「テクノロジーを人間の方へ引き寄せたい」ネイキッド代表・村松亮太郎が企てた"Secret garden"

2016.01.15 18:00

1月8日から日本橋三井ホールにて開催中のイベント「FLOWERS BY NAKED」を記念して、前日の7日にオープニングセレモニーが行われた。イベントの仕掛人である株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏は、これまでも水族館や夜景などをモチーフに、テクノロジーを利用した数々の作品を生んできた。そんな村松氏が今回挑戦したテーマは「花」。華道の日本三大流派の一つ、いけばな草月流の家元・勅使河原茜氏や話題沸騰中のアーティストの水曜日のカンパネラ・コムアイなど、異なるジャンルのトップクリエイターとコラボした本イベントの見所や作品づくりの裏側に迫った。

テーマソングを手掛ける水曜日のカンパネラ・コムアイ氏。
着用衣装は草月流監修のもと制作

■COREDO室町に現れた"Secret garden"

「都会で見つけた秘密の花園」をイメージして企画された「FLOWERS BY NAKED」。花をモチーフにした幻想的で色鮮やかな作品だけでなく、フィボナッチ数列による黄金比をもとに設計された独特の会場設計が誘う非日常空間にはどのような思いが込められているのだろうか。村松氏に話を伺った。

フィボナッチ数列の「黄金比」をモチーフに設計された会場の様子

日本で一番早いお花見体験「桜彩」

プリザーブドフラワーの薔薇で埋め尽くされた作品「FROZEN ROSES」

会場の中心に据えられた株式会社ネイキッド代表・村松氏と草月流家元のコラボ作品
「植物の繭」

--まず、「FLOWERS BY NAKED」の入口にある「BIG BOOK, BIG FLOWERS」はどのような思いで作られたんですか?

村松:
作品の前に小さな本のオブジェを置いていて、会場全体が本の中にある1つのストーリーになるようにしました。「BIG BOOK, BIG FLOWERS」では世界の入口として花が舞い、会場設計のモチーフであるフィボナッチ数列を写した大きな本を設置しました。加えて、参加者の皆様がまるで不思議の国に迷い込んだ"アリス"のような錯覚を起こすように隣には「Big flowers」を設置しました。

「BIG BOOK, BIG FLOWERS」

--「FLOWERS BY NAKED」という「不思議の国」の入口にふさわしい作品ですね。では、次の作品「MOSAIC FLOWERS」は?

村松:
こちらは作品の前に止まった人の身体情報に反応する体験型アートです。次の作品「DANDELION CLOCKS」もですが、もともと僕らが子供のころ親しんでいたような植物との関わりをテクノロジーで表現したらどうなるだろうと思って作ったんです。「MOSAIC FLOWERS」は花占いだし、「DANDELION CLOCKS」はタンポポの綿毛を息で飛ばす遊びをテクノロジーで表現したんです。最先端のテクノロジーを駆使してとにかく目新しいものを作ろうというよりも、有機的なものをテクノロジーの力で表現したらどうなるか、拡張したらどうなるかという意気込みで制作しました。

株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏と「MOSAIC FLOWERS」

小さなタンポポに息を吹くとワイヤー状の壁に綿毛が舞い上がる「DANDELION CLOCKS」

--そして会場の中央にあるのが「植物の繭」ですよね。今までの華やかな作品と異なり、少し不気味な雰囲気と迫力を感じます。

「植物の繭」

村松:
「植物の繭」はいけばな草月流の勅使河原(てしがはら)さんとのコラボレーション作品で、本物の植物を使って制作されています。壁に這うように配置されている藤づるは、触るとドクッドクッとまるで鼓動が感じられるようになってます。会場の心臓部になっているので、今までの作品とは一変し濃い空間を作りたくて。子どもは泣いちゃうんじゃないかな(笑)。

「"THE SECRET" OF SECRET GARDEN」

--そして最後にあるのが「秘密の花園の『秘密』」ですね。

村松:
「FLOWERS BY NAKED」の作品すべてがここで作られていたというネタばらしのような作品ですね。よく見るとこの「ラボ」のどこでどの作品が作られていたのか分かるようになっています。作品の中の木製の机なども僕たちが一から作りました。僕らにとって映像もプロジェクションマッピングも物理的なプロダクトを作るのも一緒なんです。映画のワンシーンのようなものを作るためには労を惜しみません。

■「生っぽさ」の拡張をーーアナログとデジタルの摩擦から生まれたクリエイション

いけばな草月流や水曜日のカンパネラなど異なるジャンルのクリエイターとコラボしながら、作品や会場設計を通して"都会で見つけた秘密の花園"を生んだ株式会社ネイキッド代表・村松氏。

その言葉の通り、我々も経験したことのある植物と関わり方がテクノロジーによって見事に拡張され、新鮮な体験が出来るイベントとなっていた。同じく革新を続けるいけばな草月流第四代家元・勅使河原茜氏と村松氏を招き、全く違う手法を駆使する相手と共演してみて、どのような苦労や驚きがあったのか。本イベント開催の背景に迫る。

--今回「花」をテーマとした理由を教えていただけますか?

村松:
花って素敵じゃないですか。僕はもともと映画に関わっていたこともあって、テクノロジー一辺倒の作品は作りたくないなと思っていました。テクノロジーに人が合わせるのってしんどいじゃないですか。テクノロジーを人間の方へ引き寄せたいなと。これまでも夜景や水族館といった、素敵だなと思えるものを題材にして、そういった「感覚的に素敵だな、気持ちいいな」と思えるシンプルでオーセンティックなものを拡張しようとして、プロジェクションマッピングなどのテクノロジーを使ってきました。

【左から】株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏、いけばな草月流第四代家元・勅使河原茜氏

勅使河原:
最初はこのようなイベントに、草月流としてどうやって関わっていけるかわからなかったです。私たちにとっても挑戦でしたが、今振り返るとここまで関われるとは思いませんでした。現代って非常に生きにくい時代だと思うんですけど、それでも何かを心に抱いて生きていくしかないじゃないですか。だからこそ、そんな人が心あたたまるような、心癒されるような非日常を提案していきたいと思っているので、村松さんの作品作りと通じるところがありました。
村松:
僕のことを人はテクノロジー屋だと思っていると思うんですが、手段を取っ払ってしまえば、勅使河原さんと見ているものや制作の姿勢は本当に似ているなと感じますね。

--作っていて苦労した点はどのようなところですか?

村松:
これはいけばなだからというわけではないし、言ったこととちょっと矛盾するんですが、アナログ的なものと掛け合わせる際はいろんなところでギャップが生じることもありますね。けれど、そのギャップや摩擦を通り抜けないと、良いクリエイションは制作できないと思っています。
勅使河原:
いけばなの照明がいつもと違っていて新鮮に感じましたし、「こんな世界が作れるのか」と驚きました。すでに、次回はこうしようという話も上がっているくらいです。

株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏

村松:
勅使河原さんが行っているいけばなのデモンストレーションとコラボしたいなと。勅使河原さんが花をいけるたびに、そこに照明や映像を当てたりしたら面白いんじゃないかなと。リアルタイムで観客の前で挑戦してみたいと思っています。

--面白いですね。次々に面白いアイデアが思いついているようですが、お二人にとってのインスピレーションの源は何ですか?

勅使河原:
私がアイデアを思いつくのは、やはり植物と向き合った時ですね。「この花をこういけたらどうだろう」「この空間にはこう挿したらどうだろう」と考えています。

いけばな草月流第四代家元・勅使河原茜氏

村松:
そういう意味では同じかもしれないですね。僕もまず、周りから「もらう」という意識ですね。まずアイデアの種をもらって、それを受けて自分の中からパッと出てきたアイデアを活かしていくという感覚です。例えるならジュースミキサーのようなものですね。けれど自分の体験がなければ材料をミックスすることも出来ないから、結果論としては僕の個性が出せているのかなとは思います。アイデアは結果として出るものだと思いますね。
勅使河原:
気付いたり感じたものをいろいろと考えているうちに、人との繋がりが生まれて、形になっていくというプロセスは私も同じですね。

--やはり重なり合うところがたくさんあるようですね。イベントではお客さんにどこに注目してほしいですか?

村松:
もともと自分がいってみたいなと思える花のイベントがなくて、自分が行きたいイベントを作りたいと思っていました。「都会で見つけた秘密の花園」を意識しつつ、花の「生っぽさ」を残した作品ばかりなので、テクノロジーを楽しむというより、そういった「生っぽさ」に注目してほしいですね。
勅使河原:
今までに見たことのないけばなとなっているので、まずはその新鮮な体験を楽しんでほしいと思います。その一方で変わらない花の迫力や生命力を感じ取ってくれればと思います。

イベントテーマソングを手掛ける水曜日のカンパネラ・コムアイ氏。着用衣装は草月流監修のもと制作

伝統芸術である「いけばな」と時代の先端を走る「テクノロジー」という一見相反するシーンに存在するように感じる二者。しかし今回のイベントでは、村松氏の言葉の通り、ものづくりへの共通する姿勢が二者を出会わせ、美しいコラボレーションが実現した。「アナログ的に美しいものを拡張したい」と語り続ける村松氏といけばな草月流、さらにテーマソングに「水曜日のカンパネラ」をむかえて作られた本イベント、そして今後のさらなるコラボレーションから目が離せない。

【左から】水曜日のカンパネラ・コムアイ氏、株式会社ネイキッド代表・村松亮太郎氏、いけばな草月流第四代家元・勅使河原茜氏


【会期】1月8日(金)〜2月11日(木・祝)
【時間】月~木・日:10:00~20:00/金・土・祝前日:10:00〜21:00/※最終日は10:00~17:00/※入場は、閉場30分前まで
【会場】日本橋三井ホール(COREDO室町1 5F)(エントランス4F)
【料金】大人(高校生以上)1,300円/小人 900円/※未就学児童は無料
【URL】http://flowersbynaked.com/


文:長濵幸大

フリーライター
東京大学院学際情報学府修士課程在籍。研究テーマは「大戦直後の日本の洋裁文化」。最近興味があるのは仏文学と植物
Twitter:@nghmkt

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