CG女性がリアルを越える?『月刊ドロンジョ』を手がけた桐島ローランドに聞くテクノロジー進化

2016.06.28 12:00

"CG女性がリアルの女性と寸分違わない"と『月刊ドロンジョ doronjo by 御伽ねこむ』が話題になっている。テクノロジーの進化がリアルの世界まで浸透してきそうだ。このテクノロジーを支えるヒントが桐島ローランド氏のフォトグラメタリースタジオ「AVATTA」にありそうだ。バーチャルをリアルに近づける桐島氏を取材した。

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リアルな御伽ねこむ氏(右)とCGの御伽ねこむ氏(左)©タツノコプロ / ©エムアップ

『月刊ドロンジョ』に登場したコスプレイヤーの御伽ねこむ氏のCGが、写真撮影されたものと変わらないクオリティに驚いている。CGでリアルな人間を作り上げられる時代になったのか、とSENSORS編集部でも話題になった。CG技術はかつてからあるが、なぜ実在の人間のようになめらかに、あたかもリアルな人間のような表現ができるようになったのか?「AVATTA」というフォトグラメタリースタジオで撮影したことにより、被写体の細部までデジタルで取り込めるようになったことが背景にあるらしい。「AVATTA」を立ち上げた桐島ローランド氏にフォトグラメタリーとは何か?CGの世界の進化はどのようになっているのか?伺った。

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AVATTAスタジオで桐島ローランド氏に話を伺った

■高クオリティに人体を測量する技術がアバターを進化させる

--AVATTA、フォトグラメタリーについて教えてください。

桐島:
NASAなどが月や火星などの奥行き情報を得るために使っているテクノロジーですが、"トライアンギュレーション"と言って様々な角度から3次元の物体を撮影すると奥行きがわかるものです。もともとは測量技術として地形を把握するために人工衛星を飛ばして複数角度から撮影していたのですが、人物に対して適用しはじめたのは最近のことです。
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120台のカメラで被写体を正確に撮影するAVATTAフォトグラメタリースタジオ。場所は東京 芝公園駅近くだ。

--なぜフォトグラメタリースタジオ「AVATTA」を立ち上げようと思ったのでしょうか?

桐島:
AVATTAの名前の由来はアバター。インターネットの世界では既にアバターが存在していますが、リアルの世界でもアバターが必要になる世界がやってくるのではないか?と考えました。また3Dプリンターなどの発達によりフィギュアを作ることも敷居が低くなっています。自分のアバターが必要になる世界がやってくることを想定し、そして、よりリアルなアバターを作るためには高い水準で自身の体を測量する必要があり、フォトグラメタリースタジオを立ち上げました。

フォトグラメタリースタジオの最高峰はハリウッドなのですが、イギリスにInfiniteRealityというフォトグラメタリースタジオがあり、ブログでスタジオの作り方や運営方法などノウハウを載せてくれていたのです。日本と違い情報がオープンなのはとてもありがたいです。そのブログを参考にNIKONから50台のカメラをレンタルさせていただき一週間テストをしてみたのです。上手くいったらビジネスとしてやってみようかな、という気持ちでした。 40代中盤でスタートアップ、うまくいくかどうかドキドキし心細くもあったのですが、ありがたいことにテストもうまく行き正式にビジネスとして立ち上げる事といたしました。 最初50台だったカメラ数も現在では120台まで増加してより精度が高い撮影が可能になっております。

■コピーロボットがやってくる。リアルなアバターが必要になる世界。

--先ほどリアルなアバターが必要になる世界が来るのでは、とおっしゃいましたが、なぜそのように考えるようになったのでしょうか?

桐島:
例えばアメリカでは2人以上乗車していれば"カープールレーン"を走行できるので、実際にはドライバー一人の車にマネキンを乗せて走っているという事例があります。また、LAなどは女性一人でドライブしていると危険に巻き込まれる可能性が高いので、助手席にマネキンを乗せてドライブをするような動きがあります。助手席に座るのが人形やぬいぐるみではなくアバターである旦那、友達、などリアルであるほど危険に巻き込まれるリスクが減ります。

また、映画やコマーシャルの撮影の際にタレントさんを起用する際にタレントのスケジュールをおさえるのは金額もスケジュール調整も大変です。その際にタレントのアバターがあれば必要箇所のみ本人に登場していただき、あとはアバターに演じてもらうことも可能です。今回のドロンジョねこむさんもそうですが、精細に撮影したデータがあればあとはリアルな人間のように動かすことは後処理でいくらでも可能な時代になっています。

--ねこむさんのドロンジョプロジェクトはどのようなプロジェクトだったのでしょうか?

桐島:
まずねこむさんの裸の写真をフォトグラメタリーでスキャン撮影し、リタッチ、CGデータとして扱う際のポリゴンメッシュを作る"リトポロジー"を行い、テレビコマーシャルにも使えるレベルの精度にしました。 その後筋肉の形状や自然な動きを作るための"リギング工程"まで行いました。その後衣装を着せる作業までデジタル上ですべて完結させました。数年前のハリウッドであれば億単位の金額がかかるものが、テクノロジーの進化により数千万円で出来るようになりました。 お金をかけずに写真を参考にしながら作り上げる方法だと数ヶ月かかってしまうものだったのですが、AVATTAフォトグラメタリーを利用すると期間もコストも抑えてリアルをバーチャルに変更させることができます。
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©タツノコプロ / ©エムアップ

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©タツノコプロ / ©エムアップ

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©タツノコプロ / ©エムアップ

--桐島さんにとってテクノロジーとは何か?教えていただけますでしょうか?

桐島:
僕は最終的にはロボットを作りたいと思っています。現在フォトグラメタリーを使ってリアルな人間を高精度でキャプチャーするところまでは出来るようになりました。

そしてテクノロジーは人間がもっと幸せになるためのサポーターだと思っています。同時にクリエイターにとっては難しい時代になってきたかもしれません。今まで想像したものをカタチにするには妥協がいくつか発生していたのが、妥協が許されなくなります。 また、女優・俳優という職業も変化するかもしれません。スキャンではなく初音ミクのようにゼロから作られた女優が映画やコマーシャルに登場する世界も遠く無いと感じています。

パブリックドメインの女優が出来てもいいかもしれないですね、そのような世界を加速させるのがテクノロジーで私もそのような世界を目指していきたいと考えています。
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「最終的にはロボットを作りたい」と語る桐島ローランド氏

--ありがとうございました。

桐島氏は取材後にいくつか海外の事例映像を見せてくれた。それはCGを使った女優が演技をするショートムービーだが、リアルな喜怒哀楽を表現するCG女優の演技を見てこちらの感情も刺激されたことに驚いた。何がリアルで何がバーチャルか?それは我々一人の認識の問題で「リアル」と感じたものはバーチャルであったとしてもリアルな存在になるだろう。今後ロボットが身近になる世界で、ロボットだから、人間だから、という区別ではなく「何が自分にとって大切か?」見極める自分自身の判断基準がより大切になると思う。

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ライター:西村真里子

SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/

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