民間企業が地方創生に携わるワケ--柳澤大輔×坊垣佳奈 地方創生が再定義できること

2018.02.13 12:00

「地方創生が再定義できること」をテーマに行われたSENSORSサロン。今回のゲストは面白法人カヤックCEO 柳澤大輔氏と、クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケの坊垣佳奈氏だ。

4回にわたってお送りするシリーズの第1弾記事では、MC、ゲストの4人がどのように地方と関わっているのかをお聞きした。MCの二人はアートとビジネス、異なる2つの領域で"地方"と関わっている。

もともと地方創生に関わるビジョンを持っていなかったゲスト二人の会社が、どのようなきっかけで地方創生に携わるようになっていったのか。経済、時流、様々な側面から「地方創生」を紐解いていく。

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(左より)坊垣佳奈氏、柳澤大輔氏(右より)落合陽一、齋藤精一

まず『SENSORS』MCの二人は、今回のテーマ「地方創生が再定義できること」をどのように捉えているのだろうか。

齋藤精一(以下、齋藤):
海外や都心で生まれたサービスが、地方でも使われ始めていると感じています。以前、Uber Japanさんをゲストにお招きした際も、地方での活用方法を模索されていましたよね。

また、同じ放送回のゲストであったスペースマーケットさんも、地方にある廃校や島を貸し切ってイベントをするニーズがあるとおっしゃっていました。

(関連記事:「先進国こそ"シェア"を活性化せよ!」 - Uber×スペースマーケット対談

落合陽一(以下、落合):
地方創生と聞いて想起するのはアートです。チームラボさんが阿波踊りで地方創生をしていたり、芸術祭が開かれたり、東京では場所がないために難しかったことが、地方ではできるんです。

齋藤さんがおっしゃるように、廃校など閑散としてしまったスペースを利活用するのはニーズが大きいと思います。

(関連記事:テクノロジーで「歴史」を可視化、ライブエンタメ最前線--猪子寿之×小橋賢児対談

過去の放送でも「地方創生」について触れられたことがあった。地方は都市と比べて、テクノロジーの浸透が遅いといわれることも少なくない。しかしMC二人が語るように、地方の特性がテクノロジーの価値を再定義することもあるようだ。

以下、今回のゲストである柳澤大輔氏と坊垣佳奈氏を交えての議論である。柳澤氏が代表を務める面白法人カヤックは、鎌倉に拠点を構える上場企業だ。ウェブ制作から始まり、ソーシャルゲーム、ゲーム音楽、ウェディング、さらには葬儀まで、事業は多岐にわたる。

柳澤氏は起業した当時、地方で事業展開をする予定はなかったそうだ。なぜ地方と関わるようになっていったのだろうか。

■ "面白法人"のノウハウを地域に還流 時代に即した「豊かさ」を求め地方へ

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--まずは、カヤックの事業についてご説明いただけますか?

柳澤大輔(以下、柳澤):
カヤックは鎌倉に本社を構えており、今年で創業20年を迎える老舗のIT企業です。色々な事業を手がけていますが、本質はインターネット企業。なので、300人いる従業員のほとんどがウェブのクリエイターですし、任せていただく仕事も面白コンテンツやゲームの製作などが大半を占めています。

地方と接点を持つきっかけは、6年前に始めた地域プロジェクト「カマコン」です。弊社の「面白く働く」社風や社内に蓄積した「面白く働く」ためのノウハウ・フォーマットを、鎌倉への企業誘致や鎌倉の地域活動にも活用できるのではないかと考え始めました。

カマコンは非常に盛り上がり、地域の人と仲良くなるきっかけになりました。企業の目的は利潤の追求ですが、ただ稼げば幸せになるというわけではありません。経済成長と精神的な豊かさが比例しない現代において、お金で測れない豊かさのあり方を再定義する必要があるのではないかと思ったんです。そして、豊かさのヒントが地方にあるのではないかと考え、現在、カマコンという地域を盛り上げるフォーマットを全国20か所以上で展開しています。

■ 「4割は地方プロジェクト」 クラウドファンディングが担う地方創生の役割とは

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--次に、坊垣さんからMakuakeについて説明をお願いします。

坊垣佳奈(以下、坊垣):
Makuakeはクラウドファンディングのプラットフォームです。4年前に始まり、今まで約3,500件のプロジェクトを応援してきました。日本は震災を機に「寄付」の意味合いでクラウドファンディングが浸透してきましたが、私たちの事業は、「日本のクリエイティブを応援したい」、「人々のモノづくり、コンテンツづくりを応援したい」という想いから始まっています。

Makuakeの特徴は、「プロジェクトのコンサルティングをしている点」です。クラウドファンディングのプロジェクトの組み立て方から発信の方法まで、深く関わることで成功へと導いています。

地方創生に関して言えば、私たちははじめから「地方発のプロジェクトを展開しよう」と考えていたわけではありません。優れたプロダクトを探していったら、自然と地方に行きつきました。現在、プロジェクトの4割くらいが地方発のものです。
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齋藤:
プロジェクトの数は人口に比例しそうですが、地方にもプロジェクトはたくさんあるんですね。
坊垣:
はい。ただ、地方は関東圏に比べ、クラウドファンディング自体の認知度は低いです。そこで、地銀(地方銀行)さんや信金(信用金庫)さんから各地域の企業さんに、「融資はできないけれど、クラウドファンディングという資金調達の形がありますよ」とご紹介いただくことで、プロジェクト化に導いています。私たちがクラウドファンディングでサポートした後、地銀さんや信金さんが融資を行うといった流れもできています。

--ちなみにMCのお二人は、地方とどのような接点があるのでしょうか?

齋藤:
冒頭で落合君がアートの話をしていましたが、アートの文脈で地方に関わることが多いです。芸術祭やトリエンナーレに出品したりイベントを開催したり。また、作品に用いる材料は、養蚕業など地方の産業がダメにならないようにと応援する意識で購入するようにしています。
落合:
僕には3つの関わり方がありますね。1つ目は齋藤さんと同じように、作家として作品を出すこと。2つ目は、勤務先が筑波大学なので、つくば市の行政と一緒に行うまちづくりのプロジェクト。3つ目は地方の物産品などのPRです。

続く「経済×文化で考える"真の地方創生"とは?」では、「本当の地方創生とは何か?」についてディスカッションした様子をお届けする。
行政が提唱する「地方創生」と、ビジネスシーンで活躍するゲストやMCが考える「地方創生」とでは何が違うのか。
「移住促進のためにライフスタイルを提示する」、「東京を経由しない直行便で地域同士をつなぐ」など具体的な提案が飛び交った。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

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