移住の前に『試住』しませんか?マイクロステイは人の暮らしを優しく変える

2015.09.08 09:30

「試食」や「試乗」と同じように、なぜいままで「試住」という考えがなかったのだろうか。不動産業界で新しいコンセプトを展開する「microstay」を、実際に試住ができる鎌倉の古民家で取材。仕掛け人が東京から鎌倉に移住した驚きの経緯とは...?

「試住」できる物件の近く、由比が浜・材木座海岸にて...

鎌倉駅からバスで10分。九品寺近くのバス亭を降りると、材木座海岸から立ち込める潮の香りがする。そこからすぐのところに昔懐かしの古民家が姿を現す。静かで、緑が取り囲む「油屋ハウス」はおよそ築100年。味のある縁側が古き良き日本の暮らしを彷彿させる。実はこの古民家は「試住」ができる物件なのだ。

食材を買うときは「試食」。洋服を買うときは「試着」。車を買うときは「試乗」。何か買うとき、事前に「試す」というのは当たり前の行為だ。そして、大きな買い物をするときほど試すことの重要さを増す。人の一生で一番大きな買い物は「家」。ならば、試着や試乗と同じように「試住」があってもいい。そう考えた川村 達也(かわむら たつや)さんは「試住」ができるサービス「microstay」(マイクロステイ)を1年前から始動させた。

microstay 川村さん(左) インタビュアー 長谷川(右)

油屋ハウスでの取材。ちゃぶ台と縁側が出迎えてくれる

主に湘南・鎌倉エリアの物件に一定期間お試しで住まうことができるプラットフォームを提供している。住宅設備や周辺環境だけでなく、近隣住民との相性や、通勤・通学環境の相性などを肌で体感できるのが「試住」だ。マイクロステイでは、試住期間中にその物件のオーナーや近隣の方々とインターネット上で交流できる仕組みがあり、一時的な滞在を目的とするAirbnbとは一線を画す。空きスペース・物件運用をサポートするだけではなく、賃貸・売買物件の販促につなげるというのがマイクロステイの軸でもある

■ユーザーの「後追い」はしない、人の一生に根ざしたサービス

昔懐かしの落ち着く空間

マイクロステイで大切にしている考え方。「住」は人の生涯を左右する、「住」は人の生活を大きく変えるということ。

川村:
一般的に「試住」を体験してもらったユーザーさんは不動産会社にとってみれば格好の顧客ターゲットになるわけですが、私たちはユーザーさんの「後追い」はしていません。その物件を必要以上にプッシュしたり、その後の販促活動を積極的にしていません。なぜならば、住む場所を決めるというのはその人や家族の一生を左右する重大事項だからです。家庭の事情、仕事の事情、人それぞれに最適なタイミングがあるはずなので、そのタイミングを強引にずらすということはしたくない。試住をした後で、本当に引越しを考える時に試住したエリアを選択肢に入れてもらえればいいと思います。

マイクロステイのメインユーザーは圧倒的にファミリー層だ。自分が結婚して、家族ができた時。子育てをするのに本当に東京が最適かどうかは誰もが一度は悩む。でも、仕事のこともあるし、すぐに北海道や沖縄に行くかとはならない...。だったら、まずは「お試し」で住むことからはじめて、子どもの様子を観察してみたり、仕事との兼ね合いを調整してみてはどうか。マイクロステイは人の一生への想いやりに根ざしたサービスなのだ。

■東京以外は「都落ち」と思っていた?川村さんの鎌倉移住エピソード

創業者の川村さんは東京生まれ東京育ちのバリバリの都会人。現在、マイクロステイ以外にも、公認会計士としての仕事や、ベンチャーキャピタルファンドの運営も行っている。マイクロステイをはじめる少し前に、川村さんは東京から鎌倉に移り住んだのだが、その過程において、実際に「試住」を経験したという。

川村:
僕は昔、東京から離れることは「都落ち」だとすら思っていた人間でした。それが変わったのは結婚してからです。奥さんが、自然のあるとこに住みたいと言い出して、その議論の折衷案の中で鎌倉の候補が出たんです。僕は東京から出るなんて大反対だったんですよ。でも、奥さんも譲らなくて(笑)。これは実際に「住んだ」という既成事実を作らないと話が先に進まないなと。だったら賃貸でいいから実際に鎌倉に2~3ヶ月住んでみて、「やっぱり東京がいいよね」と戻ってくるプランを想定してました。
         
とはいえ、鎌倉・湘南からでも東京に通えるか正直わからなかったので、その前に現地のビジネスホテルに宿泊して、そこから通勤してみる実験をしたんです。そしたら、案外いけるなって。横浜駅くらいから座れることも多いですし、スマホで仕事もできる。
         
「試住」により、通勤が思っていたより楽だということがわかったので、鎌倉に移ってきました。。ちょうどその時に鎌倉のIT企業が集結した鎌倉を盛り上げる「カマコンバレー」発足の時期と重なって、自分にとって近しいコミュニティができたんです。自然もあるし、通勤も大変じゃないし、本当は2ヶ月くらいで帰るつもりが、気づいたら帰りたくなくなってしまいました(笑)。

この川村さんの鎌倉移住エピソードが、マイクロステイ着想のきっかけになった。その後、斬新なコンセプトの物件を扱うことで不動産業界の中では有名な「稲村ヶ崎R不動産」代表の藤井健之さんと出会い、地元の不動産情報に精通している藤井さんと協力しながら鎌倉エリアの物件を中心に試住サービスを提供するマイクロステイを開始した。

■「鎌倉」に住むことは特別なことーまずは鎌倉・湘南エリアで確固たるモデルを!

自然に囲まれた縁側で

川村さんに今後の豊富を尋ねると「もっとマイクロステイを大きくしたい!」。鎌倉の物件以外にも糸島(福岡)の物件を取扱ったり、金沢の物件を取扱う予定もあるが、直近では鎌倉・湘南エリアで確固たる成功モデルを築いていくことを目的にしている。このエリアに住む魅力を川村さんは次のように語る。

現在 試住ができるエリア(microstay サイトより)

川村:
鎌倉の魅力は「海」「山」「歴史」「東京に近い」この4要素だと思っています。自然と歴史があるのは他の地域でもたくさんあるけど、東京へのアクセスの良さを兼ね備えているのはなかなかありません。実際、情報が多く集まるは東京だし、東京に近いということはすごく魅力的です。鎌倉は東京に手の届くところにある。「どこに住んでいるの?」聞かれて「鎌倉」と答えることができる価値もありますよね。鎌倉に住む人は敢えてそこに住んでいるんです。住んでる場所を答えるだけで、自分のライフスタイルがある程度正確に相手に伝わる。そんな良さもあります。

実際に鎌倉に住んでみて「自然と気の合う人が多い」とも川村さんは言う。鎌倉に惹かれた似た思考の人が自ずと集まるのだ。「地域」の最大のコンテンツは観光資源でも周辺施設でもなく、そこに住まう「人」だと言える。マイクロステイは実際にその場に住むことができるので人との相性も判断することができる。いわば「試住」の成功モデルを最も築きやすいのが鎌倉・湘南エリアなのだ。

鎌倉で成功すれば、そのモデルは日本全国、世界でも応用が効くものになっていくだろう。不動産という巨大市場にイノベーション起こす可能性を感じさせ、かつサービス自体が人の生活を中心に設計されているマイクロステイの展開には今後も注目だ。そして私も、鎌倉という地域がとても好きになった。

取材:石塚たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

インタビュー:長谷川輝波

フリーライター、慶應義塾大学法学部4年在籍。@tkinakoo_mochii

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