日本では語られないイノベーション国家「イスラエル」

2015.04.20 12:00

イスラエルのスタートアップシーンが盛り上がりを見せている。実はシリコンバレーのように新興のテクノロジー企業が日々誕生しており、まさに今世界中から注目を集めている地域だ。日本では多くは語られないハイテク事情を、サムライインキュベートでアライアンスやコラボを担当する両角将太氏が語った。

天王洲のサムライスタートアップアイランドで開催されたイスラエル出張報告会

サムライインキュベートは設立したてのスタートアップ企業の投資・育成を行うアクセラレーター。近年では、代表の榊原健太郎氏が現地に移住するなど、イスラエルでの投資活動を活発化させている。投資活動以外にも、日本企業のイスラエル展開支援や、逆にイスラエル企業の日本展開支援なども視野にいれている。なぜ、サムライインキュベートはイスラエルに注目するのだろうか。それは数字を見れば一目瞭然だ。

■実はこんなにある「人口1人あたりのナンバー1」

●ハイテク企業の投資額(2014年は約4000億円)(エコノミスト誌)
●M&Aの数(2008年~2012年)
●技術者・科学者の数(イスラエル貿易省)
●海外からのR&D投資額、R&D施設数(約250) (イスラエル貿易省)
●スタートアップ設立数(毎年600社以上設立:エコノミスト誌)
●ノーベル賞受賞者

両角氏によれば、上記はイスラエルの人口(約800万人)1人におけるナンバー1の項目。テクノロジー、サイエンスの分野が活発で、海外からも注目が集まっていることが伺える。GoogleやApple、Microsoftなどの名立たる企業がイスラエルにR&Dの拠点を置いている。 日本においても、2014年に楽天がイスラエルを拠点にするスタートアップで無料通話アプリ提供する「Viber」(本社はキプロス)を約9億ドルで買収するなど、徐々にではあるがイスラエルのテクノロジー企業との関係を持とうとする動きがでてきている。

また、ナスダックに上場するイスラエル企業は74社にも上り、全体の約20%を占める(日本は12社、2007~2013年)。これはアメリカに次ぐ第2位。アメリカ企業の買収金額のうち20%がイスラエル企業でもある(2013年)。

■兵役仕込みのサイバーテクノロジー、ユダヤ人の勤勉性、ヘブライ語

サムライインキュベート両角氏

イスラエルのスタートアップシーンが盛り上げる背景には、イノベーションを創発する風土や文化があるようだ。大きく3つのポイント指摘する。

(1)兵役
まず、特筆すべき点は兵役。イスラエルの国民には兵役の義務がある。満18歳で男子は3年、女子は2年。兵役の期間中は軍事に必要な様々教育を受けるが、その中でサイバーテクノロジーについての教育も受けるそうだ。そこで身につけた技術を応用し、兵役後にテクノロジーの分野での経済活動に役立てる流れが出来ている。軍事由来のテクノロジーということで、サイバーセキュリティ関連のスタートアップが多く設立されているそうだ。

(2)ユダヤ人の勤勉性
イスラエルにはユダヤ人が多く在住している。世界のユダヤ人の人口は約1300万人。そのうちの半数はイスラエルにいるという。ユダヤ教の教えでは「勉強をすることは神に仕えること」であり、彼らの勤勉性がイノベーションの創発に一役買っている。これまでノーベル賞の受賞者は800人以上いるが、そのうちの20%はユダヤ人だそうだ。

(3)ヘブライ語
イスラエルで使用される言語は英語とヘブライ語。ヘブライ語には日本語のように回りくどい言いまわしがなく、言いたいことを率直に相手にぶつけることに長けた言語だという。実際に現地に赴いた両角氏は、ハグや握手の頻度が高く、ストレスフリーな雰囲気を感じたとも語っていた。

こうしたイスラエルという国の文化や風土が、イノベーションの源泉となっているようだ。

■日本からイスラエルに乗り込む"サムライ"

Capyのインターフェース。パズルやアイコンを特定の位置にドラッグさせることで認証する。(出典:https://www.capy.me/jp/)

そんなイスラエルにもすでに日本のイノベーター達が乗り込んでいる。代表的なのは「Capy」だ。「Capy」は不正ログイン対策のソリューションとしてパズル型の認証インターフェースを提供するセキュリティスタートアップ。2013年のIVS Launch Padで優勝したのは記憶に新しい。「Capy」はMicrosoft Venturesが世界6拠点で展開しているアクセレータープログラム「Microsoft Accelerator」に採択され、CEO岡田満雄氏とCTO島田幸輝氏はイスラエルで開催されたプログラムに参加した。

他にもトヨタがイスラエル現地のIT開発センターでハッカソンを実施するなどをしているが、他の諸外国企業に比べて、日本企業のイスラエル展開は進んではいないといえそうだ。

「イスラエルは危ない!」日本人のそんなイメージを払拭したいと両角氏は意気込む。実際は入国審査がとても厳しく、中東で一番安全だそうだ。中心都市のテルアビブは渋谷のように若者文化が栄えているという。

DLDのエントランス( https://www.facebook.com/DLDTelAviv )

テルアビブでは9月にDLDというがイスラエル最大級のスタートアップの祭典が開催される。世界中のテクノロジー企業の要人が集結する。韓国や中国の参加者は見かけるが、日本の参加者はほとんどいないという。まずは、「DLDに参加する日本人を増やしたい」と両角氏は直近の目標を打ち立てていた。

取材:石塚たけろう

石塚たけろう: ベンチャーキャピタルやデジタルマーケティング企業複数社での業務を経験後、大手企業とスタートアップの共同事業開発支援や、VR領域のスタートアップに参画。Webデベロッパー。@takerou_ishi

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