"フィジタル"で子供のコミュニケーションを促進 ソニーミュージックらが開発した不思議なボール「VOLLY」

2016.06.13 16:30

フィジタル(Phygital)とは、フィジカル(Physical)とデジタル(Digital)を組み合わせた造語。 「子供がデジタルを使うのが当たり前になる時代でも、アナログな遊びの楽しさを大切にしたい」と考え、プロダクトやサービスを生み出す株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下SME) エデュケーション事業部のキッズ専門ブランド『KIDSTONE(キッズトーン)』と株式会社ラナエクストラクティブ(以下Rex)に注目。 今回主役になるのは『VOLLY(ボーリー)』というデジタルのボール。開発に関わったSME伊藤弘康氏とRex太田伸志氏に開発背景、実際に使ってみた子供たちの反応を伺った。

volly.jpg

SME KIDSTONEが生み出した子供向けフィジタル・プロダクトVOLLY

■子供がデジタルを使うのは主流の時代、アナログの良さを大切にしたい

SMEでは、2015年7月より彼らの持つ音楽ビジネスノウハウを活かしながら子供向けのサービスやプロダクトを企画開発している。
今回取材したVOLLYはアナログなボールとしても遊べるがデジタルと組み合わせるからこそ、子供とのコミュニケーションが促進出来るという。VOLLYとは何なのか?子供達の反応を伺った。

SME KIDSTONEが生み出した子供向けフィジタル・プロダクトVOLLY。声が子供の遊びにあわせて変化するのが楽しい。

--VOLLYとは何か?そして開発背景を教えてください。

伊藤:
子供がデジタルを使うのは主流の時代ですが、アナログの良さを大切にしたいと考え生み出したのがVOLLYです。ソニーミュージックなので音楽ビジネスの延長上にある子供向けプロダクトとのことで「音」を使うことは大前提ですが、あとは自由にRexさんと企画を考えていきました。 子供が遊ぶドッジボールくらいのサイズのボールに、子供たちが自分の好きな声を録音します。ボールを転がしたり人に渡したりするなどの動態認識機能にあわせて声が変化するのを楽しむ、シンプルだけど子供たちが喜ぶデジタル×フィジカルな遊び道具がVOLLYです。
太田:
発想の起点が自由だったので、最初は「世の中の音を集めて何かを作ろう」とか「昔話を音切り口でイノベーションできないか?」など、色々とアイデアは出ていました。例えば、桃太郎のストーリーの中にある桃が流れる際のサウンドエフェクト(SE)「どんぶらこ〜どんぶらこ〜」を子供たちに吹き込めるような仕組みが出来ないか?などと考えながら、徐々に子供の声を大切にしたい。という考えが強くなっていきました。
伊藤:
あとは、シンプルに子供の好きなものを洗い出して行きました。お人形遊びやクルマや電車、など男女差が出るような遊びはNGにしようと考えました。鬼ごっこなども出てきましたが、最終的に男の子も女の子も楽しめるのはボール遊びだ!ということでボールに行き着きました。
太田:
子供がボール遊びをするサイズ感で作ったのですが、蹴っ飛ばして遊ぶというよりは自分の気持ちを込めて誰かに渡すためのツールとして扱ってもらうためにちょっと重みを持たせています。また、感情移入してもらえるようにLEDの目と鼻スイッチ、口マイクの上に子供たちが自由な発想力で考えた各々のイメージで、好きなようにシールで顔を作れるようにしています。
『おばけのボーリーと魔王の城』。オリジナルストーリーにあわせてVOLLYと遊べる子供ワークショップを福岡で実施

■"親に向かって直接言えないこと"を話す子どもも

--子供達の反応を教えてください。

太田:
2016年5月にソニーストア福岡天神でワークショップを行いました。『おばけのボーリーと魔王の城』というオリジナルのストーリーに沿ってVOLLYで遊ぶものなのですが、最初は遠慮していた子供たちもシールで自分の好きなVOLLYフェイスを作ったり、自分の声を吹き込み「VOLLYを自分のもの」と感情移入していく上でストーリーとVOLLYにのめり込んでいく変化が見られました。
伊藤:
子供に扱いやすいサイズ感で、男女差なく遊べるものなので集まってくれた子供たち全員が楽しんでくれたのがうれしかったですね。そして親に向かって直接言えないコトなどをVOLLYに向かって話している子もいて、親御さんもびっくりしていました。
今までも子供たちは人形や他のおもちゃに自分の思いを伝えていたのかもしれませんが、それを親が確認できる手段があまりありませんでした。VOLLYはじめデジタルのおもちゃが増えることにより子供が秘めていた思いを録音して親に直接言えない子供の気持ちを確認する、という事ができるようになるのではないか?と発見した瞬間でもあります。

--今後の展望を教えてください。

伊藤:
VOLLY自体はガジェットでしかないけれど、ワークショップやイベントなど周辺を設計していくことにより大きく展開していきたいと考えています。 子供の遊び場に積み木などと同じようにVOLLYが存在することで、最終的にはフィジタルな遊園地が出来るとうれしいと思っています。
Volly_members.jpg

VOLLY開発チームSME伊藤弘康氏(左)とRex太田伸志氏(右)

どれだけテクノロジーが進化し、デジタルが当たり前の世界になったとしてもアナログの遊び、そして優しさは我々の生活には欠かせない。ましてや子供達にはもちろんだ。今後もデジタルを上手くフィジカルに適用するフィジタルプロダクトが多く生まれてくることを期待したい。

ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

最新記事