世界は変えられる-参加型エンタメと教育の未来--猪子寿之× 小橋賢児ライブエンタメ対談

2017.08.14 15:00

「ライブエンターテインメント」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストにチームラボ代表の猪子寿之氏とULTRA JAPANやSTAR ISLANDのプロデューサーを務める小橋賢児氏を迎え、MCの落合陽一×齋藤精一がライブエンターテインメントの現在と展望をディスカッションした。

4回にわたってお届けする最終第4弾記事では、「街アート」「参加型エンターテインメント」「教育」といったキーワードでライブエンターテインメントの未来を考える。 日本が「街アート」に向いている理由とは。 そして、参加型エンターテイメントから発想されるこれからの教育のあり方を探っていく。

■ 日本は「街アート」に向いている ローカルとアートの親和性

落合陽一
(以下、落合):
西洋人は土地に値段をつけたり、株券という想像上のものにお金をつけることで、経済を回すことを発明しました。対して、森や自然に回帰しながらアートを作っていくのは非常に日本的でアジア的な発想だと思います。
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(左から)猪子寿之氏、小橋賢児氏(右から)落合陽一氏、齋藤精一氏

落合:
その意味で、日本のローカルが持っているものを輸出していくべきだと思うんですよ。個人的には自然も活用した「街アート」は結構いけるのではないかと思っています。それを猪子さんに聞いてみたい。
猪子寿之
(以下、猪子):
去年の12月に徳島で「徳島ライトシティアートナイト チームラボ☆光る川と光る森」を行いました。これは街の真ん中を走っている川に光る球体を浮かべた『呼応する球体のゆらめく川』です。
(『呼応する球体のゆらめく川』)
猪子:
川に浮かんだ球体が、近くを通った人の存在や動きに反応してインタラクティブに光り、まわりに連続的に呼応して広がっていきます。ここは川と街の境界がすごい曖昧な場所なんです。

城跡の山の呼応する森」 は街の真ん中にあるお城と原生林も使用した作品。街の中に原生林があるってすごい珍しいんですよね。もともと城を守るための森だったから、原生林として街の真ん中に残ったんだと思います。この土地も自然と街の境界線が非常に曖昧です。
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齋藤精一
(以下、齋藤):
御船山楽園の作品をみても思いましたが、日本には八百万の神の発想がある。それぞれに神様がいて、深いストーリーがあるからこそ表現できる掘り返し方がありますよね。結果的に、日本人も知っているようで知らない物語が出てくる。
小橋賢児
(以下、小橋):
日本は、都会だと規制も含めてなかなか出来ないことも多い。一方で、地方の方が比較的自由で、いろいろと取り入れることができます。地方創生も兼ねて、いろんな場所で活動があるのは日本の強みだと思います。

■参加型エンターテインメントとこれからの教育のかたち

--チームラボはこの夏、新たな音楽フェスを開催されてるんですよね

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猪子:
7月から渋谷で「バイトル presents チームラボジャングルと学ぶ未来の遊園地」を開催しています。

夜の時間は、大人のための「Art Night(アートナイト)」があります。
(バイトル presents チームラボジャングル - Art Night と学ぶ!未来の遊園地)
猪子:
高密度の光に包まれる中、オーディエンスが音楽と空間を生み出していきます。会場のボールと光が連動していて、ボールや光の線に触れると、反応して空間が再構築されていきます。ミュージシャンもDJも出演しません。オーディエンス全員がミュージシャンであり、空間を作る人です。参加者が体を動かして光に触り、音楽を作り上げていきます。

昼の時間は、親子で楽しむ「 Kids Noon(キッズヌーン)」があります。
(バイトル presents チームラボジャングル - Kids Noonと学ぶ!未来の遊園地)
猪子:
エンターテインメントは自分の意思や身体を捨てるものが多いと思うんです。アニメや映画の主人公は、突然襲ってきた世界の大問題を解決します。視聴者はその主人公に感情移入してるだけでいい。子ども用のアニメも、基本的には同じですよね。

大人が現実逃避でそうした作品を観るのはいいんだけど、子どもの頃からそんなものばっかりを見ていると、教育に良くないのではないかと思っています。主体を全部に他人に任せるのは良いことではありません。

全部は絶対変えられないけど、ほんのちょっとでもいいから自分の意思と身体で世界を変えていく。それは、自分のコントロールの利かない他者と一緒に変えていかなくちゃならない。そうしたことを「ミュージックフェスティバル」で子どもに体験してもらいたいと思い、昼間は親子で参加できるフェスを開きました。
小橋:
子どもたちからすると、既に世界は出来上がっているように見えちゃいますよね。僕も若者のそうした意識を変えたくて「ULTRA JAPAN」を始めました。「もしかしたら変えられるかも」と思うことのきっかけ作りです。
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小橋:
僕は今年子どもが生まれたばかりです。子どもと過ごす中で、今まで気づかなかった感情や感覚に気づかされることも多い。

「STAR ISLAND」を行ったとき、みんな花火は座って見ると思い込んでたんです。でも、初めに子どもが音楽に合わせて踊り始めました。それをみた大人が「踊っていいんだ」と思って踊り始めたんです。子どもから学べることもたくさんありますよね。

特に日本は、集団圧力の中で周りを気にしながら生きている人が多い。本当は踊っていい場所で踊れなかったり、逆に周りが踊っているから「踊らなきゃ」と気を使っている人が多いように思います。

■「"家族サービス"という言葉の矛盾」。親子で楽しめるかっこいいイベントを

齋藤:
「STAR ISLAND」にもキッズエリアがありましたよね。
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小橋:
子どもがいることで、今まで行けた場所に急にいけなくなるのは良いことではないと思っています。一方、ファミリーで行ける既存の場所は「the ファミリー化」された空間が多くてダサいものが多いんですよね。大人もおしゃれをして、子どもと一緒に行ける場所を作りたいという意図がありました。
猪子:
そうそう。それができたらいいなと思っています。
落合:
「子どもを抱えているとどこかに行けない」、「子どもが遊べる場所は大人が楽しめない」といった問題は近代に特有なことかもしれません。 「家族サービス」という言葉自体がおかしい。なぜ自分が楽しくないものに、子どもが行かなきゃいけないのか。
齋藤:
大人と子どもに共通する感覚を探るのも面白いですよね。

僕の子どもは今6歳ですが、子どもができてから「世の中を綺麗な目で見たらどうなるか」というチャンネルが頭に入りました。世の中って事情の塊じゃないですか。規制の問題もあるし、世界には紛争もある。

大人の事情を全部取っ払ったらどんなものがみえるのかは、創作の原動力の一つです。
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落合:
子どもの目は良いですよね。僕が「脱近代」と呼んでいるものと重なります。凝り固まった小学生教育の延長で考えると「事情」ばかりが増えていくんです。自然のままの人類は、そんな目をしていないはず。

今回は、いろんなものを俯瞰してみることができました。空間を伝達していく音と光にどう介入するか。花火や劇場といった昔からあるものを、どうやってアップデートするか。テクノロジーを掛け合わせることでイノベーションが生まれています。

エジソンは、「音楽はライブで聞かないと意味がない」と喝破していました。まさしく、それが証明されているように思います。蓄音機とMP3は管楽器の敗北であり、人は音楽を耳に突っ込んたチューブで聞くようになりました。しかし、現代になって全感覚的に音と空間を楽しむ言語体系に戻ってきた。今のほうが絶対クリエイティブです。
齋藤:
テクノロジーによって、人間が生物学的に持っている感覚は研ぎ澄まされていきそうですね。
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チームラボの作品は、テクノロジーの力で自然や人類の長い歴史を可視化させ、私たちに体験させてくれる。そして、人間はその歴史や自然の一部でありながらも、一部であるからこそ世界に働きかけることができると教えてくれるのだ。一方で、小橋氏の仕掛けるライブエンターテインメントは、私たちが世界や伝統につながる"きっかけ"を作ることが目論まれている。

両氏に共通するのは、常に過去と現在をみつめながら"未来"について考えていることだ。だからこそ、最終回では「教育」が一つのキーワードになった。「ライブエンターテインメント」の未来について考えることは、私たちの生き方や社会のあり方について考えることと同義なのかもしれない。 

【ライブエンターテインメント--猪子寿之×小橋賢児対談】
テクノロジーで「歴史」を可視化、ライブエンタメ最前線
伝統の価値をテクノロジーで未来に紡ぐ
「アート」で企業価値を高めるには
世界は変えられる-参加型エンタメと教育の未来

構成:原光樹

1995年生まれのライター/編集者。慶應義塾大学総合政策学部で社会学を専攻。関心は、テクノロジー、カルチャー、哲学、思想など。Twitter:@chanco_key
Mail: koki.hara.7[アット]gmail.com

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:延原優樹

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