死ぬこと以外カスリ傷。挑戦に寛容な「キリギリスの時代」に求められる生き方とは--菅本裕子 × 箕輪厚介 「新しい働き方」の先駆者たち

2018.03.15 15:00

「あたらしい、はたらきかた」をテーマに行われたSENSORSサロン。"日本のシリコンバレー"を目指し4月オープン予定の「EDGEof(エッジ・オブ)」を会場に、公開収録形式で行われた。

4回にわたってお届けする最終回。第4弾記事では、「ビジネスの現場で生き残る人」をテーマに、異なる領域で事業を展開するMCとゲストが議論を交わした。会場からの質問に対しても、それぞれの実体験と成功体験を踏まえたアドバイスが送られた。

※当記事は2018年2月に行われたSENSORS公開収録の内容を再構成したものです


new_way_working4-1.jpg

(左より)箕輪厚介氏、菅本裕子氏、齋藤精一、落合陽一

--今後、さまざまなビジネスの現場において生き残れる人はどのような素養を持つ方でしょうか。それぞれの意見をお聞きできればと思います。

落合陽一(以下、落合):
先日の休みに妻と「ドラゴンクエスト」をやっていたら、プレイヤーとしての僕が分裂して、AIが僕を操作するバグが発生したんです。その分裂したNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を「落AI」と呼んでいるんですが、落AIくんは僕らよりはるかに厳格な対処をし、コンスタントに敵にダメージを与えてくれるんです。

AIが僕ら人間より良い働きをするようになると、人間同士の悪い部分を客観視できるようになることに気づきました。みんなが「落AIがしっかり働けるような環境を作ろう」という意志のもとイテレーション(短い間隔で反復しながら行われる開発サイクル)して自分の悪い部分を改善する。AIではなく人間だったら、悪い部分を見つめようとする客観性は発生しないじゃないですか。これがこれからの職場だと思うんですよ。
齋藤精一(以下、齋藤):
これからの時代は、1人がやりたいことを乱立させても成立する、むしろその方が面白い時代になってくると思っています。アリとキリギリスだったら、愚直に働くアリではなく、好きなことをする"キリギリスの時代"が始まるのではないでしょうか。突拍子の無い「自分」を表現していける人が、5年後、10年後のビジネスを支えていく。ライゾマティクスは都度やりたいことをやっていきたいです。
菅本裕子(以下、菅本):
今後、私のような「インフルエンサー」と呼ばれる職業は、いかにスピード感をもって新しいサービスに挑戦し、失敗を改善できるかが重要です。ただ、「フォロワーの要望にすべて応えること」イコール「フォロワーを大切にすること」ではありません。吉野家でパスタ出すみたいなことになってしまいます。
箕輪厚介(以下、箕輪):
僕のオンラインサロンのキャッチコピーは「死ぬこと以外カスリ傷」。僕自身、今までの人生でリスクをとったこともありますが、死ぬことなんてない。多くの人がリスクと感じているものは仮想的なものであって、実際はエンタメのようなものです。リスクを冒せば、それがたとえ失敗しようと財産になります。

僕は「普通のサラリーマン」なので、4人家族で賃貸を借りようとすると埼玉辺りにしか住めない。毎日会社から2時間弱も満員電車に揺られている自分が嫌になってました。このままじゃ俺は何も出来ないで終わると思って、家賃が給料の3分の2ほどの都内のマンションを借りたんです。貯金もなかったし半年くらいしか持たない計算だった。でも俺だったら追い込まれれば絶対にアイデアが湧いてくるだろうという根拠のない自信もあった。結果的に、どうしても稼がなくてはいけない状況になったからオンラインサロンを始めたり個人としての仕事を生み出すことができた。「失敗しても死なない」ので、思い切ってリスクをとれるかどうかが大きく成長する人としない人の分かれ目になると思います。

■ トップ・オブ・トップになるまで熱中せよ。そして横展開。次世代をサバイブするのは「好きを追求」した人材

new_way_working4-2.jpg

公開収録終了後、会場からの質問を受け付けた。

質問者A:
ゆうこすさん以外の結婚されているお三方は、仕事に全力を尽くしつつ、家庭とのバランスをどのようにとっているのでしょうか?
落合:
僕は子供ができてから大学のある筑波まで電車一本で行ける秋葉原に引っ越しました。移動時間が減ったことで、30~40分くらい家庭にあてる時間を捻出できましたね。最近、子供が手術を受けたんですが、あらゆる仕事が遅延したので、こういったときにどうするかはこれから模索していかないといけないと思っています。
箕輪:
落合さんはこれだけ仕事が忙しい中で家族の時間を作れているのですごいです。僕は少々破綻していますね。ですが、お金を稼ぐことである程度解決できるかなと。誰にでもここが頑張りどころというポイントがあるので、そのときはバランスを崩してでも攻めるべき。時間かお金しか渡すことは出来ないので、時間を仕事に使う時期はお金で解決するという選択肢もあるかなと。たとえば子どもをベビーシッターに預けることで、妻の時間的な余裕を確保できたりもする。
齋藤:
僕は子供が小学校に入学するのを機に、世田谷から逗子に引っ越しました。車通勤をするようになったんですが、その時間で「頭の中で問題を転がす」ことができるようになったんです。つまり、頭では仕事のことを考えつつ、体は家族のことをできるようなった。そのことによって切り替えが良くなったので、土日はしっかり家族にあてることができるようになりましたね。
new_way_working4-3.jpg

質問者B:
中学1年生の息子がいます。これからより働き方が多様化していく社会で生きていく中学生にメッセージを送るとしたら、どのような言葉を送りますか?
落合:
中学時代はエレキギターと電子ドラムに熱中していました。その時から信号や「波」に興味を持ち始めましたね。そこから約20年後、「波」を扱う点では規模や範囲が変わっただけで、本質は変化していません。つまり、子供のころに一番好きだったことは、大人になっても同じように熱中できるのではないかと思っています。
箕輪:
好きなことを仕事にできる時代だからこそ、何か1つ「やり切る」力が必要じゃないかなと。好きを仕事に、みたいな文脈だとパラダイスみたいな世界が来ると思ってる人も多いですが、どんな世の中でも気合入れてやり切れないと何者かになれない。学生時代に部活動で強制的に朝練に行かなきゃいけないとか、受験勉強を頑張らなきゃいけないとかあると思いますが、それをやり通すことが、強引に「やり切る」力になってくると思います。一周回って古い考え方のようですが、何かを「やり切る」ことは、最終的に遊びを仕事にしていくうえで必要な素養なのではないでしょうか。
菅本:
私の中学時代を思い返すと、「なんでこういうものが社会にないんだろう」と、常に不安や疑問を感じていました。ある意味、ダメなところを見つけるのが得意だったのかもしれないです。その視点は大人になっても変わらず、いろんなインフルエンサーを見て「なんでこうしないんだろう?」と思ったことを、実践したらうまくいきました。だから、今でもずっと「なんで?」と思いながら生活しています。
箕輪:
「なんでこれがないんだろう?」はビジネスの基本的な姿勢ですよね。
齋藤:
箕輪さんに近いんですが、僕も高校までは「脳みそまで筋肉だ」と言われるほどバスケットボールに打ち込んでいました。アートや建築とはかけ離れた世界ですが、今となってはその時に学んだチーム論や根性論は大きな糧になってることを感じています。

何にのめりこんだとしても、のめりこんだ分だけ後から生きてくると思うので、「のめりこむ」ことが大事です。あれこれ手を出すより、好きなものがあるのなら、絵を描くであれ、ゲームをするであれ、ザリガニを獲るであれ、なんでも「好き」を極めていってほしいなと思います。
箕輪:
何かしらのトップ・オブ・トップになると、その軸を中心に横展開ができるようになるのかもしれませんね。
齋藤:
また、すべての原動力はゆうこすさんが言った「なぜこれがこうなんだろう?」です。仕事をしていて世の中には「大人の事情」があふれていることを感じます。どんな些細なことでもいいので、世の中のあらゆるものに対して自分なりの疑問、視点を持つことは大切です。


ブログツールやSNSの隆盛により、組織の枠を超えて"個人を売りにする働き方"が台頭しつつある。箕輪氏は従来の編集者の仕事から越境し「名前のない仕事」を手にした。菅本氏の職業"モテクリエイター"も、彼女自身が名前をつけた「新しい働き方」だ。

"個人を売りにする"ということは、唯一無二になるということ。だからこそ、何かにのめりこみ、世の中の疑問に目を向け「ポジション」をとることが必要だ。選択肢が多すぎて身動きが取れない人がいたら、何か1つのことにのめりこんでみるのもいいかもしれない。

人生に挑戦の制限なんてない。仮に何か失敗を犯したとしても、好きな生き方ができなくなるわけではない。むしろその"失敗"が財産になる時代だ。MC、ゲストのディスカッションの中で、これからの時代を生き抜くヒントを得られたのであれば幸いである。

構成:半蔵門太郎

長野県佐久市出身。千葉大学では文化人類学を専攻。
テクノロジーやインターネットの影響で様々な「境界」がなくなっていく動きに関心を持つ。
Twitter:@hanzomontaro

編集:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。修士(東京大学 学際情報学)。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

写真:松平伊織

最新記事