リーダーに求められる能力とモチベーションの源泉--朝倉祐介×前田裕二 リーダーズトーク

2018.01.10 15:00

「人生100年時代の次世代リーダー」をテーマに行われたSENSORSサロン。
ゲストはシニフィアン株式会社共同代表 朝倉祐介氏と、SHOWROOM株式会社代表取締役 前田裕二氏だ。

4回にわたってお届けする第2弾記事では、ゲストの二人とMC二人が過去の経験を踏まえリーダーに求められる能力について議論した。"スタートアップエコシステム"が整いつつある日本で、起業家たちが這い上がるための"モチベーション革命"にまで話題は及ぶ。

■ ジェネラリストは、スペシャリストを束ねるスペシャリスト

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(左より)齋藤精一、落合陽一

--それでは、最初のテーマ「専門性」についてお話しいただければと思います。

落合陽一(以下、落合):
リーダーにはジェネラリストとスペシャリスト、どちらが向いているのかという話があります。お二人はどのように考えていますか?
前田裕二(以下、前田):
僕は、リーダーはジェネラリストじゃないほうがいいと考えています。リーダーには「大義」を持っていることが求められる。「なぜやるのか(Why?)」が伝わることで、メンバーを強く惹きつけられるからです。

専門性は「偏愛」という言葉に置き換えられます。好きだから研究し、没頭して、その結果専門性が身につくんです。好きだから追い求めるという姿勢も「大義」だと思うんですよね。
朝倉祐介(以下、朝倉):
ジェネラリストとスペシャリストに分ける考え方もありますが、ジェネラリストはスペシャリストを束ねるスペシャリストであるとも考えられます。
落合:
その通りです。投資銀行やコンサルティングファームの人材はジェネラリストだと思われがちですが、アイディアをビジネスモデルへとまとめる能力がずば抜けている。つまり、スペシャリストなんです。しかし、いわゆる職人気質のスペシャリストは投資的な視点がないため、ビジネスとしてうまくいかないことが多いと感じています。
前田:
投資銀行時代は非常に多くのビジネスモデルをみてきたので、そのビジネスが成長するかどうかをかなりの確度で予測できます。たしかに僕の経験上、固有の領域を偏愛しているスペシャリストは投資的な視点が欠けていて、ビジネスがうまくいかないケースも少なくありません。
何かに対して偏愛と専門性のある人材と、経営的、投資的な専門性のある人がマッチングしていく必要があると思います。
朝倉:
スペシャリストにしてもジェネラリストにしても、1人で何かをなし遂げることは不可能です。人はそれぞれ得意な分野と苦手な部分があり、だからこそチームがある。そのチームを誰が引っ張るのかといえば、先ほど前田さんは「大義」とおっしゃいましたが、最終的には想いが一番強い人なんだと思います。

■ 日本のスタートアップ業界には憧れのヒーローがいない

--ここからは「スタートアップ」について伺っていきます。

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(左より)前田裕二氏、朝倉祐介氏

齋藤精一(以下、齋藤):
日本のスタートアップシーンが活気付くには、アイディアをビジネスに導くメンターが必要だと思います。起業するためのエレメントが揃っても、それをプロデュースする人材が足りていないのではないでしょうか。
朝倉:
スタートアップを生み出す環境づくりを、生態系に見立てて「スタートアップエコシステム」と表現します。まさに私が研究しているテーマです。代表的な例がシリコンバレー。起業家がいて、教育機関があって、投資家がいる。さまざまな条件が揃って初めてスタートアップエコシステムが機能します。日本は過渡期にあり、少しずつエコシステムが育ってきていることは間違いありません。事実、私がネイキッドテクノロジーを経営していた2010年と去年のベンチャー起業への投資額を比較すると、およそ3倍になっています。

しかし、まだまだ欠けている要素も少なくありません。また、スタートアップが盛り上がったとしても、上場した途端に支援の枠組みから外れて失速してしまっては意味がない。これから飛躍していかなければならない若い企業がスタートアップとして扱われなくなると、可能性を残したまま成長が止まってしまいかねないんです。スタートアップが上場し、その後さらに成長が加速していく成功事例を次から次へと生み出さない限り、スタートアップは一部の人たちだけで盛り上がっている局所的なブームというくらいにしか社会的に認知されません。
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前田:
僕は、日本のスタートアップ界にはヒーローが決定的に足りないと思っています。ビートルズがいたから「4人組のバンドを結成しよう」となるし、マイケルジョーダンがいたからバスケットボールがポピュラーになった。若い時期の意思決定は、こうしたある種の憧れに突き動かされるものが多いと思うんです。

色々なエレメントは揃ってるんだけれど皆が起業しないのだとすれば、起業することが格好いいと思われる風土を作っていく必要がある。

■ アントレプレナーのモチベーションを駆り立てる「内省と物理量」

落合:
以前、宇宙飛行士の毛利衛さんと話していたら「落合君には何が聞こえたの?」という問いを投げかけられました。初めは問いの意味を理解できずにいましたが、「何にピンときたのか」を問うているんです。

プロフェッショナルには、ロジカルな「XがあるからYする」という話ではなく、コンテキストなしに偉業に挑戦する人がいます。ピンときて、そこに没頭していくんです。僕にとってピンときたものが、"リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性"、現在研究している「デジタルネイチャー」です。
齋藤:
次に議題にしたいと思っている「モチベーション革命」につながっていきそうですね。僕はよく社員に「社長はいつ寝ているんですか?」と聞かれます。結構寝ているんですけど、楽しくて没頭しているので常に働いているように映っているんだと思います。

僕がモチベーションというか、ライゾマティクスを起業後「一生この仕事を続けられる」と思ったのは、小さいことをずっと調べていたのに、点が面になるように一気に全部が分かる瞬間を経験したことです。象形文字がいきなり読めるように、突然知識が広がるような感じです。
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朝倉:
モチベーションの源泉は合理的なものではありません。事象の大小に限らず、「俺がなんとかしなければ」と思った瞬間に生じるものです。起業も損得だけで考えたら、辛いことの方が圧倒的に多いので、あえてやる必要はないんです。

アントレプレナーの定義はさまざまありますが、誰からも頼まれもしないのに、自分が成し遂げなればならないと固く信じることを実現するために、率先して行動する人のことだと思っています。
前田:
モチベーションのスイッチは意図的に押せるものではないかと思います。重要なのは「内省と物理量」です。自分がどんなときに幸せを感じるのかを紙に書き出してみると、本当は無数にあるはずなのに、案外書くことができないんですよね。

モチベーションの源泉をあらかじめ知っておけば、意図的に自分をそこに導ける。だからこそ内省の時間が必要です。そして、果たしてそれが本当なのかを測定する経験、つまり物理量が必要になります。

自分のことを知らなければ、本当は幸せだと感じていないことに時間を浪費してしまう。モチベーションを維持しながら事業を継続するには、ビジネスモデルよりも自己を理解することの方が大切なんです。

続く「イノベーションを起こすリーダーの思考・視点」では、ゲスト二人とMCが、リーダーに求められる「具体と抽象を行き来する思考」について語った。
前田氏は能を引き合いに出し、「三つの視点」の重要性について言及する。また最後には、「テレビの未来に必要な次世代リーダー」についても意見が交わされた。

構成:オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。
Twitter:@ObaraMitsufumi
Mail: obaramitsufumi[アット]gmail.com


編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
編集者・ライター。リクルートホールディングスを経て、独立。修士(東京大学 学際情報学)
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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