PARTY NY 個展「FRIENDLY FUTURES」実施の狙いと、川村真司が今NYで考えていること

2015.12.11 16:00

海外で活躍するキーパーソンの"今"を取材する新企画「SENSORS CONNECT」。今回はPARTY NY クリエイティブディレクター 川村真司さんとコネクト。川村さんの語るPARTY NYによる個展「FRIENDLY FUTURES」実施に込めた思い、そしてNYのクリエイティブ事情とは?

クリエイティブラボ・PARTYのニューヨーク拠点として2014年に立ち上げられたPARTY NY。トライデントガムのキャンペーンとしてAnrealageとのコラボで制作された"電波(情報)を遮断する洋服"「FOCUS: Life Gear」や、全米で話題となったMTVの社会問題啓蒙キャンペーンのために作った白人派遣サービス「White Squad」、画面中央に指を置くと、まるでその指に映像の動きが反映しているように見える安室奈美恵さんの「Golden Touch」ミュージックビデオなど個性豊かな作品を手がけてきた。

そんなPARTY NYが、この度ニューヨーク・ブルックリンのギャラリー「Usagi NY」で個展「FRIENDLY FUTURES」を開催(2015年11月20日〜12月26日)。この個展はアート、コマース、テクノロジーに対してのPARTYなりのアプローチを体現した4つのプロダクトを展示。技術の進化をただ競い合うのではなく、「テクノロジーともっと仲良くできるような未来を作れないか?」という思いを込めたものだ。

オンライン上だけでの発表ではなく、あえて個展という形で作品を発表した理由、そしてニューヨークを拠点に作品を生み出す意義、テクノロジーに対しての考え方など、今まさにニューヨークで感じていることを伺うべく、川村さんにFaceTimeを繋いで取材した。

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Photo by Suzette Lee

■技術の先にあるフレンドリーさ、優しさを生み出したい

--今回開かれた個展「FRIENDLY FUTURES」。どのような個展なのでしょうか?

川村:
近年PARTY NYでは画面の中のインタラクティブコンテンツだけでなく、フィジカル・デジタルと呼ばれるような、インタラクティブなインスタレーションや空間設計などに力を入れています。そうした中、ギャラリーの方から「個展をやらないか」と誘われた時に、いわゆるアートギャラリーでアートを展示するような個展ではなく、僕らだからできるような展示にしたいとチームで話し合いました。アートでありつつ、市場にあってもおかしくないプロダクトであるかのような、そしてスタートアップのサービスのような...それらの狭間にあるようなアイデアを展示する、トレードショーのような個展にしたいと思いました。
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Photo by Suzette Lee

--個展名にある「よりフレンドリーな未来のつくり方」。なぜこのような点を提案しようと思ったのでしょうか?

川村:
例えば今流行のIoTとかって、どうも繋がることが目的となっていて、その先に生み出そうとしている価値があまりないことが多かったり、ウェアラブルデバイスも身につけることや外形だけが注目されて結局何をトラッキングしてそれがどう役にたつのかはいまいち判らなかったりと、技術はよりスマートに進化しているけど、その進化の先に生もうとしている価値って、実はあまり見えていないんじゃないかと感じています。
だから僕らなりにその価値って何だろうと考えたとき、例えばつながったり身につけたりすることでよりエモーショナルな部分で、人がデータや空間といった体温のないものにも親近感を覚えるようなことが価値になるんじゃないかと考えました。技術が大事なのではなく、技術の先に生まれる親しさ、優しさ。そういった価値をもっと増やすためにテクノロジーやアイデアを活かすべきなのではないか、という思いをコンセプトに込めてみました。

--実際の展示作品について詳しく伺いたいです。愛犬用LEDベスト「Disco Dog」。こちらはどのような経緯で作られたのですか?

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Photo by Suzette Lee

川村:
PARTY NYのオフィスにはロリちゃんという犬がいるんですが、黒いミニチュアダックスフンドで、ニューヨークの夜の散歩が結構危ないんです。それを助ける為に何かできないかと考えた時に、折角何か作るなら僕らっぽいクレイジーなものがいいねと話していて例えばロリちゃんが「歩く電光掲示板」みたいになったら面白いんじゃないかと思いついたのが始まりです。最終的にはスマートフォンアプリを使ってベストに様々なアニメーションを表示したり、文字を表示したり、色を変えたりできるような犬用ウェアラブルデバイスになりました。
ロリちゃん本人に着せてみたら結構気に入ってくれて、これは量産したら面白いなとKickstarterのプロジェクトにして出資を募ることにしました。すると日本円で300万円くらい集まって、今ちょうど最初の50着を制作している最中です。「Good Morning America」(アメリカTV局「abc」の毎朝の名物番組)や雑誌「TIME」などでも取りあげられました。

--本をカスタマイズできるサービス「Bookü」はどんなサービスですか?

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Photo by Suzette Lee

川村:
これは読書場離れが最近良く問題になっているけど、例えばもっと「本や小説が身近に感じられる」ようになればちょっとは本を好きになってもらえるのではないか?と考えていたときに生まれたアイデアです。パーソナライズドパブリッシングサービスと呼んでいます。(同じくPARTY NYの)清水が中心となって生み出しました。読み方は「ブックユー」とも「ブックゥー」とも読む方がいて、最終的にはよく使われる方にしたいと思っています(笑)。
著作権切れになった過去の名作の登場人物を、自分や友達の名前に差し替えることが出来て、それを実際に印刷された本の形にしてデリバリーしてくれるというサービスです。例えば「トムソーヤの冒険」が「清水幹太の冒険」になって、デジタル書籍ではなくて実際の本として届きます。これはすでに実際に使えるサービスとしてローンチしていて、順調にオーダーも増えています。クリスマスのプレゼントとして今年一押しです(笑)。

--"時間旅行ができる"音楽プレーヤー「TIME TRAVEL RADIO」はどのような作品ですか?

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Photo by Suzette Lee

川村:
これはウチのジェイミー・カレーロというディレクターのアイデアです。周波数を調整する代わりに、2015年から1930年までの「時間」をチューニング出来るようになっていて、例えば1980年にチューニングするとその年のヒット曲がランダムで流れるようになっているラジオです。普通の人にとって「周波数」というコンテキストが何もない共感しづらい数字を、「年」という「俺1979年に生まれたんだけど、どんな曲があったのかな」といった、個人の記憶に紐づいた数字にすることで、新しい意味を持った音楽体験が出来ます。これこそプロダクトとアートの中心にあるような作品だなと感じています。今は受注生産で作ってますが、たくさんの方の興味があればちゃんとしたビジネスにしていきたいですね。

--さらに、"イヤホンでできたカツラ"「Song Wig」とは?

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Photo by Suzette Lee

川村:
こちらの作品だけは東京チームが企画・制作したものになります。これは今後どう展開していこうかなと一番悩む作品なんですが(笑)。他の展示より、もう少しアート寄りという感じですね。カツラの髪の毛の代わりに200〜300本のイヤホンを使って、その髪、つまりイヤホンから音楽が聴けるというものです。これは、ネット上でよく言われるシェアリングというものに対する若干のアンチテーゼが入っています。ネット上でのシェアとは違って、実際にその人に近づいていかないとその音楽を共有出来ない。見た目の面白さもありますが、同じ音楽をフィジカルに共有することの楽しさも表現しています。

--個展の反響はいかがですか?

川村:
オープニングも大盛況で、思った以上に反響が大きいなという印象です。ニューヨークのオーディエンスはやはりこういった実験的なものに理解があって許容してくれる人も多いんだなという印象です。我々としてもある種、プロダクトのマーケットテストをやっているような感覚で見ています。ここで反応が良かったものは実際にサービスとして運用していこうと思っているので。
PARTY NYはクリエイティブ・ラボとしてやはり「実験」するつもりでニューヨークに来ていますから、アートマーケットの中心であるこの街での挑戦・実験という面でも得られたものは大きいなと思っています。

■NYは「面白いもの」「変わったこと」に対して許容力のある街

ーニューヨークという街全体で見ても、こういった実験的なプロダクトが増えている傾向なのでしょうか?

川村:
意識している人は増えていると思います。テクノロジーとアートが融合した表現というか、細分化していたカテゴリの中の隙間に面白いものがある、という認識なのではないでしょうか。
ニューヨークにももちろん良い所・悪い所がそれぞれあるんですが、良い所としては、新しい物事にどん欲なカルチャーがあることです。「面白い表現」に対して支援してくれるパワーは、東京よりこちらの方が多い感覚があります。「変わったもの」「違ったもの」に対する包容力がある街なのではないでしょうか。

--改めて、PARTYとしてニューヨークにも拠点を置くことにした理由についても、聞かせて頂けますか?

川村:
元々、僕は以前ニューヨークで仕事をしていたことがあったので、PARTYを始める際にニューヨークにもオフィスを持ちたいというのは最初から理想として思っていました。
日本は、他の国と違うテイストのクリエイティブが生まれてはいるものの、面白いものを作ってもなかなか世界には広まりづらい。コミュニケーションデザインに携わっている以上「もっと広い人々にアイデアを届けたい」と考えた時に、やはり人種のるつぼであり、世界へ様々なことを発信する中心地であるニューヨークで活動・発表していった方が、より多くの人に届くんじゃないかと。また同じように考え最前線で制作をしている人々と出会いコラボレーションできるのではないかと。
ニューヨークは音楽、ファッション、アートといったものの歴史が古く、かつこれらをちゃんとマーケットとして確立している街です。この伝統と革新が同居している街で活動することで、僕らにとっての新しいサステナブルなクリエイティブ・ビジネスモデルを生み出せるのではと考えています。
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PARTYのニューヨーク&東京メンバーと、ギャラリー「Usagi NY」メンバー。上段中央が川村真司さん(提供:PARTY)

--ニューヨークでは、どのような業務を行っているのでしょうか?

川村:
PARTYは自社を「クリエイティブラボ」と位置づけています。ブランディング、デザイン、コミュニケーションといったものにストーリーテリングの考え方を組み合わせて、実験しながら、世の中に出していく。そのコアとなる考え方は東京もニューヨークも変わりません。
この「実験」精神のより尖った部分をニューヨークでは実践しているつもりではいます。いわゆる広告に加えて、よりアートやスタートアップ的な表現を手がけることも多いですしカテゴライズ不能なものも多く作っています。リアルなプロダクトとアートの間の子を模索するのに近いような、プロダクトイノベーション寄りの業務が今一番自分たちの中では楽しいですね。

ーちなみに川村さん、ニューヨークでは普段どのような生活を送られているのでしょうか?

川村:
一番の刺激になるのは手を動かすことなので、つくってばかりいますね。
毎晩パーティーしようと思えば出来ちゃうような、ノイズの多い街なので、それに流されずにともかく「つくる」という毎日です。

--これから、どのような姿勢でニューヨークでの挑戦を続けていくのでしょうか?

川村:
基本姿勢としては、あまり固執しないことかなと思ってます。ニューヨークという場所にこだわらなくてもいいかもしれないし、例えば「Disco Dog」が成功したら、犬専門のテクノロジー会社になってもいいかもしれないし。それだけのフレキシブルさがないと、この面白い「狭間」にいられないので。

ー最後に、川村さんの考える「テクノロジー」との向き合い方についてお聞かせください。

川村:
難しい質問ですね(笑)。僕らの表現の中で大事なものは、一つ目が「クリエイティビティ」、二つ目が「アイデア」、三つ目が「テクノロジー」。テクノロジーが決して一番大事というわけではないんです。
「クリエイティビティ」は問いを発見する力。まずこの問いが間違っていると誰も関心を持たない表現になってしまうので、これが一番大事です。「アイデア」はその問いを解決する力。「テクノロジー」はそのアイデアをあくまで実現するための道具なんですよね。「アンプリファイ」という言葉をよく使っているんですが、その問いに対しての解決策を最も強力に発信出来る形で「テクノロジー」を使うという感じです。
あとできるだけ「テクノロジー」が無色透明になることを普段から気をつけています。「テクノロジー」が全面で出てこず、見えないところで魔法のように使われているものをこれからも作っていければと思っています。

テクノロジーありきではなく、あくまで理想とする世界を表現するためのものとしてテクノロジーがある。この考え方の詰まった個展「FRIENDLY FUTURES」内容と、展示作品はこちらからチェックすることが出来る。また、「SENSORS」12/13(日)2:35~放送でもご紹介予定だ。どうぞお楽しみに。

構成:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
Instagram:@takatoichiki

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