人工知能でエンターテインメントはもっと面白くなる―真鍋大度が挑む認知の世界

2015.03.10 08:00

3月6日に虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催された「SENSORS IGNITION 2015」。トップバッターのキーノートスピーカーとして登場したのは、ライゾマティクス・真鍋大度氏だ。テーマは「人工知能が変える表現の世界」。スピーチでは自身が過去に手がけた作品紹介を中心に、観客に感動と驚きを与えた。我々はこれまでも何度か真鍋氏の取り組みを取り上げてきたが、今回はそれらを全て包括した数々の作品に通ずる真鍋氏の作品作りの根底が垣間見えた。


■InteractionからCognitionへの転換


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SENSORS IGNITION 2015、真鍋氏によるキーノートが始まる


SENSORS IGNITION 2015のスタートを切ったのは、ライゾマティクス・真鍋大度氏だ。キーノートが始まる前から会場内は超満員。会場後方に立ち見が出るほど多くの人々が集まり、真鍋氏と人工知能に対する関心の高さが伺えた。


真鍋自分自身まだ実験的なものをいくつかやっているだけなので偉そうなことは言えないんですけど、今回は人工知能が変えるエンターテインメントということでお話していこうと思っています。まず始めに、テクノロジーを用いたエンターテインメントの世界ではinteractionからcognition、対話から認知へという流れがあります。インタラクティブなものとは、スクリーンの映像と人間の動きがリンクするといったいわゆるゲーム的な関係性のことです。でもこれからはそのような1対1のやりとりではなく、大勢の人と映像などがリンクして楽しめるものになってくると思います。だから、ビックデータというとちょっと恥ずかしいですけど、そういうものを扱っていこうかなと。単純なインタラクションから脱却して、何か別のことができないかなと考えていて色々なことをやっています。


愛の歌を自動生成して再生する「Love Song Generator」


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歌詞の入力は全て手作業でおこない、データ化したというから驚きだ


 真鍋氏がビックデータを解析し、人工知能に深く入り込むようになった最初の作品が「Love Song Generator」というもの。2013年に六本木・森美術館にて開催されたLOVE展にて発表されていたので、実際に見て体験した人も多いのではないだろうか。


真鍋ビックデータを解析し、人工知能を扱った最初の作品がこの「Love Song Generator」です。これは"あなたの話しかける内容が歌になる"というもので、何か言葉を言うとマシーンがその言葉を含んだ歌詞を自動生成し、薬師丸悦子さんの声で曲を歌ってくれます。データベースには日本全国の曲、約6万5000曲を蓄積していて、その中で愛を歌う曲を選びます。例えば「人生は花」を言う言葉を入力したとしたら、愛を歌う曲の中から人生に関係のあるフレーズを探し、うまい具合に組み合わせて曲を作るという仕組みになっています。



1万人の体データを用いてライブ映像に使用


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ライブ映像中にスキャンされた観客の3Dデータが現れ、それをPerfumeが見下ろすという体験


Love Song Generatorのように事前にデータを集めたて使用した作品だけではなく、即日使用した例もある。それは、東京ドームで行われたPerfumeのライブだ。当日、ライブ会場の外に「3Dスキャンブース」を設置。そこで数秒の時間で観客の体を3Dスキャンし、集まったの約1万人もの人の体データを数時間後に行われるライブ映像に使用するという試みだ。


真鍋:スキャンに協力してもらった人には会場内の席も聞いておいて、完全に正確ではないですけど、スキャンしたアバターと本人が実際にいる位置がなるべく同じになるようにデータ化しました。我々はPerfumeのやりたいことを翻訳して、いまイケてる技術で表現しただけなんです。Perfumeに関わる人達の意見を聞き出して形にしていくという作業の連続で、半分くらいが翻訳作業でした。いかにオーディエンス参加型に出来るかということを一番に考えて、映像を作っていました。

あと、応援するということで一番シンプルなことってなんだろうと考えて、Perfume Music Playerというアプリも作ったんです。音楽を聴くことがアーティストに対する一番の応援になるし、我々にとってもファンが聴いている音楽のデータをとったらもっと面白いものになるんじゃないかって思ったんですが、結果的に何十万というデータが集まって。そのデータを使って、位置情報や人気曲などを元にしてグラフィックを作って表現しました。当日来てくれた大勢の人が参加できたのが良かったですね。


データをどのように集め、どのように活用していくか


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大量なデータをスマートに集めることが課題だと語る真鍋氏


真鍋:こういうネタはいくらでもあるんです。最近だと、
"人工知能はDJを淘汰するのか"というテーマでやったイベントがありました。会場内にモーションセンサーを設置したり、会場内限定でアプリを配布し体の動きを測定したりプレイリストを同期させたりして集められたデータをもとに、人工知能がその場に適した音楽を流すというものです。


やはりこれから一番大切になってくるのは、どのようなデータをどのようにスマートに集められるかということじゃないでしょうか。どのように集めるかという話になるとマーケティングやビジネス寄りの思考になってくると思うんですけど、エンターテインメントのシーンでも十分に可能だと思っています。


 膨大なデータを使って生み出される、新しいエンターテインメントの形。これまでのような1対1で行われる単純なインタラクションから脱却し、独自の形で変化させて人々を楽しませ続けるのが真鍋大度の真骨頂だ。これからも我々を巻き込みながら、エンターテインメントとテクノロジーの可能性を模索していくことだろう。現在は海外アーティストとコラボ企画も水面下で進行中らしく、これからの活躍にますます期待が高まる。


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文:石原龍太郎(いしはら りゅうたろう)


ライター・編集者。 テクノロジー・ファッション・グルメを中心に、雑誌やウェブにて執筆。本と音楽とインターネットが好き。@RtIs09


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