ロボットらしさってなんだろう【後編】―"ロボティニティ"が人の望みや社会を映し出す

2015.09.18 13:00

2015年7月30日から10月4日まで、グランフロント大阪ナレッジキャピタルにて開催されている『ROBOTINITY~ロボットらしさとはなんだろう展』。この展覧会は一般社団法人ナレッジキャピタルと、オーストリア・リンツ市のクリエイティブ・文化機関アルスエレクトロニカとが手を組んで実現した。人間らしさならぬ、『ロボットらしさって』一体なんだろう。ロボットの未来って、一体どうなるのだろう。

人間らしさならぬ、「ロボットらしさ」ということを追求する『ROBOTINITY~ロボットらしさとはなんだろう展』。前編では、展覧会を企画・協力するアスルエレクトロニカ・フューチャーラボの小川秀明氏に展覧会について話を伺った。後編ではさらに「ロボットらしさ」とは何なのかということに、ロボットの未来予想図と絡めながら迫っていく。

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ホームレス型ロボット・Dirk(ディルク)


--ロボットと言っても色々な形がありますが、小川さんがいま考えるロボットとはどのようなものでしょうか?

小川:
ロボットというのはひとつのプロセスではないかと思っているんです。普通はロボットというと物理的なものをロボットだと思いがちですけど、僕が一番興味を持っているのはロボットをつくる行為そのもの。「なんで人間ってロボットをつくるんだろう?」と、なぜ世界中の人が自立型ロボットやコミュニケーションができるオブジェクトやマシンをつくっているのかということがすごく気になるんです。

誰もがロボットをつくれる時代になってきている中で、今回紹介しているプレンプロジェクトは、新しいロボットの創世記という時代の真っ只中にいる我々人間は何に興味を持っていてどこを目指しているのかということを問いただす意図もあります。なので、物理的なロボット1つ1つというよりはロボットを取り巻く世の中の状況に興味がある感じですね。

--今回の展覧会では「ディルク」というすごくリアルなホームレス型ロボットも登場しています。小川さんが予想する、ロボットの未来を教えて下さい。

小川:
ロボットの未来は、大きく分けると3つの方向で進んでいくと思います。

1つ目は、ロボットを受け容れる敷居が低くなってより我々の日常に溶け込んでくるということ。少し前まで大きな企業や研究所でしか作れなかったロボットが、3Dプリンタなどで個人でも簡単に作れるようになっていますよね。なので、これからはもっと様々な形のロボットが出てくるはずです。インターネットも、ウェブサービスが誰でも作れるようになった途端にサービスの幅がぐんと広がったじゃないですか。ロボットもインターネットと同じような広がり方をしていくのではないかと思っています。

2つ目は、コミュニケーション型のロボット。今、アメリカのMITで作られている『ジーボ』というロボットがあります。ジーボは非常に高いソーシャル性を持ち、複雑なコミュニケーションもとることができるんですね。これからはジーボのような、非常に高性能なロボットが医療や老人介護などのシーンで活用されることも増えてくるでしょう。ただし当然、それは倫理的にどうなのか、本当にそれは必要な物なのかなどの議論が必要になってくると思います。

3つ目は、モビリティロボットです。ドローンのように、今までロボットだと思っていなかったものが飛んだり移動したりするものがこれから次々と出てくると思いますが、ここが非常に大きなポイント。何故かと言うと、今までのロボットは動的なものは少なかったからなんです。でもドローンのようなロボットが動き始めると、少し前にニュースで話題になったように社会も徐々に動き始めて、大きな変革が起こっていきます。平和に有効活用されているのなら良いですが、もし無人オートノマスの自立型ロボットが武器になったらどうするのかということや、今はまだロボットは空を飛んでいないですけど、Amazonのデリバリードローンがぴゅーんと飛んでいる風景が本当に実現するのかといったことが議論になっていくでしょう。移動体としてのロボットというのは非常に大きく産業を変えるし、社会を変えるし、人間と社会の関わりも大きく変えていく1つの要因になるはず。今後は、良い面・悪い面の両側面から色々な議論が必要になると思います。
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LEDを搭載し空に立体映像を作れるドローン『スペクセルズ』


--ドローンというと、世間一般的にはどうしてもネガティブなイメージが強いですよね。

小川:
僕としては、ネガティブな面だけでなくポジティブな面もしっかり見ないといけないと思っています。いま色々なところでロボットの実証実験をしたり、世の中に出てきたりしていますが、それにNOというのは簡単なことなんです。それは、リスクを取る必要がないから。しかし、ドローンをはじめ、新しいモビリティとしてのロボットは産業としてすごい規模のイノベーションを起こすだろうと予測されています。それがセキュリティ面のネガティブな話だけで片付けられていいのだろうかという気はしますね。

おそらく、それを議論する場所がないことが問題なのでしょう。いま僕らがつくっている『スペクセルズ』というドローン・システムがあります。スペクセルズは本体にLEDを搭載して飛ばすと空に立体映像を作れる仕組みなのですが、日本だとレギュレーションが厳しくて見ることができないんです。こういうことが当たり前になってしまうと、ドローンの文化的活用もできなくなってしまいますよね。だから、ドローンに限らずテクノロジー全般に関して寛容である場所を構築する必要があるし、色々な人たちがテクノロジーについて対話できる場所が大切になってきます。対話をして、実験をして、良かった・ダメだったということを実体験として持ち帰って、自分事にする。そういった場所が必要なんじゃないかなと思います。
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--最後に、小川さんにとって『ロボティニティ』とはどのようなものでしょうか?

小川:
僕にとってのロボティニティとは、「人間らしさとは何か」を知る作業だと思います。ロボットは人間がつくるものであり、テクノロジーは人間が人間らしくいたいがために生み出した技術なんです。それはある意味人間の創造物が物理的なモノになっているようなもので、元を返せば「人間とは何か」という問いだと思いますし、テクノロジーと人間らしさが鏡のように表裏一体になっている状況がロボティニティとヒューマニティだと思っています。それはシンギュラリティを迎えると言われている2045年も、2100年も3000年もその先も、その時代時代の人間らしさとロボティニティが存在するはずです。

人間には何か新しいものつくっていきたいという欲求というものが常にあります。おそらく2045年にもその時代背景に連動したロボティニティというものが出てきていると思うので、「2045年のロボティニティとは何なんだろう」とイメージした時に色々な答えがあるのはすごく楽しみですね。

結局僕らが言っているロボティニティというのは、人の望みとか欲望とかいろんなものが混ざり合って社会に形として出てきているプロセスのことなんですよ。だから、結局は人なんです。人がどう思って、何を考えて、どう社会をシェイプしていきたいのかというところが、重要に問われていくところではないでしょうか。

この小川氏の哲学、そして未来への想いが込められた『ROBOTINITY~ロボットらしさとはなんだろう展』は10月4日まで開催中。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。公式サイトはこちら

前回放映分は毎週「日テレ無料(TADA) by 日テレオンデマンド」にて配信しています。(9/20 深夜1時39分まで/サービスは日本国内限定となります。日本国外では動画が再生できませんのでご注意ください。)

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文:石原龍太郎(いしはら りゅうたろう)


ライター・編集者。 テクノロジー・ファッション・グルメを中心に、雑誌やウェブにて執筆。本と音楽とインターネットが好き。@RtIs09

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