「経済×文化」で考える"真の地方創生"とは?--柳澤大輔×坊垣佳奈 地方創生が再定義できること

2018.02.16 17:55

「地方創生が再定義できること」をテーマに行われたSENSORSサロン。今回のゲストは面白法人カヤックCEO 柳澤大輔氏と、クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケの坊垣佳奈氏だ。

4回にわたってお送りするシリーズの第2弾記事では、「本当の地方創生とは何か?」をテーマにディスカッションした。政府が「地方創生」を提言してから3年が経過した今、我々は地方とどう向き合うべきなのか。「移住促進のためにライフスタイルを提示する」、「東京を経由しない直行便で地域同士をつなぐ」など具体的な提案も飛び交った。



■ 物産展が明示する「地方が儲からない理由」

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齋藤精一

齋藤精一(以下、齋藤):
「地方創生」が生まれたのは2014年。そこから約3年半が経過し、これまでに様々な地域で多様な「地方創生」へのアプローチが行われてきました。今もなお「地方創生」が叫ばれている中で、今一度その定義を考えるべきではないかと思っています。真の地方創生とは何か、皆さんはどうお考えでしょうか。
落合陽一(以下、落合):
僕の勤務先、筑波大学があるつくば市は、おそらく地方に該当しますが、東京から45分程とアクセスに優れています。都市のように栄えているところもあれば農村のようなところもある。つまり、もともとあった街を少しずつ開拓していったのだと思うんです。

そうした地域では、東京で流行したことをそのままやったところで、根付かないと思うんです。例えば、つくば市に起業家のためのシェアオフィスを作っても意味がない。筑波大学には3Dプリンタがあって、学費がオフィスを借りるよりも安かったりするので。要するに、その地域にあった「土着」の地方創生を行う必要があると思っています。
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(左より)坊垣佳奈氏、柳澤大輔氏

坊垣佳奈(以下、坊垣):
交通網の発達により、都心と地方の距離が縮まってきているように感じます。すると地方創生のキーワードとして観光が注目されますが、どうしても一時的な創生という側面があります。地方創生を継続させるためには、その土地の産業を活性化させなければいけません。もちろん経済的な観点もありますが、産業が元気な土地は人が活気にあふれています。

日本全国のプロジェクトを支援する中で、技術は素晴らしいのに認知度が低く、やがて廃れるであろう産業をたくさん見てきました。そういったところはテコ入れしもっと伸ばせると思っています。
柳澤大輔(以下、柳澤):
「鯖江のメガネ」のように、産業を集積し競争を促せば、結果的にその土地が潤います。しかし、ただ産業を集積するという考えだと、東京に一極集中させた方が良いという話になってしまいます。
落合:
地方が潤わない理由の1つに「良いものなのに安くなってしまっている」ことが挙げられます。東京ではブランディングやデザインを重ねることで利ザヤを稼いでいる商品をよく見ますが、地方ではそのロジックが浸透していません。物産展を見ると分かりますが、商品を原価に近い価格で売っています。

良い日本酒にかっこいいデザインを施せば、価格は上がるし買いたくなる。東京では当たり前になっているデザインやブランディングの手法を学ぶべきだと思います。

■ クラウドファンディングが中小企業と金融機関の橋渡しをする

齋藤:
地方創生に対して志を持った若者が全国にいますよね。そういった若者と地方の老舗企業とコラボレーションさせるなど、人や企業をどんどんつなげていく役割がこれから必要になってくるのだと思います。

そういった点で、Makuakeさんは地域産業にもう一つ変数を掛け合わせている印象があります。最近だと、某家電メーカーさんの液晶材料の研究で培った蓄冷の技術で、日本酒の新しい楽しみ方を提案するプロジェクトがありましたよね。
坊垣:
はい。Makuakeはその「つなげる」役割を担いたいと思っています。本来クラウドファンディングが持つ仕組みではないのですが、テクノロジーや老舗企業だけでなく、流通の売り場や金融機関など、複数の要素をつないでいければと思っています。

日本は研究開発費ランキングで世界3位にランクインしていますが、アウトプットが弱く、商品化されない技術がたくさんあります。日本酒のプロジェクトもまさにそうで、家電メーカーさんの特別チームと一緒に商品開発から考えました。

シャープの研究開発技術を活用した、保冷バッグを活用した・氷点下で楽しむ日本酒プロジェクト

落合:
どれだけ高い技術であっても、商品企画をしている人が見出さない限り、商品にはなりません。だから特許は全てオープンソースにすれば、もっと効率よく儲かるのにと思っているんです。
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(左より)坊垣佳奈氏、柳澤大輔氏

齋藤:
「地銀さんとコラボレーションする」といった話がありましたが、過去にMakuakeさんが地銀さんや信金さんと協力した事例を教えていただけますか?
坊垣:
岐阜信用金庫さんからのご紹介で、関市にある会社さんと一緒に、鍵の形をした便利グッズを作りました。糸や段ボールを切る、栓抜き、ナット...と、様々な使い方ができます。ここには、鎌倉時代から関の産業を支えていた刃物の技術が生きています。

ポケットにしのばせる6in1鍵型便利ツール「Key-Quest」プロジェクト

坊垣:
この関市の会社さんは、下請け仕事に依存しないよう企業向けではなくコンシューマー向けの商品を作りたかったそうなんです。でも、銀行から融資は得られない。そこでクラウドファンディングを一枚かませることによって、その結果如何で融資を得られることになったんです。これから地方で地銀さん、信金さんと関わらせていただく中で、融資にまだいたっていない企業のチャンスになるような仕組みを作っていきたいですね。

■ 刺激的なライフスタイルの提案によって、人口流出は防げる

柳澤:
日本を俯瞰すると、東京に産業が集積していて、経済的に豊かな東京に企業も人も流れてしまう現状があります。真の地方創生を実現するには、経済とは違った点で東京よりも魅力的な、別のアプローチが必要ではないかと思っています。東京にはない、その地方ならではの楽しさを創出し発信する必要があると思います。
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落合陽一

落合:
近年「移住」が注目されるようになってきましたが、他の地域に住んでいる人たちに「住みたい!」と思わせるためには、ライフスタイルをいかに提示するかが重要です。 例えばつくば市は、「研究者」というライフスタイルを提示できているので、つくば市に移り住んでくる人は非常に多いです。 海沿いの街なら、「漁師」としてどんなライフスタイルを送れるのかを紹介すると面白いかもしれないですね。
柳澤:
地方から人口が流出する要因に「地方はつまらない」と思っている人が多いことがあると思います。東京に比べて刺激が少ないんですよね。だったら、刺激を増やせばいい。私はカマコンを通して様々なアツい地域を見てきましたが、そうしたアツい地域同士が「直行便」でつながるようになれば良いと思っています。 具体的な提案をすると、鎌倉の姉妹都市はフランスのニースなので、ニースと鎌倉をつなぐ直行便をつくるんです。東京を経由しないことで、鎌倉にしかない魅力の創出につながります。

続く「地方創生を"自分ごと化"する方法」では、カヤックが行う「カマコン」の事例をもとに、地元住民が地方創生を主体的に考える、"自分ごと化"するためのアイデアについて議論した。地方創生を推進するカギとして、「地域のキーマンの巻き込み」と「地域へのコミットメント」の重要性にも話は及ぶ。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

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