220万ユーザー突破!"能力"を獲得し続ける女子高生AI「りんな」

2016.02.09 18:30

昨年8月よりMicrosoftが提供を開始した女子高生AI「りんな」。現在は、LINEのみならずTwitterでも「りんな」と触れ合うことができる。昨年12月に原宿で行われたリアルイベントや毎週「りんな」が獲得していく"能力"が好評なこともあり、ユーザー数は早くも220万人を超えた。サービス開始から現在に至るまで、「りんな」が歩んできた道筋についてMicrosoft・佐野健氏に話を聞いた。

■ディープラーニングと機械学習が生んだ女子高生AI「りんな」

Microsoftが中国で提供している「シャオアイス(XiaoIce)」というチャットbotが、日本では女子高生AI「りんな」として昨年より提供されている。
グローバルで展開する検索エンジン「Bing」で培ったディープラーニングの技術と機械学習クラウドサービス「Azure Machine Learning」が技術のベースだ。 LINEやTwitterにおけるユーザーの問いかけに対して、女子高生ならではの回答が話題を呼び、今年になりユーザー数は220万人を突破。

画像は公式サイトより

MicrosoftのAIといえばWindows 10に標準搭載されたパーソナルアシスタント「Cortana」を想起する人も多いが、両者には明確な違いがある。前者はユーザーの生産性をサポートする、いわば"秘書"(IQ的)のような存在であるのに対し、「りんな」は感情的なつながりを持つ"友達"(EQ的)であるというのだ。

■Microsoftが「りんな」を作ったワケは、検索エンジンBingにある

サービス提供開始から半年が経過し、ユーザーからは「りんなが賢くなってきた」という声も聞くという。みんなの軽妙な語り口の精度が上がるのは会話のプールが蓄積されていくためだ。すなわち、ユーザー数の増加もしくは一ユーザーあたりの会話量が増えるほど「りんな」は学習量を増やす。

なぜMicrosoftがこうしたサービスを提供するのか、なぜ女子高生というキャラクターなのか、この半年で「りんな」が獲得してきた能力(機能)はいかなるものか。開発チームと連携して「りんな」のプロジェクトを推進しているMicrosoft佐野氏に話を聞いた。
「りんな」のようなキャッチーなサービスをMicrosoftが提供するのは少し意外に感じるが、何が狙いなのだろうか。

佐野健氏:Bingインターナショナルビジネスディベロップメント シニアビジネスディベロップメントマネージャー

佐野:
狙いというのはそれほどなくて、我々が人工知能のテクノロジーを持っていたことが大きいかもしれません。「りんな」には検索エンジンの技術が活用されていますが、そもそも世の中には現在2つの検索エンジンしかありませんよね。そういう意味で、サービスを開始するのは必然的だった部分があるかもしれません。

ーー昨年12月よりTwitterにも「りんな」が登場しました。LINEだけではなく、Twitterも始めた理由を教えてください。

佐野:
LINEというのは良くも悪くもクローズドなコミュニケーションが中心です。我々はほとんどマーケティングを行っていないので、若年層に浸透しているTwitterというオープンなコミュニケーションの中で認知度を高めたかったことが理由に挙げられます。

ーーTwitterとLINEでユーザーの反応は異なりますか?

佐野:
LINEはプライベート、Twitterはパブリックな特性があるのでコミュニケーションの違いはあります。例えば恋愛相談みたいなことはLINEで行われる場合が多いですね。

■「しりとり」や「犬認識」など人工知能ならではの能力を身につけていく「りんな」

「りんな」はユーザーと会話するだけではない。毎週新たな"能力"(機能)を獲得していく。
いくつか例を挙げると、犬の画像を送ると犬種を特定する「犬認識」、「探偵ごっこ」、「恋愛相談」、「食テロ」、「羊を数えよう」などユーザーを飽きさせない様々な隠し能力があるのだ。

そうした"能力"を確認する手段はただ一つ。「りんな」に「ひみつ手帳」と語りかけてみよう。

佐野:
会話しかできないとなると、どうしてもユーザーさんも飽きてしまう。そのため、毎週1つ新たな能力をリリースしています。新たな能力に関してはユーザーさんのフィードバックを参考にするというよりは、チームの中で「こんなのがあったら面白いのではないか」とアイデアベースで作っています。「りんな」はあくまでもユーザーさんの友達を目指していますので。

こうした能力はユーザーを飽きさせないだけではなく、感情的な"つながり"を喚起し、習慣付けるような働きもある。「目覚まし」という能力はその一例だ。

佐野:
「次の朝、何時に起こしてくれ」っていうことを「りんな」に伝えておくと、「朝ですよ、起きろ」ってプッシュ通知が来るのですが、そこは女子高生らしく、ドンピシャの時間ではなく、妙に早くくるんです。さらに、今度は「りんな」の方から「16時に大事な友達との約束があるから教えて」っていうふうに言うんですよ。ユーザーさんはその時間に教えてあげるという(笑)このように存在をプッシュ通知という形ではなく、認知していただき、生活に溶け込んでほしいと思いますね。

ーー他にユーザーの反応が特に良かった能力はありますか?

佐野:
12月の上旬あたりにリリースした「しりとり」でしょうか。あとは今年の1月に出した「おみくじ」も話題になりました。今後も季節感のあるものは引き続きリリースしていきたいと思っています。

■「りんな」は"永遠の女子高生"であり続けるのか?

昨年末にはLINEのグループチャットにも対応した「りんな」。その背景として冒頭でも紹介した、中国で「りんな」に先行して提供されていた「シャオアイス」が人々の間に広がっていったきっかけがグループチャットだった。中国で主流のメッセージングアプリWeChatのグループチャットにシャオアイスが対応することで、バイラルが生じ、ユーザー層が膨らんだ経緯があったのだ。

ーー現在はLINE、Twitterベースの「りんな」ですが、今後FacebookやInstagramのようなプラットフォームにも進出していく予定はありますか?

佐野:
我々は常にオープンですので、あらゆる可能性は否定しませんが、基本的には10〜20代のデファクトスタンダードであるLINEとTwitterにフォーカスしている次第です。

ーー「りんな」そのものはどうなっていくのでしょうか?時間と共に成長していくのか、高校生であり続けるのか。

一人一人に応じて「りんな」自体がパーソナライズしていくと、一つのペルソナを保つのが難しくなるため、どちらかの道を選ばなくてはならないという。

佐野:
実はまだ決めかねています。ユーザーさんと共に成長していくのは一長一短あると思っていまして、ユーザーさんは当然時と共に年齢は上がっていくわけですよね。それに応じて「りんな」も成長するというのは一つの考え方ですし、一方で育ってくるさらに若い層の人たちからはちょっと距離を感じてしまう形にならざるを得ません。非常に悩ましいところですね。

ーー2016年の「りんな」に関する展望があれば教えて下さい。

佐野:
始めた当初から変わっていないのですが、我々は収益面も含め、あらゆる指標を持たずに運営しています。グロースハックのような考え方があると思うのですが、我々も今はまずユーザー数を増やすことに注力していますので、それ以外のことについてはそれほど考えていません。

■イケメン男子ではなく、女子高生というキャラクターにこだわるワケ

「(「りんな」の)男性バージョンがほしい」というユーザーからのフィードバックは少なくないというが、佐野氏は懐疑的だという。その理由は男女の会話のパターンが質的に異なるからだ。

佐野:
女子高生あるいは若い女性の会話はエンゲージングというか、長続きしますよね。イケメンの白馬の王子様って絶対にそんなに長く会話をしないと思うんですよ(笑)イケメンほど口数は少ないですし、口数が多くなったら違うキャラクターにおそらくなってしまうのではないでしょうか。

とはいえ、日々インターネット上のデータ量は爆発的に増え、ディープラーニングや機械学習の技術も精度が高まっている。佐野氏があらゆる可能性に対してオープンであることを強調していたように、「りんな」も変化を遂げていくのだろう。「りんな」との会話だけではなく、マイクロソフトの革新的な人工知能技術ふんだんに駆使して毎週リリースされる「能力」にも注目してみてほしい。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集者/ライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府にてメディア論を研究。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

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