MIKIKO・真鍋大度が語る『国境を超えるクリエイティブの秘訣』

2017.04.04 17:00

3月23日に虎ノ門ヒルズで開催された、テクノロジー×エンターテインメント×ビジネスの祭典「SENSORS IGNITION 2017」。キーノートに登場したのはリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック閉会式でのフラッグハンドオーバーセレモニーや、ドイツで開催された『CeBIT』オープニングセレモニー(現地時間3月19日)での演出が記憶に新しい、演出振付家 MIKIKO氏(以下「M」)とメディアアーティスト 真鍋大度氏(以下「D」)。日本テレビ『SENSORS』プロデューサー 原浩生をモデレーターに、「グローバルに通用するクリエイティブとは?」をテーマにセッションが繰り広げられた。

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モデレーター 原浩生(左)、MIKIKO氏(中)、真鍋大度氏(右)

■テクノロジーとパフォーマンスが融合する過程

--グローバルにご活躍中のお二人ですが、まずは先日行われたばかり、テクノロジーエキスポ『CeBIT』で演出されたオープニングアクトについて教えていただけますでしょうか?

M:
毎年ドイツで開催される『CeBIT』ですが、今年、日本がパートナー国に選ばれ、オープニングセレモニーでパフォーマンス演出をしました。リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニー同様に8分間という制限の中で「日本が考えるテクノロジーと人の関係」をパフォーマンスを通して表現しました。パフォーマーは森山未來くんと、私が主宰しているダンスカンパニーELEVENPLAYが務め、テクノロジー面はライゾマティクスリサーチがチームとして入ってくれました。

ダンサーたちはただ真っ白なキューブと真っ白なパネルを使ってパフォーマンスをしただけなのですが、カメラを通してみるとダンサーが身につけている筋電センサーとパネルとキューブに付いているマーカーに反応して生成されたグラフィックを合成した映像を配信しました。

--ダンサーが持っていたカメラの映像も、リアルタイムで合成して映し出されていましたよね?

M:
はい、目の前で見える世界とカメラを通して見える映像の世界が同時に一つのステージで見えるということを、今回の一番の演出としてこだわりました
D:
カメラの映像にCGを合成するARと異なり、現実世界のオブジェクトの位置と形状を認識し、環境光の情報を用いながらオブジェクトの変形を行うなど新たな試みを行なっています。ホロレンズやMeta VisionなどでAR/MR映像表現が一般的になって来ましたが、さらにその先を行けたかなと。

--テクノロジーとパフォーマンスが融合していくまでの制作のプロセスを教えていただけますか?

D:
ライゾマリサーチが作ったプロトタイプをまずはMIKIKOさんと電通の菅野薫くんを始めとした制作メンバーに見てもらうところから始まります。MIKIKOさんはパフォーマンスを、菅野くんチームはストーリーを、というように役割分担をしてそれぞれがプロジェクトを進めながら、少しずつ全体を構築していく形ですね。

--プロトタイプをみてアイディアは生まれやすいものでしょうか?

M:
これをどのようにパフォーマンスで昇華するのか、というのが私の役目だと思っています。なので毎回、テクノロジーネタはこれが良いと思うという提案や意見を共有しながら、どのような音楽が良いか、どのようなパフォーマンスが合うかということを提案しながらコンテンツを構築しています。
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D:
また、テクノロジーとしてはARMR以外にも、筋肉が収縮した時の微弱電流を検知する筋電センサーを使用しています。このセンサーの面白さは普通のインタラクションとは逆で筋肉が収縮始めた時の信号を検知しているため、筋肉の手を曲げようと思って手を曲げる前に、音が出せるというのがポイントです。
M:
これはダンサー的にはとてもむずかしいデバイスなんです。ただ、森山未來さんは筋肉や関節の動きを理解した上でダンスをされているので、今回初めてライブパフォーマンスで使用することが出来ました。

--森山未來さんがデバイスを使いこなすまでにどのぐらいかかりましたか?

D:
パフォーマーのセンスやスキルが伴わないと上手くダンスの動きを合わせることが難しいデバイスなのですが、森山未來くんはすぐに筋電センサーの特徴を掴んで使いこなしてくれました。
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--このテクノロジーの凄さをお客さんが理解するにはなかなか時間がかかりそうなイメージがありますが、実際の反応はどうでしたか?

M:
反応はとても良かったですね。テクノロジーの細部や詳細は正直分からない方は分からないと思うのですが、見た人はとってはパフォーマンスをマジックでも見たような不思議な感覚になってもらうということが大事だなと思っています。

■リオ五輪フラッグハンドオーバーセレモニー舞台裏

--『CeBIT』はステージ上での演出でしたが、会場全体を使用した昨年のリオ五輪フラッグハンドオーバーセレモニーの準備プロセスについても教えていただけますか?

M:
実はリハーサルが一度も出来ない一発本番という事を承知の上で、準備を進めました。そこで、ライゾマティクスにシミュレーションソフトを作ってもらい、フレームとLEDの光や床のプロジェクションマッピングがダンサーの動きとどう連動するのかイメージしながら練習を続けました。パフォーマンスにおいてはこのシミュレーションソフトが今回の成功の鍵だと思います。
D:
映像の合成データを作成するにも正確な情報が必要になるので、事前に本番会場のスキャンデータを準備した上で、(そのスキャンデータを)演出企画・データ作成・シミュレーションに使用しました。
また、細部にわたるところまで本番を想定したシミュレーションを繰り返しました。カメラ位置も事前に知らされてはいますが、数センチ・数ミリ単位までカメラ位置が決まっているわけではないので、本番のカメラ位置が想定外だったとしても対応可能な補正するソフトを開発し準備していました。

--よく日本らしさと言われる着物や忍者のような演出を使わずに、日本らしさをどう演出・表現したのでしょうか?

M:
実はそこに一番時間をかけました。実際に東京に行きたくなるようなパフォーマンスをいわば"8分間の東京五輪予告編"と考え、今リアルに東京で起きていること、自分たちが考える東京のクールなところを素直に表現することにしました。
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--テレビを通して全世界に配信されたのは、ARグラフィックが合成されている映像ですよね?

D:
はい、ただテレビの前で見ている人が「わぁ!」っと盛り上がる瞬間のAR映像と同じタイミングで、会場の観客も沸く興奮ポイントを同時に作ることによって、テレビを観ている人がARやVRの演出をリアルなものとして感じる様に見立てたり、緻密な設計が行われています。こういったテクニックは過去に行なったARVRプロジェクトの経験から学びました。

--プロジェクトの制作プロセスは、これまでと異なったのでしょうか?

M:
大きな違いは言語コンセプト[Love Sports. Love Tokyo 2020] ありきのコンテンツ構築だったということですね。これは、私にとっては新しい風でした。

※二人によるフラッグハンドオーバーセレモニーの制作秘話は記事「リオ五輪閉会式 真鍋大度・MIKIKOが語る"8分"の舞台裏」にて

■日本のクリエイティブが進化していく為には

--今後、海外の方が来日される際、日本のエンタメビジネスにおいてはどのような課題があると思いますか?

M:
日本のショービズに課題を感じています。"今の最先端の日本"を表現出来る場所がないことです。「ココに行けば今の日本を知ることが出来る」という場所が無いことが今一番の課題かと思います。
ニューヨークに行ってもパリに行っても「あそこにいけば今のニューヨークが見える」「パリのカルチャーがわかる」というような作品や常設劇場がありますが、日本にはほぼありません。
また、毎回準備リハーサルが出来る倉庫を探し、本番パフォーマンスを行うための場所を別で探さないといけないために時間や金銭面での負担がとても多くかかっているのも今の日本の現状です。準備、リハーサル、そして本番まで通して使用できる"場所"があったら、もっとより多くの作品を世の中に発表することが出来ると思っています。

--真鍋さんはヨーロッパだけでなくアジアでの活躍も増えていますが、様々な地域に実際に行かれてみてどうでしょうか?

D:
昨年(アメリカNBCで放映されているリアリティ番組)「America's Got Talent」に出演し、その直後から、全世界のエンターテイメント業界からの問い合わせが増えました。ラスベガスやドバイなど色々なエージェンシーから声がかかりますが、中でも一番エネルギーがあるのは中国。見るだけではなく技術を学びたいというスタンスで問い合わせてくださる企業も多いですね。作品をコピーされるリスクがあるなど注意すべき点も多いのですが、チャンスだと思っています。莫大な予算もあり、表現できる環境も用意してくれる中国に魅力を感じるところもありますが、日本でも同様に作品を発表出来る環境を構築出来るようにして、教育にも繋げていければと考えています。
昨年参加した「America's Got Talent」の模様

--今後の活動にも期待しております、ありがとうございました!

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最後の3名の記念撮影は、"TOKYOGIRL"の[T]

日本を代表するステージパフォーマンスにて常に新しい驚きや感動を与えてくれる二人は、すでに次の新作に向けて動いている。東京ドームシティに2017年4月オープンするGallery AaMoのオープニングで新作ダンス・インスタレーション「phosphere (フォスフィア)」を4月15-16日に世界初披露する。これからもMIKIKO氏・真鍋氏による世界を股にかけた活動に注目していきたい。

【SENSORS IGNITION 2017 レポート】
キーノート『グローバルに通用するクリエイティブとは?』
セッション『VRクリエイティブ最前線』
NECスポンサーセッション『AI×映像認識の最前線』
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HAROiDセッション『テレビ×ネットで生み出すTVCMの新しい価値』
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ライター:中村寛子

大学を卒業後、グローバルデジタルマーケティングカンファレンス、ad:tech/iMedia Summitを主催しているdmg::events Japan株式会社(現Comexposium Japan)に入社。 ad:tech tokyo 2010より、主にコンテンツプログラムの責任者として従事。 また、東京開催以外にもad:tech kyushuやiMedia Brand Summit, Data Summitなど8つのカンファレンスローンチを展開。2015年11月にmash-inc.を設立し、現在女性well-beingを軸に新しいサービスの立ち上げをしながら、プロジェクトベースでプラニング、PRなどにも携わっている。

写真:松平伊織

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