ヒントは"グラミー賞"と"インドの音楽市場" バンド・QOOLANDが語る「クラウドファンディングと音楽」

2016.01.20 09:45

音楽シーンは Apple MusicやAWA、Amazon Prime musicなど定額配信サービスが続々登場しネットで音楽を手に入れることが当たり前の時代となった。リスナーにCDを手に取ってもらうということの価値が曖昧になる昨今、クラウドファンディングで資金を集めるという手法でCDを制作。そこにリスナーとのコミュニケーションを見いだしたバンド「QOOLAND」。参考にした国内外の事例や、クラウドファンディングを通して変わったファンとの関係性など、じっくり語って頂いた。

■2日で目標額を達成!クラウドファンディングで200万円の支援を得て完成したアルバム「COME TOGETHER」

2011年結成以来、年間100本のライブをこなし、ロッキング・オン主催のコンテスト『RO69JACK 2013』ではグランプリを獲得。国内の名だたるフェスに参加し、勢いづくインディーズバンドQOOLAND。しかし、彼らは昨年、所属していた大手レコード会社を離れた。

自主レーベル「下高井戸レコード」で新たな戦略を模索する中、活動の第一歩となったのが今回のクラウドファンディングでのアルバム制作だった。
音楽専門クラウドファンディングサイト 「muevo」(ミュエボ)で募った《ファン参加型アルバム制作プロジェクト》の支援は開始からわずか2日で目標の80万円を達成。およそ1ヶ月後には、目標を大きく超える約200万円を集めた。何故彼らは、クラウドファンディングという手法を使おうと考えたのか。QOOLANDのギター・ボーカル 平井拓郎氏にお話を伺った。

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QOOLAND(クーランド) 2011年結成された、4人組ロックバンド。結成当初から毎年100本を超えるライブを行う。キレ味の鋭いツインギタータッピング、キャッチーなメロディー、日常を斬るシニカルな歌詞が特徴。2015年12月4日には東名阪ツアーのファイナル、渋谷WWWでのワンマン公演を成功させた。

■きっかけはグラミー インディペンデントな活動とクラウドファンディングの相性

--なぜ今回、クラウドファンディングという手段を選んだのですか?

平井:
世間的にも僕らにとっても、クラウドファンディングが真新しいことではなかったのですが、グラミー賞を見て、やろう!と思いました。
そのきっかけは、2014年のグラミー賞は過半数がインディーズレーベルだったことです。なぜアメリカではこんなにもインディーズが伸びているのか?それを紐解いたら、クラウドファンディングが盛んであることが理由だったのです。今やアメリカの音楽市場では、大手レコード会社に頼らずとも活動していける時代なんだなと。

--最初からクラウドファンディングで成功する自信はあったのでしょうか?

平井:
自信満々ではなかったんですが、達成できないとは思っていなかったです。2日で100%(80万円)達成した時は、安心しましたね。よかった!って思いました。

「達成できないとは思わなかった」
知名度もまだまだあるとは言えないインディーズバンドでありながらも、クラウドファンディング成功への自信は、情報収集に対する貪欲な姿勢と緻密なリターン戦略にあった。

■音楽クラウドファンディングはインドが熱い!

--グラミーなどの海外の音楽市場は常に見ているのですか?

平井:
グラミー、ビルボード、ローリングストーン、フォーブス...フォーブスは経済誌ですけど。市場調査というほどではなくて、好きだし憧れているのでいつもチェックしています。

--ネット上でお金を募るというのは、これまでの「買ってもらう」という関係性とはまた異なりますが、ファンからの悪印象がつくなどの懸念はありましたか?

平井:
ありましたね。その辺のファン意識については結構調べました。
そこで興味深いのは、今、音楽クラウドファンディングって、インドでとても流行っているんですよ。WishBerry(ウィッシュベリー)というクラウドファンディングの会社があり、その会社のインド人女性社長は、マッキンゼーやゴールドマンサックスで働いたのちにインドに帰って起業された方だそうなんです。
インドって、それまではミュージシャンやタレントが無職同然だったんですが、クラウドファンディングによってそれを変えていったので、この会社は「かっこいい」と思いましたね。
そのため、失敗例も成功例もインドのクラウドファンディングを参考にしました。失敗していたクラウドファンディングはインドのモニカ・ドグラというアーティストです。

※モニカ・ドグラは、人気エレクトロポップデュオShaa'ir+Funcのボーカルとして活動、女優などもこなす知名度も実力もある女性アーティスト。2015年6月、ミュージックビデオの制作費用を集めるためにクラウドファンディングに挑戦。同性愛者への支援を呼びかけることを目的としたこの取り組みは、目標額が500万ルピー(約900万円)と高額だったこともあいまって「社会支援を理由に大金を搾取しようとしている」などとソーシャルメディアを中心に炎上、批判が殺到してしまった。

平井:
成功例は、ヴァスダ・シャルマというインドの女性シンガーです。

※人気女性歌手ヴァスダ・シャルマは、2013年にソロデビュー作の制作費用を集めるため、クラウドファンディングに挑戦。56.5万ルピー(約103万円)を集めて成功させた。支援者への特典として、CDとコンサートのフリーチケットのほか、ヴァスダ本人と食事ができる権利などを用意。

平井:
他にも様々な事例を見ましたが、失敗しているクラウドファンディングは、団体の意志が弱かったりとか「支援お願いします!」というような姿勢が見えないものが多かったですね。成功するクラウドファンディングは、支援している人にとって「ありがたいもの」だったり「応援したいな」と思わせる謙虚さがありました。そこをちゃんとおさえれば、炎上したり、批判も浴びるようなことはないと思いました。
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Photo by 遠藤万里江

 

■「クラウドファンディングは、ロマンやドラマ、事件があるから面白いんですよ。」

平井:
この間、ケイティ・ペリーがTLCに5,000ドル支援したんですよ。ミュージシャンがミュージシャンにそれだけの金額を支援したのが衝撃で、アメリカで一番お金を稼ぐ歌手がクラウドファンディングを肯定した瞬間でしたね。ニール・ヤングのハイレゾ音楽プレーヤーの企画も6億を超えていたし。
クラウドファンディングってロマンとかドラマ、事件があるから面白いんですよ。予定調和じゃない、だからファンの心を打つと思います。
今回僕らも情報収集したり、実際に体験したことで、クラウドファンディングを使って活躍している人たちの生き様みたいなものを知れたのは、デカかったですね。

■「堀江貴文さんとワッキーさんに学んだ」クラウドファンディングを楽しむ姿勢

--国内で参考にされたクラウドファンディングの事例はありましたか?

平井:
結構、日本のクラウドファンディングを見ていると「音楽にはお金が必要なんで・・・」「皆様の支援が必要なんで・・・」みたいなちょっと、辛気臭い、しかめっ面してやっているイメージが多いんですよ。
音楽に限らず事例は調べましたが、堀江貴文さん(http://camp-fire.jp/projects/view/859)とワッキーさん(http://camp-fire.jp/projects/view/668)は違ったんです。彼らは、結構楽しくやっているんですよ。堀江さんと10万で寿司食いに行ける企画とか(笑)明るく楽しくポジティブに取り組むのが、成功のカギだと感じました。
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muevo」より。国内外の成功例を参考に考え出されたリターンの数々。「CDのクレジットに名前を入れる」「ボーカル平井とゴールデン街でサシ飲み」「お好きなメンバーの楽器or歌レッスン」「ベース菅ひであきディナーショー」など、支援者も楽しめるユニークなアイデアが満載。

■リターンにおける「経験」と「もの」のバランス

--「ボーカル平井とゴールデン街でサシ飲み」などリターンの内容がユニークですね。バンドならではのこだわりが見えます。

平井:
(リターンで重視したのは)バランスですね。その時しか味わえない「経験」にフォーカスしたものと、もう一つ「もの」として残るTシャツやラバーバンドなどのグッズ。このバランスが崩れると、めちゃくちゃになるので。
最初は「経験」ばかり用意していたんですけどスタッフの「ものとして残るものが少ない」というアドバイスをいれてグッズを増やしました。最終的にバランスは、5:5くらいですね。

■クラウドファンディングを経て、歌詞が変わった

--今回のクラウドファンディングがバンドにもたらした影響はありますか?

平井:
ファンの熱量を直に感じたことで、歌詞が変わりましたね。自分の書きたいことを書くということは前提なんですけどよりリスナー、ファンのためにっていう。
ただ、それは媚びたりということではなくて、心の底からたくさんの人に響いてほしいなと思ったんです。
撮影当日にTwitterでエキストラを募集を実地しゲリラ撮影したMV「Come Together」 この曲で『一人でも生きていく事はできる でもね誰かがいるならはるか違う』と歌う。

--クラウドファンディングで製作されたアルバムが完成し店頭に並びました。実際形になった様子を見ていかがでしたか?

平井:
素直に嬉しかったですね。でも、完成したからこそ「ちゃんとしないと」という気持ちが強くなりました。ファンの方々、まわりのスタッフ、メンバー...数少ない自分たちから離れていかなかった人たちのおかげで店頭に並んでいるので。
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タワーレコード新宿店 店頭に並んだCD。ブックレットには支援者全員の名前が記載されている。「自分の名前が載っているアルバムっていうだけで、愛着が出るんじゃないかな」と平井は語る。

--ストリーミングサービスなどが増える中、CDという「もの」にする意味は、どういったものだと思いますか?

平井:
CDが売れない時代と言う意見もありますが、現状日本は世界最大のCD大国になっていますし、個人的にはリリースする事で赤字になるような流れは感じていません。もちろんプロモーションの規模感によってリクープラインはシビアにはなりますが、フィジカルな「もの」が有ると無いではリスナーの熱量にも差が出てくる。多くの人の想いが詰まったものとして形で残し、リスナーに渡せる事がCDの最大の魅力じゃないかなと思います。

店頭に並んだCDを手に取ったファンは「クラウドファンディングを始める時から、ずっと見てきたのでこうやって手に取れて感動している。大切にしていきたい」と、語ったそうだ。
『自分が参加したアルバム』というレア感は一生モノ。さらに、自分の関わったものであれば、積極的に拡散もしてくれる。リスナーがそのプロジェクト、そしてアーティストを育てているという感覚。その繋がりこそが、インディペンデントな音楽活動を支える大きな核となっているに違いない。

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2015年12月4日、渋谷WWWで行われたワンマンは、彼らの活動に賛同し集まったリスナーで埋め尽くされた。ファンとQOOLANDの一体感を存分に感じる、熱いステージだった。 Photo by 横山正人

取材・文:坂本ミズホ

フリーTVディレクター
2008年テレビマンとしてのキャリアをスタート。原点となった情報番組では、日本各地を飛び回り地域の魅力を伝える。その後2014年に独立、バラエティ・音楽・ファッション・ドキュメンタリーなど表現の幅を広げ続けている。SENSORSでは、180日にも及ぶ密着取材の連載企画「DAYS OF BAPA」などを手がける。

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