「カレーメシ」佐藤渉と「ナノ・ユニバース」太田慧が考えるオンラインクリエイティブ

2015.03.03 10:39

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左 佐藤渉氏(ティー・ワイ・オー) 右 太田慧氏(AOI Pro.)

YouTube、vine、mixchannel、やUUUMの設立、Netflixの日本参入など、活発な動きを見せる映像業界。映像を観るデバイスがTVからスマホへとシフトしていく中で、映像コンテンツに求められるクリエイティビティにも変化が出てきたように思う。

宣伝会議・月刊「ブレーン」ではオンライン動画に特化したコンテスト「BOVA(Brain Online Video Award)」を開催しており、先日、コンテストへの勉強会としてトークイベントが行われた。コンテストの審査員でもあるクリエイター 太田慧氏(AOI Pro.)と佐藤渉氏(ティー・ワイ・オー)が語る"オンライン動画広告ならではのクリエイティブ"とはどんなものだろうか?

太田 慧(おおた けい)
AOI Pro. ディレクター。企画演出部オンラインユニット所属。Webと映像の両方を企画演出できるディレクターとして活動中。ADFESTグランプリ、CLIOブロンズ、ロンドン国際広告祭シルバーなど受賞多数。

佐藤 渉(さとう わたる)
2006年ティー・ワイ・オー入社。クリエイティブセンター所属CMディレクター。Spikes Asiaブロンズ、ADFESTニューディレクター・ロータス、同フィルム・ロータス・ゴールド、CLIOシルバーなど国内外で受賞多数。



■ 観てもらえない前提で考える

-- お二人はディレクターとして数々の広告映像を手がけられていると思うのですが、実際に企画を映像にする際どんなことから考え始めるのでしょうか?

太田 慧(以下、太田):僕はオンエアされないネット上の広告映像をつくることがほとんどなので、まず、"観てもらえない"ということを頭に入れて考えています。誰の目にも触れられずにYouTubeにポトッと落とされるものなので。だから、モデルが止まっている映像とか、特殊な技術で撮影された映像をつくってみたり。この映像を観てどんなツイートが起き、どんなPR記事に変わっていくのかなど考えて演出しています。

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AOI Pro. 太田氏が手がけたアパレルブランド「ナノ・ユニバース」のWebカタログ向けにつくられた映像。Webサイト上で観ると、一人一人のモデルをクリックすることができ、そのモデルが着ている服を一覧で見られ、実際に購入ができるシステムまで作っている。会社名が小さい"ナノ"と大きい"ユニバース"が合わさっているように、たくさんのコレクションをぎゅっと詰め込んだことを表現しているとのこと。



-- 佐藤さんはどうですか?

佐藤 渉(以下、佐藤):僕はCMがメインでやることが多いですが、それでも"誰も見ない"ことを前提に、"いかに振り向かせるか"ってことを考えています。たくさんのCMが日々流れていますから、観ている人にとって"初めて出会う何か"がないと振り向かないと思うんです。だから、埋もれないよう目立たせるために、「狂ったように○○してください」っていう表現を、よく役者さんにもスタッフさんにも求めます。「狂ったように切ない表情をしてください。」とか、「狂ったように格好良くしてください。」とか。多少荒削りでも、まとまってなくても、ちょっと行き過ぎているくらいの表現をしようと常に考えています。

-- 狂った表現でいうと、「カレーメシ」のCMは昨年すごい話題を集めましたね。

佐藤:あの仕事は、最初依頼を受けた時には既にカレーメシ君のキャラクターや、ひたすら商品説明をすること、とにかく最後には「ジャスティス!」っていうのが決まっていて。

-- あ、決まっていたんですね、ジャスティス(笑)

佐藤:だからそれ以外の部分を僕が埋めたんですが、新発売の商品だったので。話題になるよう狂った感じにしつつ、実はちゃんと商品の説明もして名前も印象に残るようにしました。

佐藤氏が手がけた日清「カレーメシ」のCM。日清のWebサイト上でも舞台裏が書かれており、"監督のOKが出るたびに「いったい何をもってOKなんだろう」という、うっすらとした疑問を誰もが抱き、不思議な一体感が生まれてい"たという。


■ 振り向かせるだけでなく、"飽きさせないつくり"

佐藤氏による、Blendy「挽きたてカフェオレ」のWeb限定動画。Blendyで使われる牛乳は選ばれた牛から作られていることを、"牛の擬人化"と"卒業式"の演出で表現している。



-- Blendyの動画はどういった経緯でこのような企画になったんですか?

佐藤:最初はもっとコミカルでした。農場の牛の被り物をした人たちが働いていて、その農場から配属先が決まっていくという。でも、それだと目立たないなと思ったんです。だから、被り物ではなく、"牛の擬人化"を出来るだけ人間に近い"鼻輪"だけで表現をして、舞台も農場じゃなくて卒業式にしようと。バカをするんだけど、それを至って真面目に演出するってことを心がけてつくりました。

-- これはWebとYouTubeのオンライン上だけの公開なんですよね。なにか意識されたことはありますか?

佐藤:そうですね。さっき、CMは"いかに振り向かせるか"が目的だと言いましたが、オンライン動画は"いかに観続けさせるか"っていうのも目的の一つとしてあると思うんです。オンライン動画は長尺も可能で、表現の幅も広がる分、良い悪いがはっきり出てしまう。飽きたらすぐに飛ばしてしまうし、全部見続けるというのが中々難しい。だから観ている途中で飽きが来ないように、前半は、彼らが何者であるのか、いったいこの舞台で何が行われているのかを分からせて、後半は、主人公である彼女がどこに就職するかというところを一点に進んでいく。そういった構成の作り込みをとても意識しました。

-- 太田さんは、飽きさせないつくりだとか、何か意識されていることはありますか?

太田:そうですね、オンライン動画だと、最初から最後まで見るというより、 "ここなんか良さそう"っていうところを"つまんで"観て、面白かったらまた最初から観よう、となると思うので、そうなった時にも見やすい尺っていうのを意識しています。

あとは、YouTubeで動画を観る時、"音を聞いてない人"って結構いると思っていて、そういう人でも楽しめるものがあるといいなと考えています。でも、佐藤さんのBlendyの映像はむしろ音を聞きたくなるから、そういう聞かせる技ってすごいなと思いました。



■ " 天然さ"を引き出す

太田:映像って何度も撮り直すものですけど、一番大事なのは"一回目の演技"ですよね。最初の演技のちょっとした"違和感"や、"天然さ"が良かったりするので。だからその"天然さ"を引き出すために、テスト撮影も実は本番にして、できればそこでOKを出したい気持ちで撮ったり、あえて役者には内容をあまり伝えない、ということをよくしています。

佐藤:それ、僕も全く一緒です。何度も撮り直してもだいたい使うのは1テイク目で。カレー飯のCMで男の子が踏まれるシーンは、実はあの子には何も言っていなかったんですよ。

-- あ、知らないで寝ていたんですね(笑)

佐藤:そしたら、あのリアルな「いてっ」っていうのが出てきた(笑)彼のお母さんが保護者で来ていたので、一応、彼が踏まれることを伝えていたんですが、踏まれた瞬間一番笑っていました(笑)

その後も同じように何テイクか撮ったのですが、やっぱり1テイク目が一番面白くて。計算して笑いを作るよりも、天然のものが一番強いので、天然を引き出したい役者とかには、あえて内容を伝えてなかったりします。


■ 芝居を見せる必要はない

-- 最後に、「BOVA」に応募する上で参考になる動画などありますか?

太田:オンライン動画って、芝居を見せる必要もないと思っているんです。「Test Your Awareness」のようなクイズ形式でもいいし、「2014 Toyota Corolla TV CM| Like You've Never Seen Before!」のように、話題のガジェットを使ってみたり、ひたすら面白い撮影の仕方にこだわるだけでもネットでは話題になったりします。また「Skype Laughter Chain」も良い。"本能的に感じる動画"がつくれると、芝居や演出をしなくても面白くなるのではないかと思います。

ロンドンの交通機関が、「人は注視していなければ簡単に見逃してしまう。」ということを訴えた映像「Test Your Awareness」。

「2014 Toyota Corolla TV Commercial | Like You've Never Seen Before!」

Skypeのビデオチャットで録画した笑っている様子を見て、それを見て笑った自分の動画をまた他の人の笑顔へと繋げていくプロジェクト「Skype Laughter Chain」



[BOVA]
HP: https://bova.sendenkaigi.com/

YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/user/sdkgbrain


[応募要項]
一般公募部門

課題:協賛企業8社から出された課題に対して、解決策となるような3分以内の動画(※ 未発表のものに限る)
応募方法:HPより応募者登録を行い、〆切までに作品をアップロード
応募〆切:2015年3月16日(月)


広告主部門

応募条件:2014年3月1日から2015年3月16日にオンライン上で公開された企業・団体のオンライン動画を対象。 URLで作品を閲覧する必要があるため、エントリー時から2015年6月30日までの間、必ずアクセスできる作品に限る。

応募方法:HPより応募者登録を行い、動画の URLを投稿

応募〆切:2015年3月16日(月)




(SENSORS編集部 文:小林智久)

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