音楽でコミュニケーション領域を新たに切り開く「nana」が描く未来像

2015.07.31 09:00

スマホで録音した歌や演奏を通してセッションが楽しめる「nana」。2011年に会社設立、2012年にアプリをローンチ。そして今年8月23日にはついに品川プリンスホテル内「ステラボール」で大規模なイベントの開催が決定。株式会社nana music CEO・文原明臣さんがこのサービスに込めてきた、音楽を通して伝えたい思いとは。

■「nana」を立ち上げるまでに至った、音楽との出会い

「nana」はスマホを利用し、録音・編集・投稿のたったの3ステップで音声や演奏が投稿出来るアプリだ(iOS/Android対応)。自分が投稿した、もしくは他のユーザーが投稿した音声や演奏にハモりや演奏を加えるだけで、手軽にセッションが楽しめる。この「nana」を開発した文原さん、てっきり昔から音楽が大好きでこのサービスを着想したのではと想像していたが、実は、意外な経歴の持ち主だ。音楽に興味を持ち、そこから全く別の道に進み、さらに「nana」を開発するまでに至った過程を振り返って頂いた。

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株式会社nana music CEO 文原明臣さん

 

--最初に音楽に出会ったきっかけは?

小学生の頃、音楽に興味持ち始める人って多いじゃないですか。ただその頃は実は全く興味がなかったんです。何がきっかけか覚えていないんですが、聴き始めたのは中学生くらいからです。 初めて買ったCDはB'zの「ギリギリchop」で、当時は「GLAY派」と「ラルク派」にクラスが二分していたので、自分はどちらにも属したくないと(笑)B'zを選びました。

--そこから、強く音楽に関心を持ったタイミングは?

実際に音楽の道に行きたいと思い始めたタイミングがあるんです。高校生の頃、缶コーヒーのCMでのスティービー・ワンダーの歌に感動して、そこから歌が上手くなりたいと思うようになりました。

--しかしすぐに音楽の道、というわけではなく...

そこからはとにかく様々な洋楽を聴いていたんですが、シンガーになりたいというよりは上手く歌えるようになりたいという、つまり歌を職業にするという思いはそこまで強くなかったんです。むしろその後はレーサーを目指していました。これも元々は音楽同様そこまで興味がなかったんですが、免許を取ったことをきっかけに車の運転が「面白いな」と思うようになり、そこからF1を見るようになったんです。佐藤琢磨さんに興味を持ったのですが、色々調べていると彼も19歳からモータースポーツを始めたという情報を得て「前例があるぞ、ならば目指そう」と思い、2004年末から2009年まではモータースポーツの世界に身を投じていました。

--そこから「nana」立ち上げまでは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

モータースポーツはF1を夢見てずっとやっていたのですが、金銭的に難しくなり諦めざるを得なくなりました。その後悔というか、燃え尽き感がずっとあった中で、スマホを買ったのが2010年。そのスマホが「とても未来を感じさせるし、これは自分の世界観を拡張するものだ」と今度はテクノロジーに興味を持ち始めたんですね。 そんな中、おそらくTwitterを通してだと思うのですが、ハイチ地震支援のために有名アーティストが一同に会した「We Are The World 25 for Haiti」、これを一般の方が歌って紡いだ動画がYouTubeにアップされていることを知りました。それを見て感動した一方、日本人がいないことが残念だなとも思ったんです。音楽で世界とひとつになることは素晴らしい、しかし一方でまだまだそれは100%実現出来ていないなと...。その手間をもっと下げられたらと考えた時に「スマホなら出来る」と。
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--関西在住だったとのことですが、当時はどのようにメンバーを集めていったのでしょうか。

東京に定期的に出てきて、テクノロジーのカンファレンスや勉強会に参加したりシェアハウスに顔を出したりして「こういうことをやりたい」と話をしていく中で、またひとりまたひとりとチームメンバーが見つかっていって。そこから2011年末に会社を立ち上げました。

--チームメンバーを集める際、音楽の趣味なども関係あったりしたのでしょうか?(笑)

そこは特に問わなかったですね(笑)。ただ音楽好きは多かったです。「We Are The World 25 for Haiti」の動画を見せて「まさにこれがやりたいんだ」という説明をしていました。
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■音楽サービスではなく、コミュニケーション領域を担うサービス

こうして立ち上がった「nana」。実際に使われているユーザー層を伺ってみると意外にも若い方が多いようだ。そして「音楽サービス」の枠を超えた、文原さんの「nana」の捉え方とは。

--アプリはどういう層の方が使っているのでしょうか。

18歳以下の方が7割弱、22歳以下まで含めるとほぼ8割です。かつ全体の70%以上が女性です。つまりボリュームゾーンは女子中高生ですね。

--どういう使い方をされているのでしょうか。

ヒアリングなどをしていると、やはりニコニコ動画さんが作られた文化の上に立っているなと感じます。「歌ってみた」、つまり歌ったものを投稿し、それにファンがつくという文化ですね。「歌ってみた」をやりたいけどPCがないだとかミックスの技術もわからないといった方も、スマホひとつあれば「歌ってみた」ができる、そこに価値を感じて頂いているのではないかと思います。また、このサービスを通して知り合ってそこから音源を一緒に作ったりバンドを組んだりという方も沢山いらっしゃいますね。ちなみに楽曲は、JASRAC、JRCが管理している楽曲については包括契約をしているのでユーザーが歌ったり演奏したりする事は問題ありません。

--どういう曲が多いですか?

J-POPの他には、ボーカロイド、アニソンが多いです。この傾向は日本人のエンタメ文化・同人文化の特性そのものだな思っています。パソコン通信時代からMIDIデータをみんなで作っていたように、(ボーカロイドのような)お題があって、そこにみんなで作るということが本当に根付いているんだろうなと。そこにニコニコ動画が入って加速して、さらにマスでもそういった文化が受け入れられるようになった。そのように広がっていった文化の中に、我々のサービスがあると思います。
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--8月の「nanaフェス」開催の狙いについて聞かせてください。

一番最初にリアルイベントを開催したのは2013年8月です。実は、この時は経営が苦しくて開発が全く進まなかった時期なんですね。そんな中でも経営理念の中で何か出来る事はないかとイベントを実施しました。その時にリアルで音楽をやる事はやはり楽しい事だと感じたんです。以来、小さいイベントをちょくちょく開いていたんですが、せっかくなら大きい規模で、その音楽の楽しさを知ってほしいと思いました。 メインステージとブースがあって、ブースではカラオケが出来たり、飛び入りでセッション出来たり、アカペラの体験ブースがあったり、とにかく体験型になっています。サブステージ上でも飛び入りで歌う事が出来ます。将来的には武道館でやりたいですね。

--ユーザーの方から反響はありますか。

反響は沢山頂いています。実は多く寄せられているのは、年齢層的に若い方が多いので「交通費が厳しいから、地方開催をしてほしい」という地方のユーザーからの声です。そこでなんとかしてあげたいということで「nanaフェス」を控えて「プチnanaフェス」も実施しているんです。

--「プチnanaフェス」は、どういった場所で実施されているんですか?

実はカラオケボックスで集まっているオフ会のようなイメージです。30-40人くらい集まるのですが、各都市とても熱量が高いんですよ。複数名で来られる方もいますが、好きな音楽や歌で語り合える友達が欲しいという子が来られたりもします。最初おどおどしながらも、一緒に歌ったりするとあっという間に打ち解けて最後は友達になって帰っていくんですよね。
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「プチnanaフェス」の様子。最後はみんなで一体に!

--現在音楽といえば、音楽配信系のサービスが盛んですが、その盛り上がりについては何か感じられていますか?

実は音楽サービスとはあまり考えていなくて、担当する領域が異なると考えています。本質的には「音楽」というよりはむしろ「コミュニケーション」ですね。みんなが作り合ってつながること、その手段が音楽という認識です。この「みんなで作り合う楽しさ」こそが提供したい価値です。

--最終的にイメージされている未来像についてお聞かせ下さい。

やはり、世界の全ての国の人達が「We Are the World」を歌っている現象が起これば面白いですし、かつそれが自然発生的であれば良いなと思っています。世界中のユーザーのスマホにnanaが入っている状態になれば、きっとそれが実現出来るのではないかと。 例えば、発展途上国でも我々より音楽が根付いている国はたくさんあります。そんな国の伝統的な楽器を演奏して投稿するだけで、他の国の人達と繋がる事が出来る。こういう体験が起きたら人生変わると思うんです。さらにそこでたった少額でもドネーションとして、アプリ内で通貨が回ったり、その音源に対価が払われて生活ができるようになれば、世界のいろんな価値観を変えることが出来るのではないかと思っています。 実は今もすでに海外のユーザーがいて、今期の目標として海外戦略も考えています。特にユーザーが一定数いるタイや、文化的に日本に近い台湾など、まずはアジアに注力していきたいです。

文原さんは、スティービー・ワンダーの歌、モータースポーツ、スマホ、その時々に出会った新たなものに、驚いたり楽しめたり出来る。そのアンテナの感度が特に高い方だと、この取材を通して感じた。今後も大規模イベントでのユーザーとの交流や、海外へ展開していくにあたっての現地の音楽事情...様々なものごとに出会うことで、「nana」の可能性もさらに広がっていくのではないだろうか。今後の展開が楽しみだ。

画像提供:株式会社nana music

取材・文:市來孝人

SENSORS.jpエディター
PR会社勤務を経て、東京を拠点に「SENSORS」等のWEBメディアでのライター・エディターとして、また、MC・ナレーターとしても活動。福岡でラジオDJとしても活動中。

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