東大発!自律飛行ドローン『Phenox』で世界に羽ばたく若手研究者・此村領の挑戦

2015.03.13 23:07

東京大学の研究チーム「Phenox Lab」は3月13日に自律飛行型のドローン「Phenox」の量産化を目的にKickstarter上でクラウドファンディングを開始した。PhenoxはSXSW2015にも出展され、搭載されている高度な技術からも世界的にも注目度の高いプロダクトだ。開発リードする此村 領(このむら りょう)氏にPhenoxのビジョンを尋ねた。


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Phenoxと此村領氏。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻(知能工学研究室)の博士課程に在籍中。


■新型PhenoxはWiFiモジュールの搭載でリアルタイム相互通信が可能に


Phenoxは、搭載されているカメラやマイクで周囲の障害物や音声を検知することで、誰かが操作を加えることがなくても安定的に飛行することができる自律飛行型のドローン。前作のPhenoxでは2014年6月にKickstarterで2万3000ドルの調達に成功し、今回は量産化を目的にさらに性能を進化させた「Phenox2」で10万ドルの調達を目指す。



Phenox2は前作と比較して大きく変化した点はWifiモジュールを搭載したこと。Phenox2で撮影している動画をスマホで見るなど、Web Socketで他の端末とのリアルタイム相互通信も可能になった。Linux(Ubunts)も搭載されているので、Phonex2はインターネットにつながる小さな「飛行するサーバー」とも言うことができ、ユーザーは独自にプログラミングをして汎用的な使い方をすることができる。


また、Phenox2のメイン基盤自体も汎用的に使うことができるという。他のモバイル・ロボットを作る際にPhenox2の基盤を組み込めば、そのロボット自体をLinuxベースでプログラミングすることができる。


■Phenox誕生の背景にあるのは「小さくつくる」ことへのこだわり。


Phenoxはどのようにして誕生したのか。此村氏は誕生の経緯を以下のように語る。


此村:僕は大学に入るまでは、パソコンでエクセルやインターネットを少し触ったことがある程度のスキルしかありませんでした。大学入学以後、役に立つスキルを身につけたいと思い、ロボットコンテストのサークルに入ったことをきっかけに回路設計やプログラミングを学び、ハードウェアの開発にのめり込んでいったんです。そこで様々なものを自分でつくるうちに、汎用的に使えるロボットやコンピューターのコア部分の処理機能をつくりたいと思うようになった。しかも、それを「小さくつくる」ということに僕はすごく魅力を感じました。学部を卒業して、大学院では知能工学の研究室に入ったのですが、僕が入ったタイミングで、研究室では3Dプリンターを買ったり、ものづくりのための環境が整えられました。「よし!僕も何か作ろう!」と思ったときに「小さな回路」が生きるクアッドコプター(≒ドローン)の開発を思いついたわけです。


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手のひら大のサイズのPhenox


Phenoxの大きさは手のひらに乗るサイズ。FPGAを搭載した理由も、形としては小さいのに高度な処理能力を有しているからと、随所に「小ささ」へのこだわりが詰まっている。


■Phenoxを汎用性を持った「プラットフォーム」へ成長させる。


此村氏はPhenoxをどのように実用化することを考えているのか。彼が考えているのは、個別の用途向けに開発をすることでなく、あくまでも「プラットフォーム」として機能させることだと言う。


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机の上の様子から、研究に勤しむ姿が見てとれる。


此村: 僕らとしてはPhenoxを使って一つ一つのアプリケーションを作りたいというわけではありません。ユーザー自身がアプリケーションをつくることができる段階にまで持っていくこと、あくまでも汎用的なプラットフォームの構築にフォーカスしていきたいですね。でも、まだまだPhenoxも要素技術が足りないと思っています。現段階では、狭い環境で使われることを想定しています。飛行時間が5分しかないので、電池が切れそうになったら基地に自動的に戻るなど、活用の幅を広げるにはインフラが整備は欠かせません。また、一般的にドローンと呼ばれるものが、半自動であり人の手が必要なうちは、世の中にインパクトを与えるようにはならないと思います。人の手を離れて、特定の仕事が自動でできるようになると、堰を切ったように大きく変わってくる。Phenoxがその一歩になればいいですね。


■Phenoxは僕の研究とともに進化していくもの。


投資家達からすればドローンはまさに注目分野だ。ビジネスとしても大きな成長が期待できる分野であるが、此村氏は研究活動の一環だと認識している。


此村: 僕は研究がしたくてPhenoxを作っているんです。僕の研究とともにPhenoxも進化します。投資を受けてEXITまでに頑張るという考えは好きではなくて、研究の成果を発揮するための窓口として会社なり個人事業なりがあればいいなと思ってます。究極的には汎用的なモバイル・ロボットを作りたいですね。


ビジネスの新陳代謝の活動の中で生まれた発明は確かに人々の生活を変えてきたが、大いなる情熱を持った研究者が黙々とラボに籠って編みだしてきた発明は、人類の歴史を変えるようなものが多かった。此村氏の生粋の研究者としての魂が歴史に刻まれることに期待したい。


(SENSORS編集部 取材:石塚たけろう)

石塚たけろう:ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、広告会社にてスタートアップと大企業の共同事業開発モデルであるコーポレート・アクセラレーターの運営に携わる。フロントエンドエンジニア。@takerou_ishi

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