1ヶ月でフォロワー1万人増!編集者「さえりさん」妄想ツイートの裏側にある"優しさ"

2015.11.17 18:30

ハロウィンの翌日、11月1日にWeb制作会社「LIG」ブログにアップされた「【渋谷】仕事が嫌になったので、ハロウィンで仮装している人の「職業」を聞いてみた」という記事。その名の通り、ハロウィンに"浮かれた街"渋谷に繰り出して、仮装をしている人々の職業を聞き出すもの。Facebookで3,700いいね!を超えるなど、SNS界で一躍話題の記事となった。反響は様々だが「ちょっとほっこりした」という反応も。

この記事に登場していたのが、LIGでWeb編集者を務める、通称「さえりさん」。彼女はTwitterにて、いわゆる"妄想"ツイートを日々展開し、最近では「妄想bot」と評されるほどだ。そのツイートは多くの共感を呼び、直近一ヶ月で10,000人フォロワーが増えたという。

そんなSNS界で話題沸騰中のさえりさん。何故これだけの支持を集めるようになったのか?そのルーツを探るべく取材を敢行。一見"楽しい"言葉の裏にあった、さえりさんの"優しさ"とは。

(2016年1月追記)
2015年人気記事10選」入りを受け、最新コメントを頂きました!

さえり:
昨年は1月に前職を辞め、2月にLIGには入ってからめまぐるしいほどのスピード。自分の頭で考え物事を動かす機会も、以前と比べてぐんと増えました。フォロワーも1年で30,000人以上増え、声をかけられたりも...刺激的でめまぐるしく、新しい自分にたくさん出会えた年でした。
最近は個人で受ける仕事も以前と比べて増えてきました。自分の担当の仕事はもちろんのこと、新しいことにもどんどんチャレンジしたいので、恐る恐るではありながらも、一つずつ取り組んでいけたらと思っています。

■出版社からWeb制作会社へ転身

--まずは、今携わっている業務について聞かせてください。

さえり:
Web制作会社・株式会社LIGでWeb編集者として働いています。LIGというと自社ブログが目立っていますが、私はそこのチームではなく、クライアントのオウンドメディアを運営代行するチームに所属しています。今はいくつかメディアを担当し、企画・編集・ディレクションを行っています。「LIG」の自社ブログでは、社員が必ず月に1本記事を書くことになっているので、そこでも記事は書いています。

1116_1.jpg LIGのチームメンバーでセブ島へ出張取材

--元々、Webメディアに興味があったんですか?

さえり:
文章を書くことは好きだったんですが、ネット系には疎くて。いわゆる「スマホしか使わない」というタイプでしたね。LIGの採用面接の時も「よく読むメディアはなに?」と聞かれて、「メディア、とは?」って思いましたから(笑)。

実はLIGの前には出版社にいて次どうするか決めずに辞めて、ちょうどその時に2人の友人から「LIGでWeb編集者を募集している」という話を聞いて、という経緯で今に至ります。LIGに関しては、"バズった記事だけ知っている程度"だったんですが、その友人2人がいい人たちだったので......。その2人が勧めるならいい会社なんじゃないか、と思ったんです。

--紙からWeb、環境が変わってもずっと「編集」に携わられているわけですよね。編集へのこだわりなどはありますか?

さえり:
まだまだなのでわからないこともたくさんで手探りですが、それでも「よりよい形で読者に届けられるように」という意識で文章を読んで、遠慮なく朱いれすることが多いです。前職の上司が「その文章が引き立つなら、どんどん手を入れた方がいい」とバシバシ朱いれする様子をみていたことが大きいのかもしれません。

それに加えて"できる限り"になってしまいますが、「なぜこう編集したのか」をフィードバックすることも心がけています。ライターさんの個性も殺したくはないので、どうやったら活きるようになるかは頭をよく悩ませています。ライターさんの文章や個性がどんどん世の中に出ていったら嬉しいなという想いはいつも持っていて、Twitterのアカウントを仕事用に「さえりぐ」としてもう一つ作ったことも、それが理由なんです。

掲載されるメディアがすでに力を持っているところであれば、文章も世にどんどん出ていくことができますが、まだこれからのメディアに掲載された場合、面白い文章を書いてくれてすごくいい記事だったとしても、読者に届きにくいのがすごく悩みで。どうやってライターさんを世に出すお手伝いができるか、と考えた時に、「メディアにまだ発信力がないのであれば、編集者が発信力をつければいいんじゃないか」と思ったんです。

私は発信していくことにあまり抵抗がないので、発信することが得意ではないライターさんの代わりに発信していけたらいいなと。今はちょっと使い分けごちゃごちゃになっているんですけどね(笑)。

■"妄想ツイート"が大反響。Twitter歴を探る

--Twitter歴はいつ頃からですか?

さえり:
2010年からです。みんな歩む道だと思うんですが、最初はなんでもないこと、そのうち意識高いことを書き始めて身内にリムーブされたりとかして(笑)、その後ポエムツイッタラーになって(笑)、今に至ります。学生時代に自主制作で詩集のような本を作ってTwitterやブログ経由で販売したのですが、知り合いじゃない方々が買ってくれて。Twitterも当時たった1,000人程度のフォロワーだったのに、100冊くらい売れたんです。そういう繋がりが出来るTwitterは面白いなと体感していました。

--妄想ツイートはいつ頃から始められたんですか?

さえり:
昔もちょこちょこ書いていたと思うのですが、こんなに連続して書くようになったのは実は結構最近で、今年LIGに入ってからなんですよ。前職に比べてお仕事が幸い忙しくなったのですが、元々物語を書いたりとか、手を動かして切り絵を作ったりとか、そんな一人きりの時間が好きで。その時間が取れず「創造性や想像力が死んでいくんじゃないか」と不安になったんですね(笑)。

そこで、電車の中で「今ここで何が起きたら楽しいか、考えてみよう」と始めたのがきっかけです。ツイートするのは電車の中が大半で、まずひとつだけ単語を決めて、どういうことが起きたら面白いか膨らませて、削っていくという作業です(この作業の詳細はLIGブログ「Twitterにも編集が必要?共感されるツイートを作るまでの過程を晒してみた」にて )。周りに若干引かれながらも数ヶ月続けていて、直近1ヶ月でフォロワーが1万人増えたりしました。



--それだけの反響の中、特にどういった方に共感されている印象ですか?

さえり:
単純に「きゅんとした!」というコメントが主ですが、「疲れた時に読んで、元気が出た」という反応も多いです。最近増えたフォロワーには若い女の子が多いですが、男の子からも僕もこんなシチュエーションをやってみたいという反応もあったりしますね。全体的には男女半々くらいのようです。

--さえりさんをフォローしている方も気になっていると思うのですが、妄想の元ネタは過去の実体験とかも含まれるんですか...?

さえり:
それが残念なことにないんです(笑)。さらに昔少女漫画なども特に読んできたわけでもないので一体どこから湧き出ているのやら......。基本的に想像力が、いいことにも悪いことにも、果てしなく広いんですよ。

■"病み期"を経てたどりついた「それでいいんだよ」

--「想像力が果てしなく広い」という点、もう少し詳しく伺えますか?

さえり:
大学も心理学科でしたし、元々人にすごく興味があるんです。というのも、中学校くらいから「人と一緒にいること」が疲れるから嫌いだったんです。思春期って多感な時期で「誰が嫌い」とかよくあるじゃないですか。特に女の子はませてる子も多いから、身の周りにはそういう話はやっぱりあって、その空気を感じるだけでも疲れちゃうんですよね。空気をよくしなきゃ、って気を使いすぎちゃって。それで学校もすぐに早退しちゃうタイプだったんですよ。

一方で人の心が気になっていて、「なんでこの人こういうこと言うんだろう、こんなこと考えるんだろう」とずっと考えて、日記に書いていました。その頃から心理学に進もうとは思っていました。当時から、誰がどんなことをどんな風に考えているのかという人の心の動きは、すごく気になるんですよね。

--先日「病み期」についてツイートされていたのが印象に残っているのですが...これはいつ頃のことですか?


さえり:
大学4年の頃ですね。大学2-3年の頃はいわゆる"意識高い"感じだったんですよ。ラジオに出たり、インターネット番組に出たり、CMを作ったり......。学外の友人が沢山出来たり、楽しそうに働いている自由な大人とも沢山知り合ったりして、「こんな世界があるんだ」と感動して、楽しくて、どんどん調子乗っている位のときだったんですよね。

ただその過程で、頑張り過ぎちゃってダウンしちゃったんです。そこで休学して実家に帰って、さらにゆっくり休めばいいものを「頑張らなきゃ」って、焦ってしまったり。

1116_4.jpg 大学時代、ラジオDJやMCなどとして活動していた時期

--頑張っちゃう時期って、ありますよね...。元々「人と一緒にいると疲れる」というタイプから、積極的に学外に出ていくタイプになるのは、きっと、カロリー使いませんでしたか...?

さえり:
そうなんです、使ったんですよ(笑)。最初は「刺激的!楽しい!人生超楽しい!」という感じだったのが、ガクンと疲れちゃったんですよね。 元々、目の前の問題に一つ一つ向き合ってとことん考えないと気が済まないタイプだったので、余計に落ちるときは落ちるところまで行きましたね。

それで「私いまこんなことを考えている」っていう内容の内面ツイートをしていたら、意外と「私も同じです」って反応をたくさんもらって。その中でも印象的なのは「私も同じだけどうまく言葉にできなかった、ありがとう」っていうコメントが多かったことですね。考えていることを言葉にするだけで、反応があるんだって驚いていました。

「元気になろうよ」じゃなく、答えが特になくても「私もこうなんだ」と思えるだけで安心する人がいる。そういう意識は、この頃の経験が大きいかもしれません。

--今の妄想ツイートも、忙しかったり、疲れている時など、多くのユーザーに共感されているわけですもんね。

さえり:
そうですね。妄想は基本的には「わかる!」という共感ですけど(笑)、どんな内容にしても疲れていたり、辛かったりする時に、決して押しつけじゃなくて、「それでいいんだよ」というスタンスで、ツイート出来ればと思っています。

--最近、Twitterをテーマにトークショーも実施されたんですよね。改めて今、TwitterというSNSをどのように位置づけていますか?

さえり:
Twitterは4〜5年前に盛り上がって、その後はなんかつまらなくなったと思われていたような時期もあった印象なのですが、最近また「Twitter面白い」という空気が出ている気がしてるんです。

このトークショーは、プレスラボのライター・カツセマサヒコさんに声をかけてもらって一緒にお話したのですが、告知して2日でチケットは完売して、最終的には立ち見の方までいらっしゃって。「僕らがツイッターをやる理由」というニッチなテーマにも関わらず、リアルでもこれだけ人が集まるんだと。その位、Twitterはリアルの生活との距離が近いのかな?と思いました。

わたしは常々「Twitterは自分が持っているメディアだ」と思っているのですが、最近は"ラジオのチャンネルに近い感覚なのかも"と思っています。どういうメディアにしたいのか、つまりラジオであればどういうチャンネルにしていきたくて、どんな人に読んでほしくて、どんな気持ちになってほしいか。そんなことを考えていくと、より届けることができる面白いチャンネルになるだろうなと感じています。

1116_5.jpg B&Bでのイベント中、参加者とともに全員でツイートを考えるの図

■さえりさんの描く、等身大の将来像

--今後、編集者としてどうメディアに関わっていきたいという将来像があれば、伺いたいです。

さえり:
やりたいことは一杯あって、本を書きたいとか、作詞したいとか、童話を出したいとか、海外に住みたいとか...でもいつ何に流れ着くかわからないと思っていて、あまり絶対「いつまでにこれを!」というものはないんですよね。でも、その「いつか」は漠然としたものではなくて今の先にあるものだと思うので...まず今を頑張りたいとは思っています。

あとは、アナログなものが大好きなんです。人の手にきちんと渡していけるようなもの。昔BASEで「ポストを覗く楽しみ」を売ったこともあって。これは手紙を送るだけなんですが、例えばクリスマスの頃に家に帰ったら寂しいなとか、家に帰るのなんとなく嫌だなって時、あるじゃないですか。その時に「今日もしかしたら届いているかもしれない」という瞬間があれば、ポストを覗きたくて家に帰るのが少し楽しみになる。その時間を売ることにしたんです。

そんな風にアナログなものを作るにしても、届けるのは「ネット」が主になりますし、そういう意味でもネットでの活動は大事にしていきたいですね。

やりたいことはたくさんありますけど、根本は結構一つかもしれないです。「言葉を紡いで人に届け、ほんの少し日常をほっこりさせたい」。ツイートもそうですし、手がけたり執筆したりする記事でも、何か日常がちょっとハッピーになったり、ちょっとプラスの方向に感情が動くような、一人の気持ちがちょっとほっこりする。そういうものを丁寧に作っていけたらと思っています。

1116_6.jpg BASEで「ポストを覗く楽しみ」として実際に販売していた手紙

学生時代の本の出版や手紙の販売、今のツイートやWEB記事、(現時点で)将来描いている作詞や童話など、さえりさんは「何かを創り出す、言葉を綴る」そしてそれを「人に届ける」ことを一貫して大切にしている。

また、人の心の機微がわかるからこそ、痛みを知っている。その分、優しさを届けられる。そんな"強さ"を、今回の取材を通して感じることが出来た。これからも、どんな形でどんな鮮やかな世界を表現してくれるのか...さえりさんの紡ぎ出す言葉に注目だ。

取材・文:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
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