"ネオマス"を動かし、働き方の量子化を推進する--菅本裕子 × 箕輪厚介 「新しい働き方」の先駆者たち

2018.03.08 15:00

「あたらしい、はたらきかた」をテーマに行われたSENSORSサロン。"日本のシリコンバレー"を目指し4月オープン予定の「EDGEof(エッジ・オブ)」を会場に、公開収録形式で行われた。

4回にわたってお届けする第2弾記事では、MC落合が投げかけたキーワード「反知性」に始まり、書籍を大ヒットに導くマーケティング戦略や、収入と新しいモノに対する受容性で切り出された真のマス層=「ネオマス」について議論された。変化していく社会をリアルタイムで捉えるMCとゲストの掛け合いに注目だ。

※当記事は2018年2月に行われたSENSORS公開収録の内容を再構成したものです


■ 知性と反知性の分断をつなぎ合わせる箕輪流編集術。『お金2.0』の大ヒットを支えた"ダサい中吊り広告"の仕掛け

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落合陽一

MC落合は「新しい働き方」を論ずる前に、世の中の新しい言説を聞き入れようとしない「反知性」の存在を指摘する。

落合陽一(以下、落合):
「反知性」とは、「隣のブドウは酸っぱくて、自分のレモンは甘いと思っている人」を指します(自分のことを正しいと信じて疑わず、新しい言説に対してとにかく排他的な思考)。個人の自由なので、あえて矯正する必要はありません。しかし、世の中全体が反知性だったら、社会の発展が止まってしまうと思うんです。

そういった人たちは、堀江さんの本を読ませたところで、「あいつはもともと警察に捕まったことがあるから間違っている」みたいな、全く論理的でない論理を展開します。そうした思考を持つコミュニティはネット上で増えているのですが、そんな「反知性」の人たちに「新しい働き方」なんて言っても伝わらないと思うんです。
箕輪厚介(以下、箕輪):
本を売っている中で肌感覚として感じるのは、都会と地方の間で、また、都会の中でもエリア間で恐ろしいほどに価値観や文化の分断化が進んでいるということです。僕が出すようなビジネス本は、都会と地方では売れ行きがまったく異なります。東京の中でも、六本木と丸の内では売上が大きく違うんです。その中で、1つ壁を越えたなと思うのが佐藤航陽さんの『お金2.0』と先日発売された落合さんの『日本再興戦略』でした。

『お金2.0』の初速は六本木などでは良かったのですが、都内を含めて他の地域では反応はまだまだでした。そこで、あえてリテラシーを下げて大衆的な電車広告を打ったんです。『お金2.0』は、内容は哲学書のように本質的で深い本ですが、そういうアプローチでは世間には届ききらない。だから「この本読んで丸儲け!」みたいな直接的な広告にしました。その結果、普段ビジネス書など読まない層にも爆発的に火がつき、発行部数は20万部を突破しました。やってみて初めて見えたことですが、ちょっとしたきっかけで「分断」が溶ける瞬間もあるんです。

--『日本再興戦略』はどうして売れたのでしょうか?

箕輪:
もともと落合さんの本は、青山ブックセンターや六本木のブックファーストなど情報感度の高い人の間でよく売れる本でした。『日本再興戦略』が売れたのは、落合さんのそれまでのメディア出演が重なった結果、関心を持つ層が広がったのではないかと考えています。

本は10万部を超えると一気に火が付き、それまで興味のなかった人も手に取るようになります。なので、そのための「現象」を作ることが大事です。小難しいことばかり伝えるのではなく、大衆的な目線に立ち、関心を引き寄せて「分断」を解いていく。中身は本物でも売り方によって分断を解く、それが僕が作る本の役割だと思っています。

■ 「収入×受容性」の2軸で浮き彫りになる真のマス層「ネオマス」とは?

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--それでは続いてのテーマ「ネオマス」についてお願いします。

落合:
「ネオマス」は僕が作った造語です。これまで「マス層」を捉える際は、収入が基準になっていました。しかし収入別で考える「縦軸」に加え、アーリーアダプターやレイトマジョリティのように、新しいモノに適応する速さで考える「横軸」で社会を見ると、真のマス層=「ネオマス」を捉えることができます。収入がそこそこで、新しいモノへの受容・対応が遅いレイトマジョリティ層のことです。

この「ネオマス」が、行動を起こせるように動かしていけるかが1つのポイントだと思っています。
箕輪:
本の販売やオンラインサロンのようなサービスを展開するときは、年収や会社よりも、落合さんのおっしゃる「横軸」、新しいモノに対する受容性や積極性でターゲットを考えます。たとえば、年収400万円の人でもイノベーティブなタイプもいれば年収3000万円でも保守的な人もいる。もはや会社や年収では人はセグメントできなくなってきていて、横軸の方が、人間的な特性を捉え始めていることを強く感じます。
齋藤精一(以下、齋藤):
マーケティングでは従来、大衆のことを考えるときに大きな三角形を描いて、「F1」(20歳から34歳までの女性)や「F2」(35歳から49歳までの女性)といった区分で分けるのが主流でした。ただ、これからの時代で消費者を動かすには、1個の大きな三角形ではなく、「アイドル好き」な層、「未来が好き」な層、「ビジネスが好き」な層といった、たくさんの小さな三角形で社会を見ていく必要があるのかもしれませんね。

■ 21世紀の働き方は『スイミー』?大企業を脅かすのは、量子化した個人

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(左より)箕輪厚介氏、菅本裕子氏、齋藤精一

--ここからは「働き方の量子化」について伺っていきます。

齋藤:
僕は最近よく「大企業は必要か?」ということを考えています。絵本の『スイミー』のように、皆が個人事業主や個人商店として普段の仕事をしつつ、必要な瞬間に一気に集まるような働き方が時代に合っていると思うんです。

稼ぎたい人は稼げばいいし、休みたい人は休めばいい。だけど、タイミングが合えば結集する。そうした働き方が健康的だと感じています。一緒の感覚を持つ人同士が集まれる環境さえあれば、量子化していく方が良いのではないでしょうか。
箕輪:
僕は「箕輪編集室」というオンラインサロンを運営していますが、1つの目的のもとに集まる組織のスピード感を肌で感じています。1つのプロジェクトを始めるとき、大企業は「これのメリットは何か?」とか「どこの部署がやるのか?」などと議論をしますが、その時点で遅い。遅すぎる。オンラインサロンは多種多様な業種の人が集まっているので、ある人は動画を作ったり、ある人はブログで拡散したりと、ある目的のもとで自分の好きなことや得意なことを生かそうと、勝手に自走し始めるんです。
落合:
「量子化」はインターネットでより可能になっていくと思います。人間は思いのほか文字と音と光でコミュニケーションを取っているんです。オンライン化できることは多いのに、日本人は対面の"フィジカルミーティング"を好みます。最近はオンラインミーティングが多いですが、僕ですら、まだ「うん」を言うためだけの会議はありますからね。

--逆にフィジカルミーティングではないといけないミーティングはどんなものが挙げられますか?

落合:
図面や立体図を見ながらのものや、素材を確かめるものですね。印刷の仕上がりや、たくさんのテクスチャに触れて確かめることが必要な場合はフィジカルミーティングでなければいけません。あとは、学生に機材の扱いを指導するときなどは、微妙なニュアンスを伝えるために直接指導します。

続く第3回「フォロワーと事業を創る次世代型プロジェクトの作り方」では、ライブコマースで"1人勝ちする"菅本氏が「成功のカギはコミュニティづくりにある」と語り、ゲストとMCそれぞれのコミュニティ=オンラインサロンの特徴について意見が交わされた。それぞれのコミュニティがモチベーションに溢れる理由とともに、MCとゲスト自身のモチベーションの源泉についても探っていく。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

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