フリーズして保存出来なかった...そんな事態からあなたを守る「論文まもるくん」【SENSORS WONDER】

2015.10.20 15:00

今は、まだ誰にも理解されないものかもしれない。しかし、それが時に世界を動かす大きな発明になるかもしれない...そんな思いの元、学生・企業・研究者達による「不思議な」プロダクトを紹介するコーナー「SENSORS WONDER」。OAではミニコーナーなのだが、そこで紹介するプロダクトの開発の裏には、様々なストーリーが存在する。OAで紹介しきれかなかったこのストーリーをSENSORS.jpでも公開していく。

作業中にPCがフリーズして大切なデータを保存出来ずに失った...そんな経験をお持ちの方もきっと多いのではないだろうか。そんな事態からあなたを守ってくれるのが「論文まもるくん」。キーボードから手が離れると、アームが登場し「Ctrl+S」(「保存」のショートカット)を押してくれる。つまり「保存をし忘れた」という状態を常に回避出来る。
仕組みは、キーボードから手が離れたことに体温を感知するセンサが反応、モータの回転運動で扉が開きアームが出て、「保存」のショートカットキー「Ctrl」と「S」を押してくれるというものだ。

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この「論文まもるくん」はSENSORS ディレクター兼アシスタントプロデューサー・岡田麻里奈がネットで見つけ、「Maker Faire」というユニークなものを作り出す"Maker"が集うイベントに出展するという情報を知り現場で突撃交渉。今回の紹介に至った。
開発したのは、なんと現役の学生。九州工業大学 大学院生命体工学研究科 河島晋さんと、情報工学部 酒井文也さん。河島晋さんに、「SENSORS WONDER」担当・岡田が開発の裏話を伺った。

■"論文"というネーミングの理由は?

--作ろうと思ったきっかけはどのようなものでしょうか?

河島:
私がこのアイデアを思いついたのは5年前、高等専門学校でロボコンに向けて作っているロボットのプログラミングをしていたときに起きた事故がきっかけでした...。

一生懸命ロボットのプログラムをパソコンで書いていて、3時間くらいキーボードをカタカタとしていたのですが、突然パソコンが全く動作しなくなってしまいました。パソコンは再起動すれば大丈夫なのですが、3時間頑張って書いたプログラムは保存をするのを忘れていたため跡形もなく消えてしまい、努力が水の泡になるという悲しい事故が起こってしまったのです。

保存のショートカット「Ctrl」+「S」を押すだけの簡単な事をしなかったのだろう。そんなことを思いながら、私は一緒にいたメンバーにふとこんなことを言いました。
「勝手に保存の操作をしてくれるロボット作れば解決じゃね?キーボードのCtrl+Sとか押してさ(笑)」

このときはジョークで言っただけだったので、実際に作り始めたりはしませんでした。ただ、アイデアとしては我ながら面白いなと思ったのでアイデア帳に「勝手にCtrl+Sをするロボット」とだけ文字を残しておきました。

それから4年後の2014年冬、「ロボコンとは違う、自由なものを作ってみたいな」と創作意欲がわいてきた頃、地元福岡県のソレノイド(銅線に電流を流すと磁界が発生し、磁性体の可動鉄心を吸い寄せる電気部品)メーカー・タカハ機工株式会社による「ソレノイドを使った発明品のコンテストをします!」とタカハソレノイドコンテスト(通称・ソレコン)の開催告知をネットで見つけました。私はソレコンへの応募を決意し、機械製作が得意な後輩の酒井を誘って「ハンドベル演奏マシン」を作ろうと計画を進めました。しかし、ハンドベル演奏マシンを製作するには相当な費用がかかることが発覚し、進めていた試作も難航していたため、コンテストの締め切りに間に合わないかもという話になって何か別のものを作ろうということになりました。

何を作ろうかと2人で悩んでいた時に何気なくアイデア帳を開き、そこには「勝手にCtrl+Sをするロボット」という文字があったのです。こうして論文まもるくんの開発がスタートしました。名前に「論文」とついているのは、ロボットが完成した時期が1月下旬、ちょうど大学生の卒業論文の締め切りが近いシーズンだったので、卒業論文執筆の経験がある大学生や大学を卒業した社会人の方へのウケを狙って、こんな名前にしました。
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--側面で論文を書いているか見はっているセンサは、どのようなセンサでしょうか?

河島:
人を感知したらONになる照明などによく使われる、人体検出用赤外線センサ(焦電型赤外線センサ)を使っています。

--「ソレノイド」を使ったという点も特徴ですが、実際にどのような役割を果たしているのでしょうか?

河島:
モーターは電圧を加えると回転運動をしますが、それに対してソレノイドは電圧を加えると直線運動(押すor引く動作)をします。これによって、キーボードを押す操作が出来るんですね。
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■日常の『あるある』を面白おかしく解決

--将来、こんなことに発展させたい...という野望などはありますでしょうか?

河島:
最近は3Dプリンタが流行してきて、企業にしかできなかった製品を個人で作れる「パーソナルファブリケーション」の時代になったと話題になっています。でも、3Dプリンタを手に入れても、作るもののアイデアが無ければ「何を作ればいいかわかんない」となりがちです。

そんな中で論文まもるくんは「保存をうっかり忘れる」という、多くの人が共感する日常の経験を元にしたものです。この作品は「データの保存をしてくれる便利なロボット」というより、「日常に潜む『あるある問題』を面白おかしく解決するロボット」なんです。

これを見てくださった方が「日常に潜む『あるある問題』を面白おかしく解決する」というコンセプトで、新しいものを作ってみようと思ってもらえたら嬉しいなと思っています。日常生活で困ったことが起こったらちょっとメモし、思いついたらすぐにカタチにする。本当に役に立つかどうかはどうでもよくて、面白いかどうかがポイントです。そういった「笑い」を軸にしたパーソナルファブリケーションが文化として広まるのも楽しそうですよね。
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ソフトとして自動保存を組み込むのではなく、あえてハードとしてこのプロダクトを作り日常のあるあるを"面白おかしく"解決。たまに張り切って何度も「保存」してしまう、こんな愛嬌のあるロボットが身の周りに増えると、日常もちょっぴり豊かになるのかも。
こんな「不思議な」プロダクトを今後もSENSORS WONDERでは紹介していく。

聞き手:岡田麻里奈

SENSORS ディレクター兼アシスタントプロデューサー。日本大学芸術学部 放送学科 テレビ制作専攻卒。大学時代は映像を作り続ける傍ら塾講師としての経験も。「ZIP!」や各種特番の担当を経て現在に至る。「あなたの熱い想いを皆様へ」をモットーに、取材ではしつこいくらい...いや、仲良くなれてしまうくらい、真意に迫ります。

構成:市來孝人

SENSORS WEBエディター
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
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