テクノロジー×ファッションに必要な "ボトムアップ"な考え方「MINOTAUR」の挑戦

2015.12.17 19:00

ここに一着のジャケットがある。ミニマルでいて、スポーティ、普段使いに最適なシンプルなジャケットだ。胸ポケットについている、電源ボタン(通称I/Oボタン)を除いては。

_MG_5833-.png画像提供:MINOTAUR

テクノロジー×ファッションという言葉を聞くようになって久しいが、それは未だ一過性な流行の域を出ないように感じる。テクノロジー×ファッションが真の意味で受け入れられるにはどうしたらよいのか? 今回は12月19日にI/O COLLECTION 2015 Autumn / Winter をリリースする、MINOTAUR(ミノトール) を取りあげる。

_MG_4437B.jpg画像提供:MINOTAUR

ファッション×テクノロジーの流れが、有史以来の盛り上がりを見せている。世界的には2015年9月に発表された「エルメス(HERMES)」とApple Watchのコラボレーションは世界に衝撃を与え、日本発の話題でも、2014年9月に世界最高峰のファッション舞台「パリコレクション」で衝撃のデビューを果たした「アンリアレイジ(ANREALAGE)」がその代表と言える。
この度、MINOTAURがリリースする、I/O COLLECTION 2015 Autumn / Winterはそんな流れの中、より我々の日常に近い存在といえる。スマートフォンに対応したアプリケーションからヒーター装置を起動させると、30秒から60秒の間にアウター内が暖かさに包まれる。それでいながら、内蔵ヒーターから表生地までストレッチ性の高い防水素材を使用し、動きへのストレスをなくして快適な着心地を実現させている。
このI/O COLLECTION 2015 Autumn / Winterは、ファッション×テクノロジーの流れがより日常に近づくきっかけとなりえるのだろうか?MINOTAUR担当者にお話を伺った。

◼テクノロジーの要素も持ちながらも、快適性に重点を

DSC03551.arw.jpgMINOTAUR 中目黒本店

-- I/O COLLECTION 2015 Autumn / Winterのコンセプトを教えてください。

I/O COLLECTIONのI/OというのはInput & Outputの略称で、元々は、機器やシステムなどに、外部からデータや信号を入力(input)したり、外部に出力(output)したりするという意味です。これは我々に馴染み深いところだと電子機器などの電源ボタン。あれは一般的に標準化された記号で、Inputの頭文字とOutputの頭文字を組み合わせたものになっているんです。全く新しい取り組みをする上で、いちいち言葉で説明するよりも、誰しもが目で見て、わかってもらえるようなものになって欲しいという意味合いが込められています。

--なるほど。今回のI/O COLLECTIONではどのような点を意識されていますか?

そもそも、服自体にケーブルが内蔵され、加温されたり、色が自動で変化したりというようなモノは既に存在します。今回我々が意識したのは「テクノロジーの要素も持ちながらも快適性に重点を置いた服作り」ということです。そもそもMINOTAURというブランド自体、ハイテクとローテクを掛け合わせたものを作るというのがクリエイションの源泉となっているので、テクノロジーというものが必ずしもメインというわけではなく、快適性を実現するためにはどうしたらいいかという所からスタートして、実現のために、偶発的にテクノロジーが必要だったというイメージです。

DSC03562.pngI/O COLLECTIONでは防水素材を使用し、機能性にさらに磨きをかけている。

◼「Appleのようなテクノロジー企業が洋服を作ったら」という発想

--I/O COLLECTIONを既存の物差しに当てはめて考えるのは少し難しそうです...。

デザイナーの泉 栄一が常々言っているのが、「我々のものづくりはファッションの世界だけに限らない。我々が目指しているのはiPhoneのようなプロダクトだ。」という言葉です。一見、ぎょっとしてしまいますが(笑)。これは長年ファッション業界に携わってきた泉なりの言葉で、ファッションにはすごく詳しいです。しかし、知り過ぎているからこそ、新しいものでないとみんなに受け入れてもらえないだろうという危機感があり、洋服っぽくない洋服だとか、異業種と柔軟にコラボレーションを組んだりと、常に新しい考え方を取り入れてきました。そうした中で行き着いたのがこの考えで、必ずしもファッション業界のスタンダードである、シーズンごとにテーマもあって、コンセプトもあってというものづくりの仕方に限らず、流行り廃りのない、ずっと着れるようなものを作るという考え方が念頭にあり、それがプロダクト的にアップデートしていくようなものづくりをしようという意味なんです。ですので、今回は『Appleのようなテクノロジー企業が洋服を作ったら』ということをある程度想定して作っています。

--ブランドとしてのゴールはありますか?

抽象的ですが、新たなカルチャーを提案するということです。そのためにも例えば、大掛かりなマーケテイング施策を打っていくというやり方があると思うのですが、我々はそういったものは一過性のものだと考えています。というのも、地に足ついたものづくりをしていって着実にファンを増やしていく、そうでなければ、ブランドを長く続けていくのは難しいと考えています。なので、製品の造りの良さには自信を持っています。我々、MINOTAURでは革新性と快適性、そして見た目のカッコよさに重点を置いたものづくりをしてきました。そのどれかが欠けてしまうことのないよう、意識しています。

◼着る人自身からの『ボトムアップ』の流れで、ファッション×テクノロジーを盛り上げたい

--MINOTAURの提案するテクノロジー×ファッションがもう少し大きな流れとなっていくためには何が必要だとお考えですか?

やはり、着る人たちにどう自然に溶け込むかということが大事だと考えています。極端な話、これを着ないと生活できないのではないかという、携帯のような生活に欠かせないプロダクトであれば浸透していきますよね? その流れが必要なのですが、それはぼくらが強く働きかけるのではなく、自然発生的になくてはならないものになり、徐々に広まっていく形をとると思います。そういった自然なものに落とし込むことは我々にできることかなと思います。すなわち、今までの『トップダウン』的な流れではなく、着る人自身からの流れを作る『ボトムアップ』的な流れを作るお手伝いをしていきたいなと考えています。

--ファッション×テクノロジーは今後どのようになると思われますか?

今回のI/O COLLECTIONが受け入れられたら、少しずつアプリケーションと連動した服といったものは生まれてくる可能性があります。でも、それが世間の大多数の人は着ないような可能性もあるなとも考えており、自然に上手く人々の生活に溶け込むようなプロダクトを生み出せるよう努力を続けてきたいです。まずはこのI/O COLLECTIONがどうなっていくかをまずは見てみたいなと思いますね。

DSC03576.pngMINOTAUR 中目黒本店

以上、担当者にお話を伺った。テクノロジー×ファッションがより生活に根付いた未来では、服に様々な機能がついた、多機能衣服が登場するかもしれない。しかしどんなSF小説を読んでも、服で決済が出来たり、VRを楽しめたりといったものは見受けられない。つまり、ものには生まれ持ったもの自身の役割が社会的に担われており、極端に多機能化する必要はないのではないかということだ。
そのように考えてみると、ファッションにおいてテクノロジーが最も重要視されるのは、服本来の持つ自然環境から身を守るという役割(体温調節)と、着る人個人の身体イメージの形成に深く関わる役割(イメージ補強)なのではないだろうか。今後きっと、ファッションにおいてこれらの役割を補強していくテクノロジーが生まれていくだろう。

取材・文:岡本孔佑

フリーライター。慶應義塾大学文学部3年在籍。編集者を志し、複数の媒体で執筆、編集を経験。「KEIO CREATORS MAGAZINE」の編集長兼エンジニアも務める。最近読んで面白かった本はロジェ カイヨワの「遊びと人間」。
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写真:小幡真帆

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