地方創生を"自分ごと化"する方法--柳澤大輔×坊垣佳奈 地方創生が再定義できること

2018.02.20 14:00

「地方創生が再定義できること」をテーマに行われたSENSORSサロン。今回のゲストは面白法人カヤックCEO 柳澤大輔氏と、クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケの坊垣佳奈氏だ。

4回にわたってお送りするシリーズの第3弾では、「地元住民が地方創生を"自分ごと化"するには?」をテーマにお送りする。柳澤氏は、会議の形式の1つである「ブレインストーミング」を用いることで、坊垣氏は、クラウドファンディングのプロジェクトを通して、地元住民が地域に対して主体的になってくれたと語る。ゲストとMCそれぞれの、地方創生を"自分ごと化"する方法に迫った。

■ ビジネス手法で地方創生にアプローチ 「ブレスト」で地域活性化

--次のテーマ「ブレスト」についてお話しいただければと思います。カヤックが主催する「カマコン」では、会議の形式の1つであるブレインストーミングを用いることで、住民が自分の地域のことを考え意見を出し合う機会を提供しているそうですね。

柳澤大輔(以下、柳澤):
はい。カヤックが会社内でやっていたことが発端となっています。カヤックは会社のテーマである「面白く働く」を実現するため、ブレストを社内ミーティングで使用しています。ブレストのルールは、「とにかくアイデアを出しまくること」と「他人のアイデアを絶対に否定しないこと」です。

年齢、立場関係なく意見を出し合える場を設けることで、会社を社長視点で"自分ごと化"でき、仕事をより楽しいものにすることができました。この経験から、地方創生の場でも同じことをすれば盛り上がるんじゃないかと思ったんです。
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柳澤大輔氏

柳澤:
地方に持って行ってもルールは同じ。とにかくアイデアを出しまくることと、アイデアを否定しないことが求められます。なので、年齢や肩書きが関係なくなり、ざっくばらんに意見が飛び交う。鎌倉のブレストでは、下は中学生、上は80代のおばあちゃんが参加して、市長の出すお題を真剣に考え意見を出し合っていました。

議論が盛り上がるのはもちろんですが、終わった後に、おばあちゃんと少年が仲良くなっていたりして、ブレストで人と人をつなげることができるのだと思います。

■ 地方創生を推進するカギ、「キーマンの巻き込み」と「地域へのコミットメント」

齋藤精一(以下、齋藤):
カマコンを実施した後、カマコンが関わる以外の場で地域に変化はあったんですか?
柳澤:
昨年の夏、60回以上続いてきた鎌倉市の花火大会が、予算の都合でなくなりそうになりました。そのニュースを聞いた鎌倉市民の有志は、何とか花火大会を開催しようと立ち上がり、クラウドファンディングのページを立ち上げました。

鎌倉市内外で1100万円もの資金を調達し花火大会を開催させたんです。カマコンを始めて6年目で地域住民が主体的に立ち上がり、このようなプロジェクトをやってくれたのは嬉しかったですね。
齋藤:
カマコンのイベントに参加する人は、どのようにしてリクルーティングしているのでしょうか。
柳澤:
基本的には人力です。鎌倉の場合は、意識的に幅広い世代や職業の人を呼びました。第1回からずっと参加しているメンバーは、回を重ねるごとにどんどん自分ごと化していって、最終的にはこちらがテコ入れしなくても勝手に動くようになりました。
齋藤:
カマコンが成熟するまでに、どれくらいの時間がかかったんでしょうか。
柳澤:
鎌倉は2~3年かかりました。またやってみて分かったのは、参加者の中に地域のキーマンがいるかいないかによって、プロジェクトの推進力が段違いになることです。さらに、地方は「企業・行政・民間」の三すくみになっていて、この3つとうまく協業できると、プロジェクトはグングン進んで行くと感じています。
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坊垣佳奈氏

坊垣佳奈(以下、坊垣):
柳澤さんから"自分ごと化"の話がありましたが、クラウドファンディングも自分のお金を出してプロジェクトを支援する点で、自分ごと化しやすいツールです。

今年の夏、祇園祭を開催するための資金をMakuakeで調達しました。祇園祭は規模が大きく、お金には困っていないイメージがあるかもしれませんが、金額のほとんどを町内会が負担していて資金難に陥っていました。

1100年の伝統を守るために、祇園祭のプロジェクト

坊垣:
結果1300万円もの支援を得ることができたのですが、何より大きかったのは、地元のキーマンである祇園祭の理事会メンバーがクラウドファンディングの仕組みを知ってくれたことです。祇園祭の資金調達以降、京都からのクラウドファンディングの申請数が増えました。

■ 地元住民とコミュニケーションが取れない「共感不可」とは

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(左より)齋藤精一、落合陽一

落合陽一(以下、落合):
皆さんに聞きたいのが、地方の「共感不可」についてどう対処しているかということです。「共感不可」は造語ですが、地方の方とコミュニケーションをとる時に、独特の固定観念が強く、それを解きほぐすことから始めないといけません。コミュニケーションに膨大な工数がかかります。これは、しつこく粘り強くやっていくしかないんでしょうか。
齋藤:
僕はできるだけ多くの人を巻き込むことを考えています。自分のプロジェクトに乗ってくれる人も問題視する人も、蚊帳の外にいる人それぞれの肩をたたいて、「こんな関わり方をしてくれませんか?」と、粘り強く一人一人に声をかけていきます。
坊垣:
多くの人を巻き込むのは大事ですね。私も祇園祭の理事会の一人一人に、クラウドファンディングの説明をしていきました。感覚的には、男性より女性の方が地方に入り込みやすい。あと、地酒はどの地方にもあるので、日本酒が好きというのも、その地域の人と距離を縮めるのに武器になりやすいです(笑)。
落合:
要は、その地域に対して「コミットメント」を求められるということですね。地元の方に丁寧に説明したり飲み会に参加したりするのは、「お前はどれだけこの地域と関わっていく気があるのか」と問われているわけですね。僕の場合、地域の意思決定者を説得する方法として、相手に硬い名刺を渡して、相手からもらった名刺にお歳暮を贈ることで、まず心を開いてもらいます。


最終回となる次回、「アートの永続性が生み出す真の地方創生」では、MCの齋藤と落合が専門とする「アート×地方創生」について議論した様子をお届けする。専門性の高い領域に思えるアートだが、アートにおける"永続的な場づくり"が、地方創生を考える上で重要なキーワードであることが示唆された。また最後には、ゲストから次世代の起業家に向けて、地方創生のみならず人生を創るアドバイスも示された。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

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