「noteを始めたい人」の活用方法は?ピースオブケイク・加藤貞顕に聞く、現在の盛り上がりと今後の展開

2016.03.01 18:30

第二回SENSORSサロンにも登場し、当時からいち早くWebにおける「本」の再定義を行うことを掲げていたピースオブケイクCEO・加藤貞顕氏。無料/有料でコンテンツを発表できる「note(ノート)」はクリエイターにとって一箇所でクリエイティブ、マーケティング、コミュニケーションを統合的に行えるプラットフォームとなりつつある。名の知れたインフルエンサー達が次々と参入する中で、一段と盛り上がっている「note」の現状とこれからについて加藤氏に話を聞いた。

■サービスローンチから2年。インフルエンサーが参入する前に盛り上がる土壌はできていた

はあちゅう氏、イケダハヤト氏、梅木雄平氏らのインフルエンサーが次々と参入し、盛り上がりをみせる「note」。今の活況があるのも、約2年前のサービスローンチ以来、数々のクリエイターたちがその土壌を築いていたことが大きいのだとか。

ピースオブケイク代表取締役・加藤貞顕氏

加藤:
「note」は2014年4月にスタートしたサービスですが、当初からプロアマ問わず、さまざまなクリエイターのみなさんに使っていただいています。プロでは、ファンクラブを運営していただいている「くるり」さんや、『マチネの終わり』を連載していただいた平野啓一郎さん、マンガ『うつヌケ』を連載している田中圭一さんなどがいましたし、アマチュアのクリエイターのかたもたくさんいて、そういうひとたちがファンを個別に増やし、「note」という場は大きくなってきました。昨年末くらいからさらに盛り上がってきて、月に数百万円単位の収益をあげているクリエイターも登場しています。

クリエイターを発掘し育てるために、姉妹サイトである「cakes(ケイクス)」とコラボした「cakesクリエイターコンテスト」も開催された。
2546点の作品の中から選ばれたのは、SENSORSのこれまでの取材記事でもお馴染みのかっぴー氏。(関連記事:「フェイスブックポリス」作者 "かっぴー"に聞く、執筆のきっかけと伝えたいメッセージとは

さらに、佐渡島庸平氏を審査員長に開催した「コルク×note マンガコンテスト」は現在、審査中とのこと。

昨年の12月から今年にかけてインフルエンサーが続々と参入したことで今まさに盛り上がっているように見えるが、実はこうしたコンテストなどを通じて、ユーザーは着々と集まっていた。

加藤:
はあちゅうさんやイケダハヤトさんなどのインフルエンサーの方が「売れています」と発言しだして、他の多くの人たちもここが人に作品を見てもらうのに適した場所だと気づき始めたんだと思います。インフルエンサー以外にも、自分の強みをいかした方法で有料記事を公開しているクリエイターもたくさんいます。例えば、中学生の女の子、あーちんさんは2,500円でペットの写真のイラストを描いている。あとは、ぱぷりこさんは恋愛相談のマガジンを2,000円で販売しています。

ここまで盛り上がったのは、先ほど言ったユーザーの土壌ができていたこともあるのですが、もうひとつ、電子書籍ではなくWebで展開していることも大きいのではないかと思います。noteはweb上でコンテンツを公開して、有料の記事も途中までは読める仕組みになっています。だから、TwitterやFacebookでシェアできて、口コミがひろがりやすいのです。

■「声優が読み上げの権利を売る」等、表現の可能性はまだまだある

最近の盛り上がりの中で"有料課金"ばかりがクローズアップされているが、実際のところ有料記事の比率は7%ほどで、残りは無料記事なのだという。加えて、「note」には"サポート"という無料記事にも投げ銭のようにお金を支払える機能がある。つまり、クリエイターとファンが本当の意味で自由にコミュニケーションできる場作りがなされているのだ。

ーー「note」を使うことでクリエイターは文章、画像、音声、動画など、様々な形式の表現を行うことができますが、今後はどういう使い方をしてほしいですか? また、こういったコンテンツが増えてほしいと思う表現形式はありますか?

加藤:
基本的に、クリエイターのみなさんには、自由につかっていただければと思っていますが、テキストや画像だけでなく、音声や動画など、さまざまな形式が使えるので、そこはうまく活用してほしいですね。平野啓一郎さんが毎日新聞に連載している小説『マチネの終わりに』を「note」にも掲載したり、JFNさんがラジオ番組の音源を配信したり、面白い取り組みはいくつもあるんですよ。ただ、まだまだ色々な使い方があると思います。例えば、動画も投稿できるので対談の動画を上げるのも一つですし、占いや悩み相談、似顔絵を描いてあげるようなスキルやサービスを販売するタイプの記事も増えていくんじゃないかなと思っています。

たとえば、絶対に売れると思うのは、ナレーターさんや声優さんが「読む権利」を売ることですね。例えば、声優さんが「あなたの好きな文章や名前を読み上げます」って言えばすごく売れると思うんです。「○○君、おはよう。今日もがんばろうね!」くらいのシンプルなものでもいい。iPhoneの目覚ましでも使えるじゃないですか。これはどなたかにやってほしいですね。

■今後導入を考えている二つの機能:「継続課金」と「複数人で持つ1つのメディア」

今後、さらに加藤氏がクリエイターとファンをつなぐ仕組みとして導入しようと考えているものが2つある。一つは「継続課金」。たとえば、月額500円などと金額を決めて継続課金ができる機能を一般向けに開放するというのだ。
もう一つが、複数人で1つのメディアを運営できる仕組み。現在でもはあちゅう氏と岡本静香氏が共同で「ちゅうしずの交換日記」というnoteを運用しているが、これをシステム化しようというのだ。

加藤:
まず、現在、β版として一部のかたにつかっていただいている継続課金の機能は、今後「プレミアム課金機能」を通じて、一般向けに公開していきます。それと、これは今後の予定ですが、「共同編集機能」をつけます。それぞれ別のアカウントを持っていて、ファンもいる複数のアカウントが一つのメディアをnote上で持つという機能です。収益の分配率を設定し、自動的に売上を分けてられる仕組みです。これができるようになると、相当面白いことができると思います。
例えば、編集者と著者でメディアを持ったり、作家とカメラマンで組むのもいいかもしれない。映画や音楽、文章でも、そもそもコンテンツってコラボレーションで作ることが多いので、それを分担してできるようにしようと思っています。

■「その情報に"企画"はあるか?」初心者が「note」で課金してもらう方法

「note」が個人のマネタイズの可能性を広げ、盛り上がりを見せる中、新たにユーザーになった読者も少なくないのではないだろうか。そこで「初心者でも課金してもらえるコンテンツを生み出すには」という視点でお話を伺うことにした。有料コンテンツに課金してもらうには、越えなくてはならないハードルがいくつもありそうなもの。それでも一つ明白なのは、固定ファンを持たないクリエイターに最も必要なのはいわゆる「企画力」だということだ。

加藤:
あたりまえですが、一番いいのは有名人になって、ファンを抱えた状態でエッジの立った記事を書くことですよね。有名人の場合なら、コンテンツの中身だけではなく、コミュニケーションを売っていくという選択肢もありますし。で、問題は有名でない場合ですが、そうなるとやっぱり企画力とか情報の内容の勝負になりますよね。本当にレアで面白い情報であれば、ネット上にあるからちゃんと「発見」されます。

ーーコンテンツの長さとかは重要なのですか?

加藤:
長さはあんまり問題にならないです。むしろ、短いほうがいいくらいで。紙の本の長さは、あのフォーマットにあった長さであって、noteの場合はスマートフォンに適合させたほうがいい。

ーー本は厚さがだいたい決まっていますもんね。

加藤:
そう、1,000字で伝わる内容のものだったら、それでいいんです。この間、LINEの田端信太郎さんが投稿していた「就活生よ!会社を褒めるな! むしろ正しくディスれ!」という記事は、3,000字弱なのですが、就活生にとってはすごく役に立つことが書いてある。あの記事は500円で売られていて、すごく尖った役立つ情報なのですが、長さ的に本にする感じでもない。そしてこの記事は、インターネット上にあるから、面白ければちゃんとバズるんですよね。

ーーもっと短くても有料のコンテンツになり得ますか?

加藤:
濃い題材ならなると思いますよ。例えば、三ツ星レストランのポタージュのレシピが1万円で売っていたら、飲食関係者にとってはすごく価値があるものになりますよね。文字数としては2,000字くらいかもしれないけど、ほしい人はすごくほしい。
いい情報かどうかは受け手によるので、長さは関係ないと思います。細かな最適化ができるのがネットの良いところであって、そういうコンテンツが今後増えていくんだと思います。

■「cakes」は"雑誌"で「note」は"本"、今後は行き来を増やしたい

ここからは「note」のプラットフォームとしての位置づけについて探っていく。ピースオブケイクには「note」の他に、「cakes」という人気のコンテンツプラットフォームがある。「note」にも名の知れたクリエイターが参入しつつある中で、自社で展開する二つのプラットフォームの棲み分けについてどのように考えているのだろうか。

cake」のトップページ。無料でも多くの記事が読めるが、有料会員(1週間150円)になると全ての記事を読むことができる。

加藤:
「cakes」は、弊社の編集部や提携している出版社やクリエイターのみなさんが「編集した」コンテンツが載る場所です。だから全体として有料のサイトとして運営しています。「note」は、個人や団体がそれぞれで勝負する場所です。例えるなら、「cakes」は"雑誌"で、「note」は"本"のようなイメージ。とはいえ、「note」で面白いクリエイターがいれば「cakes」で連載をすることもありますし、「cakes」で連載が終わったら、「note」でまとめて売るのもありえます。今後、両サービスを行き来するコンテンツも増やしていきたいと思っています。

すでに「note」発の有望なクリエイターが「cakes」で人気連載を持つという事例が出ている。それが"cakesクリエイターコンテスト"で入賞し、現在は「cakes」で連載「メンヘラ・ハッピー・ホーム」を綴るスイスイ氏だ。連載が更新する度、ランキングで上位を獲得するほどの人気なのだとか。

今後は「note」の中でも才能のあるクリエイターを発掘し、著名でなくてもレコメンドしながら表に引き出すような仕組みを構想しているという。

■「Medium」はコンテンツ、「note」はクリエイターにフォーカス

クリエイターの作品を発表する場としても注目を集める一方で、ブログを書く場所としても人気を集めている「note」。競合サービスとの比較という面では、無駄を排したシンプルなユーザーフェースはもう一つの人気プラットフォーム「Medium」にも共通項があるように思われる。デザインの面で類似している部分もなくはないが、両者は目指している方向性は本質的に異なるのではないかと加藤氏は指摘。

加藤:
Mediumは、どちらかというと、コンテンツにフォーカスしていて、それを読者にパーソナライズして見せていく方向性だと思うんです。対して、noteが焦点を当てるのはクリエイターです。僕らはクリエイターの"本拠地"を作ろうとしているんです。つまり、ファンもクリエイターもそこだけに集中していれば良いような場所です。今の時代、クリエイターは公式ウェブサイトを更新しつつ、TwitterやFacebookさらには、本なら書店、CDならレコード店、はたまたAmazonとやることが多くて大変ですよね。つまり、本拠地がない状態。
これがクリエイターとファン両方のコストを上げていると思っていて、本当はもっとクリエイティブなことに時間を使ったり、もっと楽にコミュニケーションできるはずだと思うんです。

ーーつまりはクリエイターのポータルのような位置づけでしょうか?

加藤:
そうです。そのためにデザインのリニューアルも計画しています。今の「note」は、フロー情報よりの場所になっているので、ストック性を高めようと思っています。たとえば売れてるコンテンツとか本なんかは、上のほうに置いておきたいですよね。本拠地はフローとストックが協働する必要があるんです。TwitterやFacebookのようなフロー情報にしてもうまく統合できれば、クリエイターもファンもそこだけ見ていれば済むようにできるかもしれない。そうできればすごく良いと思うんです。

「自分にはフォロワーがそれほどいないので、有料コンテンツが売れるか分からない」と躊躇している人も少なくないのではないだろうか。しかし、加藤氏が語ったコンテンツを売る上での二つの戦略のうち、情報に重点を置いたパターンで問われるのはクリエイターの人気度ではなく情報の価値だ。
例えば、あなたが野球好きだとする。試合観戦をした感想やエッセイを売ろうとすると、パーソナリティが問われてくる。一方でメジャーリーグのチケットの取り方や、審判のなり方、もしかしたらグローブの作り方など焦点をズラし、絞った情報ならばニッチだがその必要とする読者がいる可能性がある。

まずは自分の好きなモノ・コトを洗い出し、情報の粒度と想定読者を決めることから最初の一歩は踏み出せるのかもしれない。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集者/ライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。東京大学大学院学際情報学府にてメディア論を研究。最近は「人工知能」にアンテナを張っています。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh

聞き手:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
Instagram:@takatoichiki

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