「あなたは人工知能と恋愛できますか?」アーティスト市原えつこが創造する未来の恋愛

2015.12.01 09:00

クリエイター、研究者、僧侶らで語る「人工知能の現在と未来」。第8回目SENSORS SALON参加者は真鍋大度氏(Rhizomatiks Research)、松尾豊氏(東京大学 特任准教授・GCI寄付講座共同代表)、市原えつこ氏(アーティスト)、松本紹圭氏(光明寺僧侶)、そしてモデレーターに西村真里子(HEART CATCH)。舞台となったのは神谷町 光明寺。エンターテイメントから宗教まで、人工知能が変えようとしている世界の様々な事象を語り尽くした。レポート第3弾で掘り下げたテーマは「人工知能と恋愛」。

オックスフォード大学の研究レポート「未来の雇用:コンピューターの影響を受けやすい職業」では今後の20年間でアメリカにおける雇用の50%がコンピューターによって代替されると予測されている。
前回の議論では、教師や医師といった対人的な仕事もその例外ではなく、人間が持つ価値や感情の機微をつぶさに読み取っていくことがより一層求められることが語られた。

テクノロジーが生活に溶け込んでいく中で、人間とロボットや人工知能とのインタラクションも増えていく。人間らしいコミュニケーションの最たる例である"恋愛"にも変容が起こるのか。モデレーターを務めた西村氏から、人工知能との恋愛はあり得るのか?という興味深い質問が投げかけられた。

メディアアーティスト・市原えつこ氏

市原:
人工知能を搭載したOSに恋をする男性を描いた映画『her/世界でひとつの彼女』でテーマになっていましたよね。これを観てリアリティは感じました。聞いたところによると、Siriなどのパーソナルアシスタントの発話ログって「好きだよ」「結婚して」「愛している」っていう言葉も多いらしいんです。生身の女性には言いにくいことも、AIやアンドロイドには言える。全て言う通りに聞いてくれる存在に愛情を覚えてしまう人は現時点でもけっこういると思います。
松尾:
僕はそんなことはないと思いますけどね。やっぱり相手が生身の人間であることが重要ではないでしょうか。ただ、先日人間そっくりのアンドロイド"ジェミノイド"を開発する大阪大学の石黒教授と話した際、「全然そんなことない。人は見た目ですから」と言われましたが。

石黒教授は以前チームラボ猪子氏との対談において、今後5年を目処に「意図」と「欲求」をしっかり理解できる"対話能力"のあるロボットを作りたいと語っていた。

市原:
アンドロイドが綺麗すぎて、学生が卒倒しちゃうこともあるらしいですね(笑)

松尾豊氏(東京大学 准教授)

松尾:
恋愛に関わらず、人っぽいロボットに感謝されるのと、本当の人間に感謝されるのだったら、人じゃないと嬉しくない気がするんですけど、どうなんでしょうか。
真鍋:
「これは人工知能により自動生成で作られた映画です」っていうのを隠されていたとして、観終わったあとに「実は自動生成でした」って言われたら、やっぱり少し感動して損した気になると思うんですよね。やっぱり人の手でやったということが価値というか、感動につながっているというところは絶対にある。それが物語にないと感動できない気がします。
見た目が綺麗なロボットができたとして、VRで性的に興奮することはあっても、コミュニケーションはないので恋愛とはちょっと違う気がしますね。
松本:
私は(人間と人工知能との恋愛は)全然あり得ると思いますね。避けられないそういう流れの中で、また新しい人間像が良くも悪くも生まれてくるんじゃないでしょうか。今持っている常識感覚は塗り変わって行く気がしますね。

市原氏は金沢21世紀美術館で展示中の作品「Ghost in the Cell:細胞の中の幽霊」を紹介。初音ミクに遺伝子と細胞を与え、生命/非生命の境界や二次創作で育まれる現代日本の想像力を探求した作品だ。
パーソナルな感情に訴えかける技術が進化すれば、バーチャルな恋心も育まれていくのかもしれない。

BCL + Semitransparent Design 《Ghost in the Cell》 2015
© Crypton Future Media, INC.(https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1726

松尾:
やっぱり人間って何かを考えると、社会的な動物として種を保存するようにできているんですよね。なので、自分を守りたいというのも、子孫を残したいというのも、弱い者を守ってあげようというのも全て社会的な動物として仕組まれたもの。こういう感情はそう簡単に騙せないのではないでしょうか。恋愛は微妙なところですが...。

「人工知能と恋愛」というテーマで、登壇者の間で意見は分かれた。松尾氏や真鍋氏が懐疑的であったのに対し、市原氏や松本氏はそうした可能性を感じるという。モデレーターの西村氏は人工知能単体と考えると議論は並行線に進むが、ここにハプティクス技術なども加わるとより「人工知能と恋愛」がリアリティを帯びてくる可能性も高いと展望を述べた。

構成:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。フリーライター。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。「BOSCA」編集長。東京大学大学院学際情報学府在籍。最近の関心領域は「人工知能」。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh


写真:延原優樹

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