることに目覚めたきっかけは何ですか?
kz:
最初は、小学生の頃に行った坂本龍一さんのライブですね。その当時は坂本龍一さんのことは知らなかったんですけど、両親に連れて行かれた坂本さんのライブ内容がすごく印象に残っています。その時のライブはキーボードやエレクトリックドラムなどを演奏し、スピーカーから音が出てくる電子的なサウンドをやっていて、それが当時の僕にとってすごく衝撃的だったんですよね。とにかくめちゃくちゃ格好良くて、自分もそういうサウンドで音楽を作りたいと思ったのが一番最初のきっかけです 。
ジェイ:
実際に音楽を作り始めた時、生楽器よりもコンピューターで作りたいという思いの方が強かったですか?
kz:
坂本さんの影響をモロに受けて、そのライブを観に行ったあとからピアノを習い始めたんです。なのでまずは生楽器をきちんとやるところからスタートはしてるんですけど、表現方法としていわゆる楽譜を書いて演奏するということは考えていませんでした。音楽のジャンルに関しては全く未定でしたが、単純にコンピューターを使って坂本龍一さんのような格好良い音楽を作りたい気持ちは小学生当時からありましたね。
そのあと中学生の頃『ビートマニア』というゲームが流行った時に、初めてクラブミュージック的なものに触れました。打ち込みでそういう音楽を作り始めていくうちにどんどん傾倒していきました。

■インターネットとの出会いは高校生の頃。夜な夜なチャットをしていた

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ジェイ:
実際に作曲を始めた時、作った音はどうされていたんですか?
kz:
中学2年生くらいの時はMDにレコーディングして学校で配布することはしていましたけど、あとは特に何もしていなくて、作った音楽もそのままでした。当時はCD-Rに録音する時代でもなかったんですよ。僕のパソコンも900メガとかしかなくてオーディオなんて全然扱えないし、ギガっていう単位も全然知らなかったくらいでした(笑) インターネットもまだ全然普及してなかったですし。
ジェイ:
kzさんとインターネットの出会いは、どのようなものですか?
kz:
高校1年生くらいの時、まだ"テレホーダイ"という言葉が浸透していた時期ですね。最初はチャットを通じて知り合った友達や同世代の人たちと夜な夜な延々とチャットをしていたくらいでした。音楽を落とせる程ネットの通信速度も速くなかったですから。

■「Tell Your World」はインターネットへの感謝の気持ちを込めた曲

ジェイ:
kzさんがインターネット初のクリエイターとして注目を集めるきっかけとなった、初音ミクとのコラボをすることになった経緯を教えて下さい。
kz:
最初に使用したのは2007年、ニコニコ動画上でですね。ニコニコ動画は当時まだあまり整備されておらず、アニメの映像を刻んで新しいものを作るというようなカオスなカルチャーが広がっていた時代でした。その時に初音ミクのソフトがリリースされて、以前からボーカロイドというもの自体はあったのですが、初音ミクの場合は日本語としてきちんと歌詞が聞き取れるところが面白いと思い、そこから機械っぽく聞こえるエフェクトなどをかけ始めたところから始まりました。
当時このような使い方をしたのが僕しかいなかったせいか、面白いと思ってくれる人たちが大勢いて、その後メジャーでCDをリリースさせていただいたり、2011年にGoogle Chrome CM・初音ミク編の「Tell Your World」という曲を作らせて貰うことになりました。ちなみにこの曲は、自分をピックアップしてくれたインターネットの世界に対しての感謝を込めて作曲しました。
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ジェイ:
機械的な音で歌を作るということに興味をもたれたきっかけは?
kz:
ダフトパンクに代表されるようなフレンチエレクトロが元々凄い好きで、ボーカルを加工するのが好きだったんですよね。生の音では出せないような独特な声質にハマって、そこに機械の音声をより機械っぽくするというすごく倒錯した状況が面白いと思ったのが、2007年に初音ミクを使用し始めたきっかけですね。
ジェイ:
2007年に初音ミクとの曲を発表した時、一番最初にそれを聴いていた人たちの反応はいかがでしたか?
kz:
当時僕がやっていたことはかなり変わったことだったので、そのイノベイティブなところに食いついてきた層はやはり30~40代が多かったですね。今だとニコニコ動画はすごく整備されていて、僕たちがニコニコやYouTubeで作品を発表し、メジャーデビューして曲を出してっていう流れがルート化されているから、最近はミュージックビデオにも凝ったちゃんとした曲が出てきますよね。当時の僕は動画を作れる友達とかもいなかったしTwitterも無かったので、しょうがないからサムネイルを貼りつけることしかできなかったんです。
当時、音楽のミックスが上手く出来ていなかったり、歌詞が微妙だったりなど、ボーカロイド系音楽が半分ネタモノみたいな状況だったところに、僕らはしっかりまじめな音楽というものをしっかりと提示していったつもりでした。いままで整備されていなかったところに対してちゃんと作ろうという気持ちがあったからこそ、聴き手からは驚きのレスポンスが多かったです。

小学生の時に坂本龍一氏に感銘を受け、音楽クリエイターとしての道を歩み始めたというkz(livetune)氏。そこから機械的な音を扱う音楽を作曲していき、当時まだ荒野だったボカロという大きな土地を徐々に整備していった。前編では音楽に関わるきっかけについて伺ったが、後編では音楽クリエイターという立場から観た音楽業界という広い視点からお話を伺っていく。

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取材・文:石原龍太郎(いしはら りゅうたろう)


ライター・編集者。 テクノロジー・ファッション・グルメを中心に、雑誌やウェブにて執筆。本と音楽とインターネットが好き。@RtIs09

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