SENSORS IGNITION 2017 展示エリアレポート〜アカデミック・VR・IoT・クリエイティブ編

2017.04.24 12:35

3月23日に虎ノ門ヒルズにて行われた『SENSORS IGNITION 2017』では、様々なジャンルのプロダクトやサービスの展示が行われ、我々の目を楽しませてくれた。この展示エリアの模様を2回に分けてレポート。今回は「アカデミックゾーン」「VRゾーン」「IoT・クリエイティブゾーン」の模様を紹介する。(数値などは3月23日取材当日時点のもの)
「SENSORS IGNITION 2017 展示エリアレポート〜パートナー企業&スタートアップ編」はこちらから

【アカデミックゾーン】

■テレイグジスタンスロボット 『TORSO』(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 Embodied Media)

遠く離れた人でもすぐ目の前にいるかのように感じる、あるいは遠隔操作で人の動きを別の場所に再現する「テレイグジスタンス」というコンセプトのもと制作されたもの。HMDを被った体験者が頭や姿勢を変えると、HMD自体のジャイロセンサーによって頭の回転を、そして体験者の目の前にあるカメラで背骨の傾きを認識し、離れた場所にあるTORSOも全く同じ動きで追随する。もともと企業との共同研究として、人間が立ち入ることのできない危険地帯での作業をより精緻に行うために開発されたもの。
今後は企業との共同開発を行いながら、誰もがより気軽に体験することのできるモデルから、全身の駆動をすることができるハイエンドのモデルを同時並行で開発していき、社会への進出を目指していくそう。

■超音波を利用して空中に音源を配置『ホログラフィックウィスパー』(ピクシーダストテクノロジーズ)

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落合陽一氏率いる「ピクシーダストテクノロジーズ」は『ホログラフィックウィスパー』を展示した。 超音波を利用して空中に音源を配置するこのスピーカーは、特定の人の耳元にのみ音を届けたり、空間に音源を配置する音場設計が可能となる。 外部のノイズが多い展示会場内だったが、ホログラフィックウィスパーは耳を傾けた来場者にのみしっかりと音楽を届けることができ、音楽を楽しむ新しい体験を提供していた。

【VRゾーン】

■テレビドラマのセオリーはVRでどこまで通用するのか?日テレ初のVRドラマ『ゴースト刑事』(日テレLAB× Rhizomatiks Design)

日テレLABとRhizomatiks Designが共同で製作した360度のVRドラマ作品「ゴースト刑事 日照荘殺人事件」。スマホアプリ上で体験できるVRドラマとなっており、これまでテレビ局がドラマ製作の中で培ってきたノウハウがVRの中でどう活きるのか?ということに真正面からチャレンジした意欲的な作品だ。
制作秘話は記事「世界初!パラレルVRドラマ『ゴースト刑事』誕生秘話 - 伝説のディレクター土屋敏男がVRドラマに込めた想いとは?」にて

■VR世界を踏みしめる感覚を体験。VRシューズ『Taclim』(株式会社 Cerevo)

モーターを仕込んだ靴を実際に履いて歩くことができる。

いろいろな床や地面の感覚を再現できる靴と手のひらへ触感をフィードバックするデバイス。 中にある特殊なモーターの振動を足の裏に伝えることによって、VR世界の中に没入しながら砂利道や雪道を歩いている感覚を得ることができる。HTC VIVEのような、オープンスペースに対応したVRとの相性は抜群だ。VRが話題になっている中で、視覚だけでなくて足の触感に着目した機器は珍しい。

■痒い所に手が届く。声で操作するインテリジェンスライト 『Lumigent』(株式会社 Cerevo)

ラスベガスで行われた家電見本市CESのイノベーションアワードを獲得した、声で呼びかけることによって向きや明るさの操作ができるデスクライト。またライトの先端にカメラが付いているため、書画カメラのように、机の上のメモなどを記録として残すことができるようになっているという優れもの。デスクワークをアシストしてくれる相棒として活躍間違いなしのインテリジェンスライトだ。

■VR時代のターヘルアナトミア。医療用VRシステム『Holoeyes VR』(Holoeyes)

実際の人体のCTスキャンを3D化し、VR空間の中でまさに体の中から観察することができる医療用VRシステム。 Holoeyesでは現在様々な医療機関への導入や、医学生用のパッケージ開発を通し、医療教育の質の向上を図ることを目指していくそうだ。
またこのシステムではLenovoの高性能PCを使用している。PCメーカーであるLenovoでは大容量のVR開発や高精細での使用に耐えうる高性能PCを、医療現場や建築現場など様々な分野に導入し、エンターテイメントだけではないVRの活用事例を増やしたり、その環境を整えているそう。

■VR情報を発信するメディアが制作するVRゲーム『書道VR』(Mogura VR Studio)

VRに関する情報をいち早く伝える「Mogura VR」の編集委員の方々が、自らもVR制作を行うことで開発者の気持ちを知ろうというコンセプトで作られた「書道VR」。VR空間で大きな墨文字によって様々な書を描き、その文字を2Dのプリンターで印刷して記念に持ち帰ることができるというもの。こういった展示イベントへの出展を体験することで、開発者の日常を垣間見、より精細な記事を書くことができるようになるという目的で今回SENSORS IGNITIONに参加してくれたという。

■百聞は一見に如かず!浮世絵の中に踏み込む体験ができる『VRアート』の世界(せきぐちあいみ)

浮世絵や昇竜などの日本的なモチーフを主題にVRアートを制作するせきぐち氏。三次元空間を平面的に表現する日本画の特性を、VRという三次元的な表現技法によって再解釈。ほかにも盆栽や生け花と言った空間を活かすという日本美術の特徴をテーマに、VRを用いることで日本人だからこそ表現出来る、情緒的な心で感じる奥行きを表現するというコンセプトの下制作しているという。普段SNSや映像など二次元の上で作品を見たことがある来場者も、実際にVR空間として作品を体験することで、全く異なる実感を得ていたようだった。
今後は国内外で実演を行い、VRアートの認知を増やしていくと語っていた。また、今後MRの普及とともに、空間に絵を描き、三次元で鑑賞するという体験自体がポピュラーになっていく一つの足がかりとしてVRアートを制作しているという。

■プロの演奏を自分の手元でリアルに再現。MRピアノ演奏視聴システム『テオミルン』(日本テレビ放送網株式会社)

SENSORS IGNITION 2016にて初お披露目だったテオミルンが、ホロレンズの発売とともにアップデートを重ね、ARコンテンツとしてパワーアップして帰ってきた。プロのピアニストの手元を実際に見ながらピアノ演奏を行うことができるというコンセプトはそのままに、ARによって自分の手元とCGとをより実体感を持って融合させることに成功した。また以前は手元のみが見える仕様だったものが、ピアニストの全身が再現される作りとなっており、より実在感や説得力が増したものとなっている。パフォーマンスを行う全身を記録できるようになったことでピアノだけではなく、スポーツ選手や歌手といった身体を使った表現を行う分野に発展させていくことを目指すそう。
今後はホロレンズを複数台利用しての同時体験を実現していくという。VR技術で培われたノウハウはそのままARでも活用することができる。今後ARが浸透していく過程の一端を担う作品となっていることは間違いない。

【IoT・クリエイティブゾーン】

■「ロボットとテレビの新たな関係性」「テレビを生かした雑談AI」(日本テレビ放送網株式会社 株式会社NTTデータ NTTレゾナント株式会社)

テレビの放送波を利用し、番組情報や、番組の中で紹介されたお店などについてロボットがユーザーに話しかける形で教えてくれる体験や、テレビの中で行われた会話や番組情報を学習し、ユーザーの番組の趣向に合わせた会話をすることができるようになるAIの体験が出来たブース。テレビと何かを連携させたり、テレビの情報を使った新たなサービスで、テレビそのものを盛り上げていくということにチャレンジしていきたいとのこと。
※展示の内容は記事「テレビ番組と連動したAI仕込み『ロボホン』との会話を「SENSORS IGNITION 2017」で体験!」でも

■アニメの世界を現実にリアライズ!愛すべき相棒があなたのもとへ 『1/8スケール タチコマ』(株式会社 Cerevo)

社内にももともとアニメ好きの社員が多いというCerevo。これまでもアニメ『PSYCHO-PASS』に登場する銃「ドミネーター」を製作、販売し話題になっていた。こういった活動もあって声がかかり、プロダクションI.G.と共同で誰もが親しみを持てるタチコマのロボットを製作した。
様々なプロダクトの展示があったCerevo。今後も、コンピュータの入っていないものにあえてマイコンを搭載してみたり、インターネットの繋がっていないものにつないでいくことで新しい価値が生まれるものを模索していくという。

■お気に入りの音楽を"味わう"体験を。『SQUEEZE MUSIC』(NOMLAB)

音楽を再生しながらそのムードにあったミックスジュースを自動生成するプロダクト。再生中の音楽から感じられるムードをリアルタイムで解析、曲の展開に合わせて様々な味のドリンクがミックスされてでてくる。もちろんそのドリンクは飲むことができ、音楽で盛り上がった気分をそのまま味覚としても味わえるというものになっている。
現在は展示を中心に、様々な新しい音楽体験を模索する企業とのコラボレーションを画策しているという。音楽体験の形は近年音楽フェスやレコードのリバイバルなど、様々なアプローチがなされているが、飲み物として音楽のムードを味わうという楽しみ方も加わっていくだろう。

■スキマ時間に楽々ネイル。画像もプリントできる『Neilプリンター』(株式会社クナイ)

自分で爪に好きな画像を印刷し、簡単にネイルアートとして楽しむことができる。20秒ほどでプリントアウトできるので、ちょっとした待ち時間に簡単に気分を変えることに活用することができる。ショッピングセンターや、携帯電話の販売店、期間限定のイベント会場での展開を見据えており、「ネイル屋さんに行くほどではないけど、簡単におしゃれをしたい」というニーズを汲むことができるような手軽さのものとなっている。

■明日必要な英会話を今日のあなたの会話から生成。英会話支援キット『ELI』(monom)

Bluetoothを搭載したマイクを洋服の襟に装着することで、1日の何気ない会話の内容を記録し、その会話から英会話テキストを作成。実際に自分がしゃべった内容が英語ではどのような表現になるかをスマホアプリで教えてくれる英会話教育支援デバイス。通常の英会話テキストでは、例文をひたすら練習させられるため、学習効率が悪いのではないか?という疑問から始まったこの取り組み。英語で自分の意見を述べることにハードルを感じるビジネスマンがターゲット。現在は開発段階で発売は未定だが、英語教育のソフト開発や、量産なども見据えているという。

■お気に入りのぬいぐるみが最愛の友達に。おしゃべりスピーカー『Pechat』(monom)

Bluetoothを搭載した可愛いボタン型のスピーカーをぬいぐるみに取り付け、スマホから台詞を選ぶことで、まるでぬいぐるみがしゃべっているかのように見せることができる幼児教育向けデバイス。。開発チームの中にこどもを持つ方が居たため、母親の生の声を聞きながら少しでも家事のサポートになる仕組みを作ろうということで開発を進めていったそう。
現状では簡単な相づち程度の会話しかできないが、将来的にはこどもが喋りかけた内容を認識して、可能な限り滑らかな会話の出来るおもちゃとしてヴァージョンアップを重ねていくという。すでに百貨店などで販売しており、アプリをアップデートすればいつでも最新の状態で遊ぶことができる。

■既存のテクノロジーの多角的な使われ方を提案する。メディアアート『干渉する浮遊体』(菱田/阿比留/橋本/水落/柳澤/甲斐)

シャボン玉をガラスのボウルの中に浮かべ、シャボン玉の表面の干渉膜の模様を美しく体験することができるメディアアート作品。鑑賞者がシャボン玉を吹き、ガラスの中に浮かんでいるシャボンが揺れたり、割れたりする現象を検知し音として表現することで、普段気にすることのない神秘的なシャボンの模様を鑑賞者の意識に現前させ、これまで気づかなかった美しさのあり方を体験することができる。
テクノロジーにはその意図されていた用途以外にもこんな使い方がある。そんな気づきを鑑賞者に与えてくれる。シャボン玉の画像認識を担当した水落氏は、今後も認識技術の研究者として開発を進めながら、アートの分野でも技術を活かした作品を発表していくそう。技術者としての顔とアーティストとしての顔それぞれが両輪となり相乗効果を生むキャリアのあり方が、こういった活動を通してより一般的になっていくといいのかもしれない。

■UFOを操り人間を連れ去る"ヒト吸い"ゲーム『ピーポーパニック!』(株式会社ココノヱ)

ペーパークラフトで自作したUFOを使って人を吸う子供向けの体験型ゲーム。壁面プロジェクターと簡単な赤外線ライトのみで制作されているため、様々な会場に持ち込み体験してもらうことが可能。「人を吸うゲーム」というインパクトと、縁日でよく見かける金魚すくいのようなワクワク感、そして自作したUFOをつかって比較的手軽に遊ぶことができるという参加感が、会場の子供人気を集め常にブースが歓声で賑わっていた。今後はゲームメーカーとのコラボレーションや、持ち運びの手軽さゆえの全国展開など、製品としての認知度を上げていくことを目指していくそう。

■世界中どこでもステージ!テキサスでも好評のARゲーム『GUITAR HERO』(Bascule inc.)

カメラで人を認識し、画面に映った人がまるでギターを持って演奏しているかのように見えるARゲーム。パナソニックが「SXSW 2017」でテキサス州オースティンの街の繁華街にあるお店を貸し切りにして展示を行った際に、道に面したウィンドウをスクリーンにして、人目をひく仕掛けを作ろうということで製作したもの。実際の効果はてきめんで、道行く人が皆ギターをかき鳴らし、展示ブースへの誘客は大成功だったそう。

■最新テクノロジーで悪い子を見つけ出す鬼を妄想。『都市のナマハゲ--NAMAHAGE in Tokyo』(市原えつこ+ISIDイノラボ)

秋田県男鹿市で200年以上伝承されてきた「ナマハゲ行事」が持っている、相互監視による集落の維持、子供から大人へのイニシエーション、家族の絆の強化といった機能を現代の生活に即した形で再解釈し、ソーシャルメディアによる相互監視や町中に張り巡らされた監視網により蓄積されたデータベースをもとに、都市に実装する試み。 「秋葉原のナマハゲ」のお面は造形作家の池内啓人氏、衣装はファッションブランドのchlomaが手がけている。この「都市のナマハゲ」は、市原氏がISIDイノラボと共同で行っている「日本のまつりRE-DESIGNプロジェクト」第一弾として制作したもの。

■歌詞が生む心揺さぶる体験を広める『Lyric speaker』(Lyric speaker team)

再生中の曲の歌詞をリアルタイムでモーショングラフィックスとして表示する「Lyric Speaker」。昨年の伊勢丹での発売からここまで、ネットや実店舗で目にする機会が多くなったことで、認知度や概念としてのLyric Speakerへの理解度も高まってきたという。ストリーミングサービスの台頭につれ、歌詞を楽しむ文化は一部の人の中でのみ細々と生き残るもの...という現状を変えていくべく、今後は海外での販売を進めたり、Lyric Speakerを通した歌詞文化の復活を目指した展開を見据えているという。

■必殺技は500円3枚。リアル課金ゲーム『MONEY COLOSSEUM』(株式会社ピラミッドフィルムクアドラ)

お札で戦う格闘ゲーム。誰もが知るお札の肖像画の人物をゲームの中で戦わせることができ、なんと必殺技を繰り出すためには500円玉硬貨3枚を投入することが要求される(展示ではちゃんと返金されました)。昨今の課金することで強くなるスマホゲームアプリの感覚をアーケードゲームの上で再現するというテーマの下に作られており、実際に遊ぶ中で勝つために500円玉を大量に使う瞬間、本当の意味でお金の重みを知ることができる。現在は日本の通貨のみの対応だが、今後は世界の通貨を使えるようにするなどのアップデートも考えているとのこと。

■power of one #layer(藤元翔平)

コンサートで使われるような強力なレーザーと、それに重ね合わせるように投影されたプロジェクターからの映像を有機的に組み合わせることで新たな表現を模索しているアート作品。光と動きをテーマに作品製作を行っている藤本氏。これまで一般的だった静物に対するプロジェクションマッピングとは一線を画す、動いているレーザーに対してプロジェクションを行うという「動対動」の新たな地平の試みと言える。

【SENSORS IGNITION 2017 セッションレポート】
キーノート『グローバルに通用するクリエイティブとは?』
セッション『VRクリエイティブ最前線』
NECスポンサーセッション『AI×映像認識の最前線』
セッション『近未来社会予測 ~AI、ロボット~』
セッション『メディアの先駆者が語る!これから生き残るコンテンツとは?』
HAROiDセッション『テレビ×ネットで生み出すTVCMの新しい価値』
セッション『日本3.0 日本の将来、何に投資すべきか?』

取材・文:兵藤 友哉

1995年生まれ。フリーライター。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系在籍。専らの興味は「メディアテクノロジーの進歩による人間の認知の更新」。卒論のテーマは「2016年時点のインターネットコミュニケーションにおけるGIF画像の果たす/果たした役割」。
Twitter @do_do_tom

撮影︰延原優樹

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