佐藤達郎×川上徹也「『これからの広告』はどっちだ !? 」〜消費者への積極的な"謎かけ"

2016.01.27 16:30

昨年11月23日、下北沢・本屋B&Bにて「『これからの広告』はどっちだ !? ~"メディア×Web×リアルをつなげるスキル"か "1行でバカ売れを生むコピー力"か ~ 」が開催された。『「これからの広告」の教科書』(かんき出版)の刊行を記念して、本の著者でありコピーライター出身の佐藤達郎氏と、同じくコピーライター出身で『1行バカ売れ』(角川新書)の著者である川上徹也氏が登壇。これからの広告はいかに姿を変えていくべくきか、5つのメソッドに沿って行われた対談を前編・後編に渡ってお届けする。

激動時代を迎える広告業界。動画広告・ネイティブアド・CM、どんな広告が消費者を動かし、社会を変えていくのだろうか。

『「これからの広告」の教科書』(かんき出版)を手掛けるのは、コピーライター出身で作家の佐藤達郎氏。27年現アサツー ディ・ケイに勤務後、49歳の時に博報堂DYへ。5年前からは、多摩美術大学で教員を務める。

『1行バカ売れ』(角川新書)の著者の川上徹也氏も、同じくコピーライター出身の作家。8年半現アサツー ディ・ケイに勤務。当初は営業職を担当、その後クリエイティブ局に異動。現在は、湘南ストーリーブランディング研究所代表を務める。

佐藤:
広告界は激変の時代というけれども、広告が変わっているのではなく、世の中が激変しているのではないかと。世の中の流れというのは、大きく「デジタルシフト・ソーシャルシフト」と「商品社会の成熟化」です。それゆえその変化に合わせて、広告界も変化するのは宿命ですよね。

そう語る佐藤氏が手掛けた『「これからの広告」の教科書』の中では、"これからの広告"をつくっていくための、メソッドを8つに分けてわかりやすく紹介。中でも今回は5つのテーマについて、『1行バカ売れ』を手掛けた川上氏と語った。

本のタイトルだけを一瞥すると、対極にあるメッセージが書かれているようにも感じる2冊。しかし、Webなどを利用して消費者と多くタッチポイントを持つ広告が話題を集めることも、広告の枢軸を担ってきたキャッチコピーの力が、商品を「バカ売れ」に導くこともある。

そんな二冊の著者が語る広告の未来・そしてこれからの広告の作り方とは。

■「USPはいらない〜差別化よりもウィルやインサイトで勝負せよ〜」

モノ・サービスといった、消費者の身の回りのモノ・コトのコモディティ化が進む現在。それぞれのモノが持つセールスポイントを見つけ出すのは、難しい時代にあると言える。USP(Unique Selling Proposition)を打ち出すことが鉄則だった時代は終焉を迎え、企業側の意志や消費者のインサイトへこだわるべきだという。

【左から】『1行バカ売れ』著者の川上徹也氏、『「これからの広告」の教科書』著者の佐藤達郎氏

佐藤:
これは、本の中でも"What to say"つまり何を伝えるかを取り扱った唯一のメソッドです。現代モノが溢れに溢れ、それぞれの商品の強みやセールスポイントが減ってきています。にも関わらず、他社・他商品にないこと言おうとする広告があって。そのメッセージはいかにHow to sayの部分を面白くしても人を惹きつけないと思うんですよ。差別化というよりもウィルやインサイトで勝負していこうと。

ここでいうウィルとは、ブランドの意志を指すという。例えばダヴが長年ブランドキャンペーンとして掲げる「Real Beauty」のように、その商品の特性を訴求するのではなく、ダヴというブランドが「美」というカテゴリーに対して持っているメッセージを指す。

佐藤:
インサイトでいうと、ソニー・α NEXという一眼レフカメラの例が面白いです。この商品「世界最小・最軽量」で、普通であれば広告でもこの強みを伝えます。しかし広告代理店で社内アンケートを行ったところ、そのスペックが伝えられても買わないという意見が多かったそうで。そこでどうやったら買ってもらえるかを考えた時に、子供の運動会などで利用するシーンを想像して、愛する対象をくっきり撮れるという点を強みにしたコピー「Focus Your Love」にしたとか。
川上:
そうですね。インサイトとは多くの人が抱えている本音のことですよね。ただ難しいのは、インサイトは人が常に持っているもの・意識しているものではないことですよね。SONYの話でも、常にカメラを持つとき「子供の顔をバックぼけで撮りたい」と思っているわけではないですし。
佐藤:
そうですよね。アンケートでも出てこない声です。ただこれを追究しないと、What to sayの機能は果たせないですよね。
川上:
たしかに、どんどん商品のコピー・広告を打ち出す仕事より、企業の声を発信していく・旗印をあげていくような仕事が多いですね。商品の差別化が難しいと、どんな広告を作っても業界トップの広告と見間違えられることもあります。
佐藤:
そうはいっても今度は大きな企業とかだと、ブランドのウィルを明確にするのも難しいという声も上がります。だから、商品開発の人の話を聞いたりして、生の声を反映しようとしています。

■「わざとわかりにくく〜消費者に謎をかけて突っ込ませる〜」

TVなどが分かりやすい例だが、広告はコンテンツとコンテンツの間に存在することが多い。その性質がゆえに、あまりにも端的でわかりやすいものだと、消費者の懐にすっと入りすぎてしまい印象に残らない。 それゆえ積極的に「謎かけ」をして行くべきだという。

佐藤:
こういう話をすると「じゃあなんで池上彰さんはわかりやすいのに人気なんだ」といわれちゃうんですよ。それは、情報はそれを聞きたい・知りたい人にとっては、「分かりやすい」が正義だからです。しかし多くの広告は、聞きたい・知りたいと思って見られるものではないです。もしかしたら、意識して消費者に謎をかけて行った方がいいのかもしれないですね。
川上:
ちょっとひっかかる、でもひっかかりすぎないさじ加減の広告が一番いいのかもしれないですね。
佐藤:
『1行バカ売れ』も小見出しが「なぜ〜か?」と始まっているのが多いなという感覚がありました。また本の中で、昔話やおとぎ話の中で、「見ちゃダメ」と言われたりするものに近寄ると悲劇が起こるストーリーが多いという話がありましたが、この話なんかも共通点ありますよね。
川上:
最近の例で言えば、AmazonなどのECサイトのレビューの話があって。レビューもいい意見と悪い意見の両方が、散けている方がいいということも言われますよね。賛否両論ある商品やモノの方が有名になるのかもしれないですね。

最近では、はあちゅう氏の「ツッコマレビリティ」や「いい炎上」というワードが話題を集めるなど、賛否両論の必要性が謳われている。突っ込まれたり反対意見があるということをポジティブに捉えれば、その広告に振り向き注目している消費者がいるとも言える。だからこそ、あえて消費者が突っ込みたくなる要素を入れるという逆転の発想だ。

■「伝えるからつなげるへ〜送り届けるのではなく、広がる経路を作る〜」

佐藤:
例えばトヨタの『アクア』のCMの例があります。このCMでは、中でドラクエの音楽を使っていて、音楽を聞いたらわかる人は「あ!ドラクエの曲だ。」と気付いて、ファンの中で横に広がっていったみたいな話です。
川上:
たしかに、最近の広告であればNANBOYAの「元カレが、サンタクロース。」というコピーもそうですよね。このコピーは、松任谷由実さんの『恋人がサンタクロース』という曲の本歌取りをしたものだと思うのですが、これもわかる人にはわかるコピーかもしれませんね。
佐藤:
川上さんの本の中では、イエス・キリストの話が出ていましたよね。「イエスってすごいらしい」というニュースになるようなことをやることで、人の話題を集め、世界規模の宗教を作ったとか。やはり、誰かに伝えたくなるような話題性を含むのは一つあるかと。

インターネットがここまで普及していなかった時代の広告は、それぞれの企業がメッセージを直接消費者に届けようとするものが多かった。しかし、SNSやインターネットが圧倒的勢力を増す現在、企業から消費者だけでなく、消費者から消費者へといった広告の横の広がりも視野に入れていかなければならないと語る。このイベントの模様は近日公開予定の「後編」記事でお届けする。

文:長谷川輝波

フリーライター、慶應義塾大学法学部4年在籍。高校時代はファッションデザイナーを志し、大学入学後はサロンモデルやファッションライターとしての活動を経験。現在は複数企業・協会でのライター・マーケティングに携わる。大学ではサービスプランニングを専攻。https://www.facebook.com/kinami.hasegawa

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