アートの永続性が生み出す真の地方創生--柳澤大輔×坊垣佳奈 地方創生が再定義できること

2018.02.27 14:00

「地方創生が再定義できること」をテーマに行われたSENSORSサロン。今回のゲストは面白法人カヤックCEO 柳澤大輔氏と、クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケの坊垣佳奈氏だ。

4回にわたってお送りしてきたシリーズの最終回では、MC2人が専門とするアートと地方との関わり方に迫った。一見専門性が高い領域に思われるアートだが、地方のコミュニティと関わっていく上で通底した知見をもたらしてくれることが、議論を通じて明らかになった。

最後には、ゲストから次世代の起業家に向けて、地方創生のみならず人生を創るアドバイスも示された。

■ 「地方×アート」で地域おこし SENSORS MCが考える地方創生のあるべき姿

--齋藤さんと落合さんはアートの領域で地方と関わることも多いと思います。どんな活動をしているか、ご紹介いただけますでしょうか。

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(左より)坊垣佳奈氏、柳澤大輔氏(右より)落合陽一、齋藤精一

齋藤精一(以下、齋藤):
「アート×地方」の関わり方の1つに芸術祭があると思います。僕が初めて地方の芸術祭に参加したのは、2003年の「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」です。当時、地方とアートの関わり方について何もイメージできなかった私に、主催者から言われたのは「地域の人と一緒に作ってくれ」ということでした。

昨年、チームラボの猪子さんをゲストにお呼びした際「参加型エンターテイメント」の話をしましたが、ただ単に展示をして集客するだけではない、"地元住民巻き込み型"のアートの在り方をもっと考える必要があるのではないでしょうか。
落合陽一(以下、落合):
僕も地方の芸術祭などで作品展示の機会がありますが、僕の作品はテクノロジーを用いているので、絵画のようにそのまま置いておくことができず、定期的に人の手によるメンテナンスが必要です。

メンテナンスを地元のボランティアがやってくれるのですが、展示期間が経過していくにつれて、作品に対する愛着が湧いてくるのかコミットメントが上がり、作品の説明までしてくれていたりするんですよね。時間が経つにつれて熱量が上がっていくのは、アートの持つ力かもしれません。

特に面白かったのは、2011年に茨城県で行った展示です。そこで展示を始めた頃、展示スペースは何もない更地に屋根を付けただけでした。しかし時間が経つにつれ、その場所を提供してくれた地元の社長さんが、だんだんと展示スペースを整備していってくれました。地面が土からフローリングになり、最終的にはアートの置いてある場所を、ギャラリー兼事務所のように変えてしまったんです。

■ 永続的な地方創生は、アートが持つ深い思想の共有にあり

坊垣佳奈(以下、坊垣):
多少時間がかかるかもしれませんが、置いておくだけでだんだんと地域の方の関わりが深くなっていくのは特徴だと思います。私も「越後妻有トリエンナーレ」にボランティアとして関わっていますが、アート作品として置かれたカカシが、季節の移り変わりで寒くなるにつれて、だんだんと厚着になっていることがありました。そういった、置いておくだけで住民の主体性を呼び覚ます力がアートにはあるのかもしれません。
齋藤:
アートが本当に持つ永続的な力を理解せず、一過性のフェスやイベントで終わってしまうところもありますよね。一過性ではなく、越後妻有や直島のように比較的に長いスパンで地方に生き続けるアートの方が、地方にとって良い影響をもたらすと思っています。
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坊垣:
永続的なアートイベントをやったとしても、アート作品は維持費が高いものもありますし、管理も難しい。3か月ほどで作品が壊れてしまうのはよくある話です。
柳澤大輔(以下、柳澤):
ただ単に面白い作品を置くだけでは永続性がありませんし、そこから得られる経験も少ない。地元の人が関わるイベントになれば永続性が生まれ、地元民どうしの仲が深まり色々な交流も生まれます。そうした深い思想を共有できるよう設計すべきだと思います。
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■ つながり励ましあい、ともに地方創生を! 興味があることにまっすぐ向かっていけ!

--最後に、これからビジネスを始めようとしている若者にゲストのお二方からヒントや心構えをお聞かせいただけますか?

柳澤:
今日のテーマ、「地方創生」に絡めたアドバイスでいうと、地方創生を頑張っている人どうしはつながっているので、辛いことがあっても励ましあえます。地方を盛り上げることは非常に楽しい戦いですし、僕も応援するので、一緒に地方ならではの魅力を伸ばしていきましょう。
坊垣:
色々なことが多様化し、選択肢も多く、選択したことを正解にしなければいけないという難しさもあるでしょう。しかし、やりたいことを「自分はこれをやりたいです」って恥ずかしくなく言える時代になってきていると思っています。なので、好きなこと、興味があることに真っ直ぐ向かって欲しいなと思っています。

「地方創生」が叫ばれてから、既に3年以上経つ。これまで、多くの若者や自治体が地方を盛り上げようとトライアルアンドエラーを繰り返してきた。その成果が少しずつ実を結び始めてきていることが、今回の議論から感じられる。

しかし、まだまだ解決すべき課題は多い。MC落合が語るように、地方には独特のコミュニケーションがあり、「共感不可」が起こることもしばしばある。共通言語を持たない人間関係の上に、共に地方を創生する「共創」は成立しづらい。

テクノロジーの進歩により都心と地方の距離は縮まっているが、テクノロジーは必ずしも心の距離を縮めてくれるとは限らない。祇園祭や鎌倉の花火大会がそうであったように、地方創生成功の鍵は、ゲストらが指摘した深い"思想の共有"であり、その第一歩として地元住民を"自分ごと化"させることが必要となる。

今回のディスカッションから地方創生、ひいては日本における地方の在り方そのものについて考えるきっかけが得られたのではないだろうか。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

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