時代の転換期に、言葉は再定義されていく。"令和"時代の「働き方・遊び・教育」--落合陽一×齋藤精一

2019.04.23 10:00

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(左から)齋藤精一、落合陽一、草野絵美

国内外の広告賞にて多数の受賞歴を誇るトップクリエイター・齋藤精一、世界でもっとも注目される日本人研究者・落合陽一、海外にも根強いファンを持つ歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」を主宰する草野絵美----各界を賑わす3名をMCに毎月ゲストをお招きしてきたSENSORSサロンのシーズン4。

番組を締めくくる最後のテーマは「新時代の働き方・遊び・教育」。過去の番組で取り上げてきたキーワードを手がかりに、SENSORS編集長の長谷川リョーがインタビュアーを務め、齋藤氏と落合氏に令和時代の未来予測を伺った。

「次の時代には、コミュニティが強くなるのではないか」と語る齋藤氏は、独自の経済圏やエコシステムの構築が予兆されるコミュニティの可能性を考察する。一方で落合氏は「ライゾマティクスや僕の真似をしても、同じような人は生まれてこない」と指摘し、日本の未来や自身に対する展望を語った。

テクノロジーの最先端で活躍する二人の目には、次の時代がどう映っているのか。激動の時代「平成」の振り返りとともに、白熱した議論が行われた。

「レペゼン地球」のDJ社長に学べ。ワークアズライフを体現する新時代の働き方

長谷川リョー(以下、長谷川):最初のテーマは「新時代の働き方」です。落合さんはよく「ワークアズライフ」といったキーワードを提唱されていますが、そうした新しい働き方の社会への浸透具合や動向について、どのようにお考えでしょうか。

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落合陽一(以下、落合):ワークアズライフ以上に、最近僕のなかでは「セミパブリック化」がキーワードになっています。所属がバラバラになることは、コーポレートガバナンスやポリティカル・コレクトネスに対する責任が個人にも問われていくことも意味しています。パブリックとプライベートを切り離さずに、みんながゆるく連帯し、利益やリスクをシェアする空間をどうやって回復していくのか。最近よく考えているんです。

長谷川:過去の放送では「働き方の量子化」というキーワードも出てきましたが、齋藤さんは新時代を見据えて、この言葉に何かアップデートが見られると思いますか?

齋藤精一(以下、齋藤):「働き方の量子化」は、進行している実感がありますね。所属に左右されず、スキルセットや志向性が合う人同士でプロジェクトを行うケースが、世の中にどんどん増えてきている。

「何に興味があり」「何ができるのか」のタグづけは、インターネットによって可視化されてきました。今後も、「組織ブランド・ドリブン」ではなく「個人・ドリブン」に仕事をする流れが、加速していくと思います。

長谷川:「個人・ドリブン」に仕事をする人が増えていくなか、面白い働き方をする具体例として注目している人はいますか?

落合:アーティスト「レペゼン地球」のDJ社長は面白いですね。"オールドエコノミー"や"オールドメディア"といったものを気にせず、イノベーティブに生活スタイルを変えているところがいいなと思いました。独自の経済圏をつくることで、他者からの関与を受けないコンテンツ発信を体現されています。

齋藤:名前を挙げたい方がいるというよりも、僕みたいな旧世代と新世代の間にいるような人たちがどう考えているのかに興味がありますね。働き方改革や医療規定の見直しなど、時代とともにルールが変化していくなかで、世の中をどのように捉えていくのか。住居、教育、ビジネス...変わらずに存在するコンセプトがどういった動向にあるのか、個の働き方よりも、集団で捉えたときの動きに注目しています。

長谷川:先ほど、「オールドエコノミー」がキーワードのひとつに挙がっていましたが、このような旧来型の仕組みにはどう向き合っていくべきなのでしょうか。

落合:これまでの仕組みにとらわれる必要はないです。たとえば、クラウドファンディングでモノやお金を集めたり、サブスクリプション型の新しい課金スタイルつくったり、個の力に左右されず、コストをほとんどかけずに新しい仕組みをつくりやすい社会になっているはずです。

齋藤:僕は昭和生まれの人たちの役割として、旧来の経済やインフラによってできた負債を、どう解消させていくかを考えていかなければいけないと思っています。以前、番組の地方創生回でも、「住民票のあるところに税金を落とすのはおかしくないのか」と話し合ったこともありましたが、そのような大きな仕組みから疑っていくことで、新しい経済圏や働き方が見えてくるのではないでしょうか。

時代の転換期には、私塾が勃興してきた。「コミュニティ」ブームは一過性か?

長谷川:次の話題に移ります。ここまで「ワークアズライフ」における仕事の側面をお聞きしてきました。AIによって単純労働が代替されていくと、人間の余暇が増えていくといった予測もされていますが、「遊び」についてはどのように再定義されていくと思いますか?

落合:僕は、「ポジティブなストレスの度合い」で決まるものだと考えています。適度にストレスがかかっていないと「遊び」になりませんし、ストレスが溜まりすぎると「遊び」の域から外れてしまいます。

経済的合理性から考えると、番組スタッフからは僕がいま働いているように見えるかもしれませんが、僕の経営する会社のスタッフからは遊んでいると思われるかもしれない。立場や考え方によって、遊びの定義は変わりますよね。

齋藤:僕は、オフラインになったときの「ノンストレスさ」に興味を持っています。スマホは便利な反面、常に通知が入ってくるので、実はストレスも大きいはず。空を見ることや歩くことなど、ネットから離れているときに余暇を感じている方々も多いと思うんですよね。

長谷川:エンターテイメントの世界は、どのように変わっていくのでしょう?

落合:いまでも一般的な話かもしれませんが、「パーソナライズ」していくと思います。

齋藤:見たこともないものを体験するハードルは低くなっており、個々が体験するエンターテイメントは、時代とともに進化してきています。ですが、オフラインならではの喜びや楽しみがなくならない限り、野球場やサッカースタジアムに応援しに行くなど、物理空間にみんなで集まって体験すること自体は残っていくと思うのです。リアルを介さないエンターテイメントは、興味がないことや苦手なことの入り口として機能するかもしれません。

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長谷川:過去にSENSORSでは「コミュニティ」をテーマにしたことがあります。近年、急激に浸透してきた概念のようにも思いますが、この流れは一過性のものなのか、今後も継続していくのか、どうお考えでしょうか?

落合:これまでも時代の転換期には、私塾のようなコミュニティが増える傾向がありました。僕は明治時代を例に話すことが多いですが、コミュニティが勃興する背景には、外の荒波から耐え凌ごうという考え方があるのだと思います。ゆるく連帯したい人たちが集まって、建設的なことを話し合ったり実行したりする欲求は、今後も変わらず残っていくのではないでしょうか。

齋藤:コミュニティが強くなっていく時代なのかもしれませんね。同じようなスキルや思考をした人たちが一箇所に集まることで、独自の経済圏やエコシステムをつくることができれば、部族的な連帯もより強まるはずです。

時代性と環境が偶然マッチしたとき、"次の落合陽一"が生まれる

長谷川:最後のテーマは、「教育」です。番組では以前リーダーシップをテーマに議論していただきましたが、改めて、世界を牽引していくビジョナリストや次世代リーダーを日本で育てていくためには、どのような環境を整備していくべきだと思いますか?

落合:混沌としているけれど、資金に余裕があり、応援してくれるフォロワーがつきやすい社会にすべきだと思います。やる気がある人を排除しない世界になると良いですよね。

長谷川:"ネクスト落合さん"のようなイノベーティブな人材は、どのような環境から出てくるのでしょうか?

落合:もちろん教育による貢献もあるとは思いますが、時代性と環境が、偶然マッチする必要があると思います。たとえば、ライゾマティクスや僕のやっていることをそのまま真似ても、同じような人は生まれてこないはず。次の世代の人は、次の時代性から出てくると思うんです。

齋藤:同じような思想をもった人だけを輩出することが、必ずしも正解ではなくて。挑戦や失敗を許容する環境が用意されるべきです。干渉はするけど、混沌としている。そんな状態がいいのかもしれませんね。

長谷川:とはいえ、義務教育が変化しない限り、厳しい面も多分にあると思います。以前落合さんは「元号が変わることによる効果は、意外と大きいのではないか」とおっしゃっていましたが、教育システムはどのように変わっていくべきなのでしょうか?

落合:変わる必要はないと思います。変化を強要しようとすると、一過性のブームで終わってしまう。それよりも、足の引っ張り合いが起きにくい社会をつくることが重要なんです。

長谷川:最後に大きな問いとなりますが、新元号ではどのような「時代を代表するテーマ」が出てくると思いますか?

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落合:僕の場合、20年単位のテーマとして「デジタルネイチャー」を挙げていますが、今年のテーマは「質量」だと思っています。個展やオーケストラの演奏を手がけていたのは、まさにこのテーマを体現しています。

齋藤:僕が注目しているのは、テクノロジーの発展に対する揺り戻しです。次の時代では、デジタル環境やインフラの急激な発達から一転して、波風がおさまってくると思います。そうしたときに、「幸せ」や「余暇」といった言葉の再定義が始まる気がしているのです。

長谷川:ありがとうございます。プロゲーマーのときどさんをお招きした番組回からスタートし、各分野のトップランナーとともにお届けしてきたSENSORSシーズン4。新しい概念やキーワードが出てくることも多く、数多くの刺激的なトークが展開されてきました。

1,2年後に見返して、新たな発見や実社会との照らし合わせをしていただけると嬉しいですね。落合さんと齋藤さん、約1年といった長丁場のなか、本当にお疲れ様でした。


平成が終わりを迎え、ビジネス、テクノロジー、カルチャーなど、各分野で"ゲームチェンジ"が起きようとしている。これまで『SENSORS』では、新時代の"指針"となるべく、最先端で活躍する起業家、研究者、クリエイターをゲストに、最先端のクリエイティブ、テクノロジー、エンターテイメントを紹介してきた。

来たる令和時代、新たなムーブメントはどこから生まれてくるのか。「ライブエンターテインメント」、「FinTech」、「ブロックチェーン」...番組で扱ったテーマやキーワードが、新元号の幕開けとともに現実社会を大きく揺るがす日もそう遠くないであろう。

社会のルールや言葉の定義が変化していくなか、MCの落合陽一や齋藤精一を含め、SENSORSに登場したトップランナーの声明が新時代の手がかりになるとしたら、制作陣ともども喜ばしい限りである。

執筆:川尻疾風

1993年生まれ、同志社大学卒。在学中に、メルマガ・生放送配信やプロデュース・マネジメント支援を経験。オウンドメディアやSNS運用などに携わったのち、現職へ。起業家やクリエイターといった同世代の才能と伴走する存在を目指す。
Twitter:@shippu_ga

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