「個」として輝く履歴書から紐解く、次世代のキャリア創造--菅本裕子 × 箕輪厚介 「新しい働き方」の先駆者たち

2018.03.06 14:00

「あたらしい、はたらきかた」をテーマに行われたSENSORSサロン。"日本のシリコンバレー"を目指し4月オープン予定の「EDGEof(エッジ・オブ)」を会場に、公開収録形式で行われた。

ゲストは大ヒット書籍『多動力』『お金2.0』等を生み出した敏腕編集者・箕輪厚介氏と、SNSフォロワー80万人超えのモテクリエイター・「ゆうこす」こと菅本裕子氏だ。全4回の連載記事の第1弾となる今回は、ゲストの2人が今の仕事を始めるまでの経緯を伺った。

※当記事は2018年2月に行われたSENSORS公開収録の内容を再構成したものです


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(左より)箕輪厚介氏、菅本裕子氏、齋藤精一、落合陽一

これまでの放送でも触れられてきたように、MCの齋藤と落合は既存のルートに拘泥せず、自らの力でキャリアを築いてきた。今回のSENSORSでは、MCとゲストの4人、そしてイベントに集まったオーディエンスとともに「新しい働き方」を探っていく。まずは、MCの2人が今の仕事にたどり着くまでの経緯を伺った。

--落合さんは開成高校を卒業後、筑波大学に進学されています。その後東大大学院を経て筑波大学に勤められていますが、その経緯をお伺いできますか?

落合陽一(以下、落合):
開成高校から東京大学に進学していないと、受験勉強が苦手そうな印象を受けますよね(笑)。勉強をするようになったのは大学入学後です。論文を書くのが得意だったので、東大大学院は1年飛び級で卒業しました。卒業後はアメリカでMSR(MicroSoftResearch)に就職しようと思っていましたが、その前に筑波大学で研究室を開くことが決まり、そのまま働くことにしました。ちなみに、会社経営は修士の頃から始めているので、会社を経営しつつ教員をすることは普通のことになっています。

--現在は、多くの肩書をお持ちですよね。

落合:
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社のCEOと、筑波大学准教授・学長補佐。大阪芸術大学とデジタルハリウッド大学では客員教授として各学期1コマの授業を受け持っています。あと電通と博報堂でもお仕事していますね。
齋藤精一(以下、齋藤):
「人生100年時代の制度統計特命委員会」にも所属されていますし、どんどん肩書が増えていきますね。
落合:
その分睡眠時間にシワ寄せが来ます。最近は睡眠を含めた自由時間が3~4時間程度しかないんですが、その時間で「ドラゴンクエスト」をやりたくなっちゃうんです(笑)。普通の人と比較し、3倍のスピードで老化しています。大変なので、よく検査を受けていますね。

--齋藤さんは今まで建築や広告、アートまで幅広く活動されています。ライゾマティクスを創業するまでの経緯をお伺いできますか?

齋藤:
コロンビア大学に留学後、初めはニューヨークの建築事務所に就職しました。ところが9.11で仕事がなくなり、広告代理店に転職します。美術に興味が湧いたので、貯金を使って作家活動をしたこともありました。貯金が尽きてからはお金を稼ぎながら作家活動をしていて、その双方を両立させられると思ってライゾマティクスを創業したんです。

紆余曲折がありましたが、現在携わるプロジェクトの大半は建築関係です。「やりたいこと」と「やるべきこと」を手あたり次第にやっています。

以下、今回のゲスト、菅本裕子氏と箕輪厚介氏を交えたディスカッションである。お2人は、職業に規定された仕事の枠を超えて活躍する、「新しい働き方」の実践者である。多様化する働き方の最前線に立つプレーヤーの思考回路は、いったいどのようなものなのだろうか?

「HKT48」というビッグフレームを飛び出してまで、自分の人生を歩むことを選んだ、「ゆうこす」こと菅本裕子氏の自己紹介から話は始まる。

■ 「ファンイベント観客3人」から「SNSフォロワー80万人超え」になった"モテクリエイター"ゆうこすの履歴書

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--ゆうこすさんは"モテクリエイター"として教室やYouTubeチャンネルを立ち上げ、若い女性たちから絶大な支持を得ています。現在の仕事に至る経緯をお伺いできますか?

菅本裕子(以下、菅本):
"モテクリエイター"として、ファッションやメイクの情報を中心に女の子の「モテたい」思いの背中を押してあげられるコンテンツを、SNSやYouTubeを通して発信しています。 7年前にオーディションに合格し、「HKT48」というアイドルグループに所属していたんですが、メジャーデビューする前に脱退しました。その後、料理タレントとして活動を再開するのですが、仕事があまりなく、3年近く実家でのんびりと過ごしていましたね。

その後、2016年にInstagram、LINEblog、ライブコマースを始め、Twitterも再始動。ファンを獲得できてからは個人事務所を設立しました。2016年11月には若い女の子向けにYouTubeチャンネルを開設。2017年にはスキンケアブランドを立ち上げたり、『#モテるために生きている!』『SNSで夢を叶える』という本を出版したりしました。

今年1月には新プロジェクト「やりたい事やって生きたいの!」を立ち上げ、事務所の所属タレントを募集しています。

--いきなり2016年1月にInstagram、LINEblog、ライブコマースを始めたきっかけを教えていただけますか?

菅本:
HKT48を脱退後にTwitterを始めたのですが、1~2日で3万人のフォロワーがつきました。「これだけファンがいれば、好きなことをして生きていける!」と思っていたんですが、その時期に開催したイベントにファンが3人しか来なかったんです。ショックだったので、「これじゃいかん」とSNSを使って自己ブランディング、自己プロデュースを始めました。

■ 箕輪厚介が思い描くのは"名前のない仕事"。未経験からトップランカーに上り詰めた編集者の履歴書

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--続いて箕輪さんの経歴を教えてください。

箕輪厚介(以下、箕輪):
大学卒業後、沖縄のリゾートホテルに内定していたんですが、リーマンショックで会社が倒産し、1年間就職浪人をしました。翌年、編集者になりたくて双葉社に入社。しかし、最初の仕事はギャル雑誌『エッジスタイル』の広告営業でした。

雑誌の広告スポンサーを引っ張ってくる仕事です。当時、"ネオヒルズ族"の与沢翼さんが札束を積み上げて高級品を買いあさる姿が話題になっていたので、与沢さんに会えばお金を出してもらえるんじゃないかと思いお会いしたところ、与沢さんから「雑誌を作りたい」というお話をいただきます。その頃は雑誌の相場が分からなかったので、「3000万円くらいで雑誌を作れます」とお伝えしたら、実際に出してくれることになりました。そこで広告営業はもちろん編集も未経験ながらリーダーをやり、超ゴージャスな『ネオヒルズ・ジャパン』を作りました。

この『ネオヒルズ・ジャパン』がニッチな界隈でブームになり、3万部近く売り上げることに成功します。その後、『エッジスタイル』が休刊になったのを機に広告営業から編集部に異動し、正式に「編集者」になりました。

編集者1年目に幻冬舎社長、見城徹さんの『たった一人の熱狂』、堀江貴文さんの『逆転の仕事論』の2冊を編集しどちらもヒットします。そして、見城さんのお誘いを受け、幻冬舎へ移りました。2017年の4月には経済ニュースアプリ「News Picks」とコラボしたレーベル「NewsPicks Book」を立ち上げ、堀江貴文さんの『多動力』やSHOWROOM 前田裕二さんの『人生の勝算』、メタップス 佐藤航陽さんの『お金2.0』、落合陽一さんの『日本再興戦略』など、毎月1冊ずつ本を出版しています。

編集業と同時に力を入れているのがオンラインサロンです。2017年の6月に始めて、メンバーは現在500人近い規模になっています。オンラインサロンと連動しながら、10社から20社くらいコンサルやプロデュースも手がけていますね。

--「編集者」でありながら、書籍とは関係のない仕事も多くされていますよね。仕事の裾野を広げるきっかけは何でしょうか?

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箕輪:
編集者の仕事は本を「作る」ことと同時に、本を「届ける」ことでもあると思っています。多くの人に届けるために、「なぜ今、この本を買わなければいけないか」という空気作り、世間との文脈作りをしているんです。

また、僕は元々紙の本を作りたいとだけ思っていたわけではありません。秋元康さんや鈴木おさむさんのような、色々な形のアウトプットを数多く出し、アイデアで勝負している人になりたかったんです。名前のない仕事のような。そういう意味では、昔なりたかった職業になれているのかもしれません。
齋藤:
副業といいますか箕輪さん個人の活動を会社としても容認しているのですか?
箕輪:
会社として、容認しているかは分からないんですが、見城さん(幻冬舎社長)に僕が言ったのは、イノベーションを起こす際に幻冬舎でなくてはできないことも当然ある。しかし、本当に出版業界にとって大きな脅威となる"黒船"は、実は会社単位では気が付かない時代の狭間に生まれるんです。それが知らぬ間に大きくなってやがて飲み込まれてしまいます。だからこそ僕個人がトライアルアンドエラーを積み重ねながら時代の最先端の情報を現場から拾うと。そしていつか黒船がやってきて出版界が「やばい」と思ったときに、黒船に乗ってるのが僕だったら、幻冬舎として超良くないですか?と伝えたら、納得してもらえました。
齋藤:
箕輪さんが手がける本は、出版するタイミングが絶妙だと思っています。日日本全体の潮流を掴み、その時のノリにあった本を出されていますよね。
箕輪:
今の時代のスピードと、本を作るスピードには大きな乖離があるんです。ゆっくり作ることも大事な場合は当然ありますが、誰も付いてこられないスピードで全速力で走り抜けることで、惑星と惑星がぶつかるみたいに、世間のニーズとバチンと衝突することがある。その分、著者には無理を強いることもあるんですけどね。『お金2.0』の著者、佐藤航陽さんは腱鞘炎になったそうです(笑)。

続いてお届けする第2弾記事「"ネオマス"を動かし、働き方の量子化を推進する」では、MC落合が投げかけたキーワード「反知性」に始まり、書籍を大ヒットに導くマーケティング戦略や、収入と新しいモノに対する受容性で切り出された真のマス層=「ネオマス」について議論された。変化していく社会をリアルタイムで捉えるMCとゲストの掛け合いに注目だ。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

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