ロボットと人間をつなぐスマートウォッチアプリ「NAIN」

2015.04.24 17:00

「Apple Watch」「Android Wear」や「Samsung Gear」といったスマートウォッチが続々と登場している。LINEやクックパッドらがスマートウォッチに向けたアプリ展開を既に画策する中、この分野に特化したスタートアップが誕生している。そのうちの1社「NAIN」(ネイン)にSENSORSが訪問した。

Android WearにダウンロードされているNAIN

ネイン社は、パイオニアでスマートカーのプロジェクトを牽引していた山本健太郎氏と、長年Web開発に携わってきた熊谷太史氏によって2014年11月に設立された。「ウェアラブル、IoT、ロボットによって変わる環境の中で人と人、モノ、情報が簡単かつ瞬時につながる社会を作る」このように会社の理念を掲げる彼らが手がけているのは、1秒コミュニケーションを実現するコミュニケーションアプリ「NAIN」。3月初旬に「Android Wear」向けにリリースし、「Apple Watch」への対応も進めている。

NAINの利用説明

「NAIN」は、自分の活動ステータスや、よく使う返答句などのテキストをスタンプのようにしてコミュニケーションすることができる。また、着信するメッセージによって端末の振動パターンが変動することも特徴。「今からランチに行こうよ!」「今日はだめなんだ、ごめんね!」そんな日常的なコミュニケーションが1タップで実現でき、振動パターンでスクリーンを見ることなく相手の返答を認識することもできる。

■AI搭載で人間の情報を理解するメッセンジャーへ

熊谷太史氏(左)と山本健太郎氏(右)

「NAIN」の最大の特徴はAI機能。まだ、一部しか実用段階には至っていないようだが、スマートウォッチに搭載されている様々なセンサーから利用者のステータスを把握し、簡単なやりとりであればアプリが自動返信してくれる機能などを想定している。例えば、アプリがユーザーの過去の行動から「会議中」のステータスを学習し、実際に会議中のときに着信があれば、「いま打ち合わせ中、1時間後に連絡します!」といったメッセージを、ユーザーが特別な設定をすることなく自動で返信する。「NAIN」がダウンロードされたスマートウォッチを使えば使うほど自分の分身のようになっていく。

山本氏は「NAIN」を通じて、ロボットや機械が人間を理解する状態をつくりたいと意気込む。

--「NAIN」は決済やコマースなど、コミュニケーションを軸に他の事業を展開する構想はありますか?

山本:
あるにはあります。でも、まずはアプリ自体が利用者の状態を理解して、発信できるという状態を作ることにフォーカスしたいです。IoTがさらに進んでいくと、モノの中にAIが入る。それはつまり、ロボットが身の回りに溢れる世界です。ロボットが人の状態を把握して、能動的に情報を発信できるようにしたい。でも、モノに取り付けられたセンサーでは、人間の情報を取得する精度は高いとは言えないと思います。ウェアラブルは人間に常に密着しているので、利用者本人の情報を正確に理解できます。そうした得た情報を他のサービスやモノにも展開して、ヒューマンセンタードで、すべてがシームレスにつながる世界を実現したいです。

スマートウォッチは、一部でスマートフォンの補助的な扱いを期待する声もあるが、山本氏は「利用者のことを一番理解できるロボット」と捉え、そこにチャンスを見出している。

直近のビジネスモデルについては、スタンプやアバターなど、自分のことを伝えるのが楽しくなったり、カスタマイズするのが楽しくなるような要素でマネタイズを検討しているそうだ。

■「氷河期」を味わった"アラフォー"世代の挑戦

チームNAIN

創業者の山本氏、熊谷氏もともに40歳前後。彼らの言葉を借りれば「氷河期」を経験してきた世代だ。就職難の時代を経験し、入社した後も不遇に見舞われたことが多かったという。そのことがスタートアップへの道に駆り立てた。

山本:
僕たちは日本を牽引してきた製造業・メーカーの良いところ、悪いところの両方をみてきました。創業者達がいかにスゴかったか、そして、その後に入った人達が当時の現状に甘んじてしまったこと。ちょうど僕たちが就職難を経て新卒で入った頃は、組織が上の世代にとって都合が良い構造になっていた。そんな不遇な時代を経験してきたからこそ、長年蓄積した知見を活かして新しいことにチャレンジしたいという強い思いがありました。

こうしたハングリー精神こそが「NAIN」チームの1つの特徴。チームメンバーは山本氏のかつての仕事仲間が中心だが、23歳のメンバーも在籍している。

スマートウォッチという分野でいち早く勝負をしかける「NAIN」。若い起業家が注目されがちだが、大人達が企てる野望にも目を凝らしてみたい。

取材:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、大手企業とスタートアップの共同事業開発支援や、VR領域のスタートアップに参画。Webデベロッパー。

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