テクノロジーで「歴史」を可視化、ライブエンタメ最前線--猪子寿之×小橋賢児対談

2017.07.28 18:00

「ライブエンターテインメント」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストにチームラボ代表の猪子寿之氏とULTRA JAPANやSTAR ISLANDのプロデューサーを務める小橋賢児氏を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がライブエンターテインメントの現在と展望をディスカッションした。

4回にわたってお届けする第1弾記事では、チームラボが現在行っている展覧会について、猪子寿之氏に伺う。

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(左より)猪子寿之氏、小橋賢児氏(右より)落合陽一氏、齋藤精一氏

「ライブエンターテインメント」と聞いてMCの二人は何を思い浮かべるのだろうか。 

落合陽一
(以下、落合):
「ライブエンターテインメント」と聞くと、サーカスを思い浮かべます。空中散歩してる人をみると「3次元で動くのも良いな」と思いますね。スキューバダイビングやボルダリングを始める人の心理も同じかもしれません。

また、最近だと森をプロジェクションマッピングで改造する「Foresta Lumina」 に関心があります。今までのプロジェクションマッピングは箱の中でやるものでしたが、箱の外に持っていき、街や自然の中で行うライブエンターテインメントが増えてきました。「ライブ会場に行く」以外のことができるようになり、街がエンターテインメント化してきているように思います。
齋藤精一
(以下、齋藤):
地方創生の話にもつながりますね。人が全然来なかった森に、テクノロジーを施すことで集客することができる。最終的に「自然は良いな」「自然を守らなきゃ」といった意識をお客さんに持って帰ってもらうこともできます。そういう意味では、ライブエンターテインメントは色々な入り口になりますね。


自然や街との融合もキーワードになりそうな「ライブエンターテインメント」。ここから、今回のゲストである猪子寿之氏と小橋賢児氏を交えて議論が行われた。チームラボが現在行っている北京と佐賀県・御船山楽園の展覧会の紹介から話は始まる。 

■「埋もれ失い、そして生まれる」 自分すら見失う展覧会

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猪子寿之
(以下、猪子):
今年の5月から北京のPACE BEIJINGで「teamLab: Living Digital Forest and Future Park(中国語でのタイトルは「teamLab: 花舞森林与未来游乐园」)」を行っています。テーマは「埋もれ失いそして生まれる」です。『花の森、埋もれ失いそして生まれる』という作品が会場全体を覆うように施され、花が咲いています。
(「Living Digital Forest and Future Park」のPV)
猪子:
場所によって咲いている花が異なり、12ヶ月分の花がゆっくりと場所を移動していく。とある場所では最初5月の花が咲いており、やがて6月、7月の花になり、逆に手前の空間が5月の花になり...というように、空間全体で花の分布が変わっていきます。そして、鑑賞者は気がついたら迷っている。迷い込みながら、いろんな作品に出会っていきます。森の中で、道に迷い、自分を失って、埋もれて、生まれ変わるのがテーマです。

「迷う」という言葉は普通、ネガティブな意味で使われます。それでも、迷うことによって自分がどの空間のどの時間にいるかも分からなくなっていく感覚を味わってほしいんです。お客さん自身も作品に溶け込んで、空間の一部になってほしい。普段囚われている時間と空間を忘れることで、自分の自我も少し曖昧にする。自分は世界の一部だったり、なにか世界と連続しているような感覚になれる空間を作りました。

■テクノロジーで「歴史」を可視化し、体験させる

猪子:
ほかにも、この夏は佐賀県の武雄市で「資生堂 presents チームラボ かみさまがすまう森のアート展」を行っています。会場は、江戸後期からある御船山楽園というお庭全体です。
(「チームラボ かみさまがすまう森のアート展」のPV)
猪子:
巨大な森の一部で、周辺には素晴らしい自然の巨石がたくさんあります。敷地の境界線上には樹齢3,000年以上の神木が、庭園の中心には樹齢300年の大楠があります。洞窟には、1,300年前に描かれた五百羅漢図もある。ここは、1,300年以上前からずっと人間による営みがあった森なんです。

園内の巨岩(高さ3m、幅4.5m)に滝をプロジェクションマッピングで降り注ぐ『かみさまの御前なる岩に憑依する滝』や、苔生す巨岩(高さ5.5m、幅4.6m、奥行き6.5m)に花々が永遠に咲いては散っていく『増殖する生命の巨石』など、「巨石」を使った作品が多くあります。『グラフィティネイチャー - 廃墟の湯屋に住む生き物たち』は廃墟になってしまった湯屋を生かした作品です。

他にも、五百羅漢図がある洞窟の岩壁に空書を永遠に書き続ける『岩壁の空書 連続する生命 - 五百羅漢』や御船山楽園の桜ともみじの森が光り輝く『夏桜と夏もみじの呼応する森』 があります。  

このお庭は、御船山を中心とした素晴らしい森の木々を生かしながら造られているので、庭園と森の境界線がとても曖昧です。夜の森を彷徨いながら、自分がまるで自然の一部であるかのような感覚になっていく体験をしてほしいと思っています。
齋藤:
チームラボは作品に歴史的な文脈をうまく取り入れていますよね。
猪子:
僕は、歴史の長い時間軸の中で出来上がったものがすごい好きなんです。たとえば、この御船山楽園の森と庭は1,000 億円あっても作れないですよね。これらが出来上がるまでには、とても長い年月がかかります。その長い年月のなかで人の営みが続いたことにより、単なる自然でもなく、単なる人工物でもないものが出来上がった。

普通に生きていると、人間は「個」として独立した存在のように思ってしまいます。でも本当は、何十億年という生命の連続の上にあります。頭では理解しているんだけど、普段はあまり体験できない。こうした作品を通して、長い年月を直に感じることができるんじゃないかと思っています。
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小橋賢児
(以下、小橋):
自然にテクノロジーやアートを掛け合わせることで、過去と未来が同時に存在していることをより可視化できる気がします。大昔からある自然の景色に、今のものを乗っけることで、その時代ごとの新しいものを受け取ることができる。
齋藤:
見えないものを見せてあげるのは大事ですよね。自然や人間が形成してきた歴史は、ともすれば忘れがちです。観光地で立て看板の説明を読んだだけだと、「へー」となって終わってしまう。それでもこれらの作品やイベントを通して直に「歴史」を感じられるのはとても良い。
落合:
ちなみに僕は、これらの作品の説明を虫になったつもりで聞いていました。虫が見たら「なぜ人間は可視光線が好きなんだろう」ときっと考えると思ったんです。虫は色が見えないから、チームラボの作品の良さを理解できないと思うんですよね。

人間は、色のついたビジュアルを見たいと思うし、そのビジュアルで空間や時間を把握しています。多くの生物にとってビジュアルは重要じゃないし、自然の中にもそれほどたいした量はない。 それをあえて人間色に染めていくのは面白いと思いました。 いわば、「森の人間化」ですね。

■作るときは「なにかに取り憑かれている」

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齋藤:
作品を作る際は、「自分が見たいもの」という視点が大きいですか?それとも「人が見たら驚くだろうな」という視点が大きいですか?
猪子:
正直、自分にしか興味がないかもしれません笑。さすがに世に出すときは、自分のみならず、他の人も興味があることのフィルターは入れるようにしていますが。

「自分が知りたい、体験したい」という思いもあるのですが、作品をつくっているときは「なにかに取り憑かれている」感覚ですね。後々考えると、なぜあんなに取り憑かれていたんだろう と分からなくなります(笑)。
小橋:
分かります。
落合:
僕はどちらかというと「知りたい目線」でものを作っているので、「僕が見たい、知りたい」という作り方をしているときが7割くらいですね。3割はお客さんのことを考えながらかな。

当記事の続編である「伝統の価値をテクノロジーで未来に紡ぐ--猪子寿之× 小橋賢児ライブエンタメ対談」では、小橋氏が『ULTRA JAPAN」や『STAR ISLAND」といったイベントをどのように手がけてきたのかを掘下げていく。小橋氏はなぜ俳優からイベントプロデューサーへ転身したのか、そこには若者が世界や伝統につながる"きっかけ"を作りたいという小橋氏の想いがあった。小橋氏の着眼点および行動力について次回迫っていく。

【ライブエンターテインメント--猪子寿之×小橋賢児対談】
テクノロジーで「歴史」を可視化、ライブエンタメ最前線
伝統の価値をテクノロジーで未来に紡ぐ
③「アート」で企業価値を高めるには
④世界は変えられる-参加型エンタメと教育の未来

構成:原光樹

1995年生まれのライター/編集者。慶應義塾大学総合政策学部で社会学を専攻。関心は、テクノロジー、カルチャー、哲学、思想など。Twitter:@chanco_key
Mail: koki.hara.7[アット]gmail.com

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:延原優樹

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