Skypeを生んだ"デジタル優等生"、エストニアのスタートアップシーン

2016.06.06 12:45

5/31〜6/1にバルト三国エストニアで開催された、エストニア最大のテックカンファレンス:Latitude59のレポートをお届けする。実はデジタル先進国であり、Skypeが生まれた国でもあるエストニアのスタートアップシーンとは。

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Latitude59のオールスタッフ

なぜエストニア?と思う方もいるかもしれないが、旧ソ連からの独立後、いち早く大胆な政治経済のデジタル改革を行い、基本的人権の一つとして「インターネットへのアクセス」があり、世界で唯一国政レベルでの電子投票を実施したり、会社登録などもオンライン完結できるなど、様々な分野でのデジタル化を推し進めており、世界随一のデジタル先進国である。 世界中の人々が利用しているビデオコミュニケーションツール"Skype"が生まれたのもここエストニアだ。
そんなバルト三国内最大のテックカンファレンス、Latitude59は世界中からスタートアップ企業、投資家が多く集まるネットワーキングの場として毎年5月に開催されている。規模で言うと大きいとは言えないが濃厚なディスカッションが繰り広げられる。今年は1,500名以上が世界中から参加し、計37社がデモエリアに出展。

今年は「バーチャル国家」、「AI 人工知能」、「VR/AR」、「IoT」の4つをテーマにセッションが繰り広げられた。
オープニングスピーカーにはエストニア政府、Taavi Rõivas(ターヴイ・ロイヴァス)首相が登壇し『デジタル先進国として今後も多くのチャレンジに立ち向かう準備はできている』と言う。e-Residency(エストニア人以外でエストニアでビジネスを行えるようにバーチャル住民として登録できる)だけでなく、先々週発表の新スタートアップビザではバーチャル住民ではなくリアルでのグローバルスタートアップ企業の受け入れを行うという。よりデジタルに注力することを宣言した。

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36歳のTaavi Rõivas(ターヴイ・ロイヴァス)首相

他にも「5年後の世界」をテーマに世の中に大きな衝撃を与えるであろうスタートアップ企業がプレゼンを行った。
エストニアのスタートアップStarship TechnologiesはEx-Skyper(元スカイプ社員)が"宅配ロボット"を開発。 ロボットは人が歩く同じスピードで半径4.8キロ以内であれば30分以内に配達が可能。2016年5月23日時点、5292kmの公共道路を走行し、事故ゼロ。ロボットにはセンサーだけではなくカメラが搭載されているために宅配玄関先まで確認することが出来る。
食品宅配やテイクアウト宅配は最初のサービス内容として2017年にアメリカにて宅配サービスを開始する。

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実際に毎日タリンの街をテスト走行しており、街で一度出会ってみたい

また、ピッチステージでは100社以上が応募し、9社が決勝戦に進んだ。 審査員にはエストニア政府や投資家が参加し、緊張感高まる中ピッチが行われた。優勝したのは「Timbeter」と「Rangeforce」。

Timbeterは材木のサイズ測定のスマートデバイスソリューションである。積まれた材木の表面を写真で撮るだけで、それぞれの木材のサイズを自動的に計算するサービス。今まではひとつひとつ直径のサイズを測っていたがこのサービスを使えば写真一枚で何十本という木材のサイズが一度に計算出来、時間が効率的に使うだけでなくデータを貯蓄、分析することによって在庫管理、そして将来のビジネスデータとして使用することが可能になる。

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Timbeter社

もう一社、Rangeforceは21世紀の"テロ"、サイバー攻撃に対するトレーニング・シュミレーター・サービス。各企業のIT責任者や開発者に対して、サイバー攻撃を受けたシチュエーションを想定し、実際の対処を行いフィードバックを受けて万全の体制を準備することができる。

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Rangeforce社

2社ともエストニアらしさが含まれるサービスであり着目点がとても面白い。
林業はエストニアが誇る主要産業のひとつであるために生まれた、Timbeter。
2007年にエストニアは前代未聞ともいえる大規模なサイバー攻撃を受け、同国のITインフラの一部が麻痺してことを受けて、サイバー攻撃から身を守るために生まれた、Rangefoce。

今回Latitude59に参加してみて感じたこととして、エストニアのスタートアップ企業はローンチ当初からグローバル市場の展開を視野にいれた上でのスタートがほとんど。
人口130万人という小さな国ゆえに国内市場、ヨーロッパ市場、そしてグローバル市場にスケールしていく戦略を立てている。世界を相手にするのが当然という姿勢は歴史から見ても国民一人一人に根付いている精神なのかもしれない。

ライター:中村寛子

大学を卒業後、グローバルデジタルマーケティングカンファレンス、ad;tech/iMedia Summitを主催しているdmg::events Japan株式会社に入社。 ad:tech tokyo 2010より、主にコンテンツプログラムの責任者として従事。 また、東京開催以外にもad;tech kyushuやiMedia Brand Summit, Data Summitなど8つのカンファレンスローンチを展開。2015年11月にmash-inc.を設立し、現在グローバルPRチャンネル制作をしている一方で企画プランニングなどプロジェクトベースで携わっている。

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