音楽の未来を考えたらミックスジュースができた!~音楽ハッカソン Music Hack Day~

2015.09.07 10:00

音楽を未来を考えるハッカソンイベント「Music Hack Day」に潜入。視聴覚で楽しむだけのものじゃない新しく驚きに満ちた音楽の体験をつくりだすアイデアが続出!未来を担う若手クリエイター達が頭角を表し始めた、そんなイベントであった。

参加者・関係者全員での記念撮影

音楽の未来を自由な発想で考え、24時間で形にするハッカソンイベント「Music Hack Day」が8月22日~23日に六本木のHILLS GARAGE(フリークアウト社)にて開催された。同イベントは2009年にロンドンで開催されて以来、世界13ヶ国20都市で実施されている。日本では昨年2月に実施されてから2回目の開催になる。

HILLS GARAGE はバンドのステージを模しており、音楽ハッカソンにはお誂え向きの場所だ。

"あなたの考える「音楽の未来」を自由な発想で形にして下さい。"

アーティスト、デザイナー、プログラマー、デベロッパーといった約130名27チームの参加者が集い、シンプルなお題に対して24時間以内に開発を行う。参加者はPepperやOrphe、Spotify、ヤマハVOCALOIDといった18社が提供するAPIを利用することができる。

■優勝は「ミックスジュース製造機」ドン・キホーテでパーツ揃えた

チームGogyoが開発した「Squeeze Music」

見事グランプリを勝ち取ったSqueeze Musicは、Gracenoteの楽曲解析APIを使用して、音楽を再生しながら、その楽曲のムードに合ったミックスジュースを自動作成するジュークボックス型プロダクト。会場近くのドン・キホーテで部品を揃えたという。再生中の音楽を「Happy」「Romantic」「Sad」などのムードに分析し、脳科学的にそのムードを感じやすい味覚のドリンクを自動作成するというもの。最終プレゼンの段階では味の検証は済んでいなかったが、プレゼン中に作成されたドリンクを試飲した審査員のきゅんくんから「おいしい!」の声を引き出し、審査員全員一致でグランプリに選出された。

大手広告代理店の若手で結成されたチーム「Gogyo」。前列左から工藤さん、岡田さん、松永さん、後藤さん、眞貝さん

チームGogyoは大手広告代理店の若手クリエイターを中心に結成されている。工藤 尚弥さんは若手ながらAD STARSやNew York festivalsといった数々の国際広告賞を受賞した経歴を持つ。岡田 隼さんはデザインファームmonopoに所属しヤングスパイクスアジア日本代表に選出。松永 美春さんはアートディレクター・デザイナーとして国内を中心とした広告賞の受賞経験が豊富。眞貝 維摩さんと後藤 映則さんはSENSORSでも密着したBAPAの一期生にあたる。今後も注目の若手クリエイター達だ。

■"西村真里子賞"は漫画BGMサービス「Climix」

お馴染みの早口プレゼンで会場を沸かせる広野さん(左)と竹村さん(右)

本ハッカソンではグランプリの他に協賛企業賞が設けられたが、SENSORSにも関係の深い審査員たち(西村真里子、ジェイ・コウガミさん、きゅんくん)にもそれぞれに思うベスト作品をピックアップしてもらった。なお全ての作品はハックログを参照して欲しい。

SENSORS WEB編集長でもある西村真里子が選んだベスト作品はチームAdriablueによる「Climix」。電子書籍の漫画読書体験を楽しくするサービスで、漫画の各シーンの雰囲気に合わせて最適な曲を選択し、画面の余白や文字の大きさなどの情報からクライマックスのシーンを選別して盛り上げるような仕組みがある。「漫画を読むという通常の行為をより楽しく、もっとワクワク演出してくれるサービスだからいますぐ使いたい!」というのが選択の理由だ。

プレゼンターの広野萌さんの早口プレゼンはこうしたハッカソンイベントでの名物とも言える。Yahoo!JAPANの若手クリエイターで構成されるAdriablue はMashup Awards などをはじめとした数々のハッカソンで活躍しているチームだ。

■"ジェイ・コウガミ賞"は顔がDJコントローラーになる「Dj Faces by Dj Takaaki」

顔と頭を動かす登壇者

SENSORSでも音楽関連の話題をわかりやく解説してくれているジェイ・コウガミさんが選んだのは「Dj Faces by Dj Takaaki」。オムロン社の画像センシングコンポ「HVC」を使用することで、顔や頭の動きを用いてDJ操作ができるというもの。プレゼンはまさに「顔芸」で観覧席からは多くの笑い声が上がっていた。

「たくさんの人たちが使って、たくさんのデータが積み重なってくると、もっと新しい音楽体験できるのではないか」というのが選択の理由だ。

■"きゅんくん賞"は他の人の耳をジャックすることができる「nemimi by Kirinsan.org」

キリンさんをテーマにしたオリジナル童謡が流れ...

ロボット×ファッションの最先端を行くきゅんくんが選んだのは「nemimi by Kirinsan.org」。近くにいるユーザー同士で、お互い顔見知りであるかどうかにかかわらず、相手の聞いている音楽を勝手に操作でき、耳をジャックすることができるサービス。音楽を聞いていたら、突然知らない曲を聴かされるという不思議な体験で新しい曲との出会いを創出する。

「プラットフォームとして機能した時に、新しい表現や使い方が生まれそう」というのが選択の理由だ。

■ハードウェアと体験のデザイン

鋭い質問でプロダクトの良いところを引き出す審査員たち

審査員を務めた西村真里子、ジェイ・コウガミさんに今回のハッカソンの総括を訪ねてみた。キーワードは「ハードウェア」と「体験」。

西村:
少し前のハッカソンイベントだと、アプリやWEBサービスといった画面の中で完結するようなものが多かったんですが、今回はフィジカルな「モノ」や実際の行動を促すようなアイデアがとても多かった。2015年らしいチャレンジが多く見られたハッカソンでした。
ジェイ:
去年と比べて使用できるAPIやデバイスが多くて、アイデアが多様化している印象を受けました。たくさんのアイデアとその可能性を見ることができましたね。デバイスやセンサーと音楽と組み合わせて、音楽×日常生活を意識している人が多かったのがとても良かったと思います。去年はWEBで音楽をどう聞く、スマホで音楽を聞くというところを意識していた参加者が多かったように思えたのですが、今年は、どうやって音楽を楽しむか、どうやって非日常体験を作るかというところにまで踏み込めていましたね。

今回はAPI提供企業も含めスポンサー企業は26社にも及ぶ。各社がそれぞれ提供するリソースを存分に活用することで、これまでになくアイデアに幅があるハッカソンになったようだ。また、音楽はスクリーンやスピーカーを飛び出し、日常の生活を彩るツールとして捉え「体験」そのものをつくりだそうという試みを見てとることができた。

定額制音楽サービスが本格化し、業界自体も大きな変革にあるだろう。音楽の未来を構想するのに若きクリエイター達の「遊び心」を参考にしてみてはいかがだろうか。

取材:石塚たけろう

ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、EIR(=客員起業家)として複数の大手企業、スタートアップの新規プロジェクトに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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