MISIAを送り出した島野聡、90年代SPEEDのアレンジャー水島康貴に聞く、音楽制作・音楽市場の変化

2016.07.14 16:15

7月16日(土)〜17(日)、朝日新聞メディアラボ 渋谷分室にて開催される「MUSICIANS HACKATHON 2016 by Mashup Awards」。アーティストや音楽プロデューサーがチームに加わるというハッカソンだ。

経験豊富なミュージシャンとチームを組み参加できることが醍醐味の一つと言える当ハッカソン。開催に先駆けて、今回は参加するミュージシャンのうち、デビュー時のMISIAのプロデュースを手がけるなどの実績を持つ島野聡氏、SPEEDのデビューから2000年の(当時)解散まで全ての楽曲の編曲を手がけるなどの実績を持つ水島康貴氏に、音楽制作や音楽市場の変化、ハッカソンに期待すること、これまでの経験など貴重なコメントを頂いた。

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「MUSICIANS HACKATHON」前回開催時の様子

■楽曲制作は"みんな"から"個"で生み出す時代に変化

--90年代と今、楽曲制作や楽曲の広まり方において変わった点は沢山あるかと思います。特にどのような点で大きな変化と感じられていますか?

島野:
90年代といえば、CDが物凄く売れていた時代。タイアップ至上主義といいますか、もうとにかくタイアップ。やはりテレビというメディアが中心で、情報はそこから発信していた時代です。現在はスマートフォンが手元にあり、情報はいつでも取り出せる。未だにテレビの存在感はあなどれませんが、SNSとの連動等、情報発信が確実に各個人の手元にあるような感じがします。
楽曲制作に関してはデカい商用スタジオからプライベートな空間に制作の場所が移ってきました。なので、みんなでワイワイとスタジオで作り上げる事がなくなりました。これはちょっと残念に思っているところです。今は比較的1人の目の前のPCの画面に全てが展開されている感じで、個々の戦いに近いイメージで作業が進んでいきます。スタジオでやっていた時の方が、圧倒的にスピード感があって、ギュッとその時の空気感だったりアツさだったりが詰まっていたような気がしています。
水島:
楽曲制作に於いてはDAWの進化により、集から個になったと感じます。当時はピアノやギターの弾き語りをテープレコーダーに1発録音!そこから作詞家、アレンジャー、ミュージシャンなど多くの方が関わる事により楽曲が完成されると言う流れが主流でした。現在は作曲した曲にPCでドラム、ベースなどを打ち込み、作家がアレンジをし、仮歌を歌詞入りで録り完成された音源をほぼ1人で作り上げる。どんな物になるかワクワクしながら皆でスタジオで制作していた時代から1人でコツコツと作り上げなくては誰も聞いてくれない様な、クリエイターへの負担が大きく変わった様に感じております。
楽曲の広まり方に於いてはネットや携帯、SNSなどの発達により個から集へのアプローチが気軽に可能になった事だと思います。自分で作った楽曲をネットで配信、販売が可能になり、その日に作ったものをその日に多くの方に聞いてもらえる事が可能になりました。これは僕にとってとても刺激的な事です。

■島野氏、水島氏が語るヒットの裏側

--MISIAさんの「つつみ込むように...」など、楽曲からPVまで、デビュー時のインパクトはとても大きかったです。島野さんが当時MISIAさんを「新人」として世に送り出す際に意識していたことはどのようなものでしょうか。

島野:
最初から圧倒的な歌唱力がありましたので、それを余すところなくリスナーに届けられれば、絶対に上手くいくと確信していました。
なので、少しチャレンジするくらいの難しいメロディなどどんどん書いていきました。現在でもそうですが、MISIAが歌うと難しいメロディも、何となく自然に彼女の歌として聴けてしまう。そういうテクニック、声を持っているわけです。時代的にはR&Bが主流だったので、迷いなくそこを攻め込んだだけです。

--水島さんはSPEEDの楽曲を全て編曲されていたことがとても印象的です。アレンジャーとしての立場から一組のアーティストに関わり続けたご経験から得たことは、どのようなものでしょうか。

水島:
SPEEDデビュー前から既にプロデューサーの伊秩(弘将)さんとは50曲以上制作を共にしてきました。そういう意味ではとても楽しく制作を出来ていたと思います。
デビュー当時のコンセプトは夜から昼へ、クラブなどの室内からストリートミュージックな屋外へと言うイメージでした。PVにもそれが大きく反映されていると思います。意識したサウンドとしては、洋楽はTLC、また邦楽ではモーニング娘。や宇多田ヒカルさんが挙げられます。当時ほぼどの曲にもタイアップが付いていたので、そのコンセプトに合わせて常に伊秩さん、制作スタッフとミーティングを重ねていたのも覚えています。
SPEEDでは多くの事を経験させて頂きました。NYでのゴスペル隊とのレコーディング、ドームツアーでの音楽監督、オーケストラアレンジ、ブラスバンドアレンジ、映画やドラマの劇伴など多くの方に支えられながら沢山現場で学ぶ事が出来ました。
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「MUSICIANS HACKATHON」前回開催時の様子

--当時のご経験から特に、今の若いアーティストや音楽関係者に伝えたいことはありますか?

島野:
情熱が全て!そして継続すること、学び続けることです。
水島:
最初の質問にも重なる事ですが、皆で作り上げる音楽の楽しさもあるという事を知ってもらい、感じて頂きたいです。

--ミュージシャンズハッカソンに期待することはどのようなことですか?

島野:
ミュージシャンだけでは到達できない近未来が見たいな〜と。すでに音楽=「音」だけの世界ではなくなってきていると思うので、そこを上手く表現できたり仕組み化できたり。今回はそういう点を何となくイメージして参加したいと思います。
水島:
個を尊重しつつ、集での化学反応を楽しみながらワクワク出来る物を皆で世の中に一緒に送り出す。そしてその体験を個の活動にも反映出来る体質を磨いて行けたら楽しいですよね?期待しております。

島野氏、水島氏も参加する「MUSICIANS HACKATHON 2016 by Mashup Awards」参加申込みはこちらhttps://mashupawards.doorkeeper.jp/events/46256)から。開催は7月16日(土)17日(日)の2日間だ。

構成:市來孝人

SENSORS Web副編集長
PR会社勤務を経てフリーランスのWebエディター・PRプランナー・ナレーターなどとして活動中。「音楽×テクノロジー」の分野は特に関心あり。1985年生まれ。
Twitter:@takato_ichiki / Instagram:@takatoichiki

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