「ビュッフェキャリア」「ていねいな暮らし症候群」「リミットジェニック」って?女子マーケティングの最新トレンド

2017.02.20 08:00

「女子マーケティングの極意」を探るべく、時代をリードするサービスを運営&プロデュースする女子4名が集結。女心を掴むマーケティング術、プロモーションや拡大方法、2017年以降に"来る"サービス、最後は働き方革命まで、広範にわたるトピックを語り尽くした。
実践しているマーケティング手法などについて語り合った前編「刺さるのは"◯◯ジェニック"--女心を掴むマーケティング術」に引き続き、後編では2017年以降に流行りそうなサービスの条件、サービスの世界展開、最後に働き方改革について語り合う。

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左から谷里穂氏(ホリデー株式会社)、木村アリサ祐美氏(Meitu 日本責任者)、正能茉優氏((株)ハピキラFACTORY代表取締役 & ソニー(株)新商品企画担当)、吉田優華子氏(株式会社ドリコム)

■「ネオ時短」「ていねいな暮らし症候群」ーシェアリングエコノミーの先にあるもの

--2017年以降の女性サービスを展望する上で、皆さんが「次はこれが来るのではないか」といったキーワードやご自身や注目しているものをお教えください。

谷:
「プレミアムフライデー」や「パラレルキャリア」といったキーワードが出てきている中で、多様なライフスタイルを支えるサービスが注目されるようになっていくのではないかと思います。例えばイラストコミュニケーションサービスの「pixiv(ピクシブ)」やクリエイターがコンテンツを発表できる「note」などの、仕事に限らず趣味まで、多様なライフスタイルを支えるサービスです。
吉田:
背景にシェアリングエコノミーの流行がありますよね。例えばメルカリを使ったことがある人は分かると思うのですが、出品するとすぐに売れるんです。自分の要らないものを売ることもできるし、自分の作ったものを売っても良い。言ってしまえば、副業ですよね。他にも駐車場の有効活用やドレスのレンタルなど、シェアリングエコノミーは拡大しつつあります。所有という概念が変わりつつあるのかもしれません。
正能:
私は「ネオ時短」と呼んでいるのですが、時短の概念も変わっていくと思います。今までの時短は時間を短くすればするほど良いとされていましたが、その分、質も落ちてしまうのが当たり前でした。例えば、夕食を作る時間がないから、レトルト食品を使って、適当に食事をとっても、盛り付けなんて気にする必要がなかったんです。でも今は、これだけSNSが流行っているので、常に人に見られる、第三者目線で発信していくことが前提になります。そこで去年流行ったのが「おにぎらず」であり、「ニトスキ」なのです。今までは時間と質がトレードオフの関係でしたが、これからは時間をかけずに質もそれっぽいというものが流行っていくのではないかと思っています。
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正能茉優氏((株)ハピキラFACTORY代表取締役 & ソニー(株)新商品企画担当):1991年東京生まれ。慶應義塾大学在学中の2012年、地方の商材をかわいくプロデュースし発信する(株)ハピキラFACTORYを起業。大学卒業後は広告代理店に就職。現在は、ソニーで新規事業・新商品を開発しながら、自社の経営も行う「パラレルキャリア女子」。 その「副業」という働き方の経験を活かし、経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」の委員も務める。 自社の活動としては、2017年3月より、日本郵便とコラボした商品群が全国24,000局の郵便局で発売予定。北海道天塩町「政策アドバイザー」も務める。

正能:
もう一つあると思うのが、「ていねいに暮らしたい症候群」。例えば、同じ「お泊まり女子会」をとっても、以前までは都内のホテルに集まって泊まるような「キラキラ女子会」が流行っていました。でも今は、鎌倉のシェアハウスでのんびり過ごすような、丁寧にきちんと身の回りの範囲で幸せに暮らしている私を演出したがる女の子が増えていると感じています。インスタを眺めていても、「XXごはん」と自分の名前をつけたご飯のハッシュタグ写真が目立ったり。女子力の定義が"キラキラ華やか"から、身の回りのことをきちんとこなしながら丁寧に生きていく方向に変わりつつあるのではないか。こうした女子たちを「ていねいな暮らし症候群」と最近呼んでいます。
谷:
それこそ仕事にかぎらず、生き方そのものの価値観の軸が増えつつある気がします。むしろ、「軸が一つって危うくない?」といった価値観が東京から地方に移住する理由になっているというか。東京では仕事やキャリアに重きが置かれがちですが、地方だと人柄や生活が重視される。最近では地方の暮らしにフォーカスする雑誌やメディアも増えつつあります。
正能:
それはもちろん時代論もあるのですが、やはり世代論も関係してくるところですよね。私たちはミレニアル世代と言われますが、私たちの親であるバブル世代はとりあえず仕事だけを超頑張って、仕事で120点を取ればそれで人生全体も120点でした。でも、そんな親たちに育てられた私たち世代は、リーマンショックもあったし、東日本大震災もあったし、親たちの持っているそんな価値観に揺らぎが生じたと言えるかもしれません。ミレニアル世代が持つ価値観は、仕事、家族、友達、趣味、それこそ彼氏もそれぞれは70点でもいいから人生全体としてバランスよくこなすことで120点とりたいといいます。たしかに自分自身もそうですし、こうした人が増えているそうです。
谷:
昔は有名人が載っているとみんなが買うといった時代でしたが、今は一般の方でもスターになれる時代。すでに流行っているので、流行っていることが示していますよね、という表現に変えてもらえるとうれしいです。
吉田:
私はやはりライブ感に注目しています。「Pass!」はまさにライブコミュニケーションから発想して生まれたサービスですが、これからほとんどのサービスはライブ要素が必ずついてくると思います。Facebookやインスタグラムではライブ機能が一般化しつつりますし、料理レシピ系も動画が一般的になりました。あとは出会い系すら写真ではなく、動画で自己表現をするようになりつつあります。
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吉田優華子氏(株式会社ドリコム):2013年新卒でドリコムへ入社。1年目でゲームアプリディレクター、2年目で子会社社長、3年目で新規事業立ち上げ、4年目、新規事業部でPass!のディレクターとして企画、マーケティング、プロモーションなど幅広く活躍。

吉田:
さらにいえば、コミュニケーションにおいて伝えたいのに伝えられないもどかしさは今後なくなっていくのではないでしょうか。海外では電話ではなくFacetimeで話すことが当たり前になりつつありますし、日本でも若い人はLINEを使って動画で話すようになっています。セルフィーもはじめは恥ずかしい行為だったのが、今ではスタンダードになっている感じに近いかもしれません。今後は動画コミュニケーションが主流になることを念頭において、コミュニケーションサービスを設計していくことが不可欠だと思います。

■「フォトジェニック」の次は「リミットジェニック」?

--今後"ライブ感"が重要になっていくとした上で、いま注目しているサービスは何でしょうか?

正能:
「SHOWROOM」が流行るのは納得ですね。一般の女の子がただご飯を食べている様子だけだったりするのですが、だからこそ距離も近くて、楽しく毎日見れて、継続率が高かったり。どこかのアイドルが「この食べ物いいよ」というよりも、身近な一般の女の子が毎日のようにおいしそうに食べているものの方がいいと思えるわけで、だからこそ認知から購入までのコンバージョン率も保ちやすいですよね。
谷:
テキストだけよりも、伝わる情報がすごく多いですよね。しかもそれがライブだとよりリアル。
正能:
でも逆の発想でいくと、伝わるっていうことがうまくいきすぎていて、すれ違うことによる悲しさ切なさといった昔芽生えていた感情が失われつつあるというか。胸がぎゅっとなる感じの感情に飢えつつあるのではないかと感じます。その意味で西野カナさんは本当にすごい。東京にいる子も、地方にいる子も、横串で胸がぎゅっとなる歌詞になっているんですよね。だから、流行る。みんながすごく便利な世の中に生きるようになって、悲しい思いをする機会がすごく減りつつあります。心臓がぎゅっとするような感情をわざわざ取りにいかないかぎりは、それを得たり味わったりすることができない。だから「エモさ」が喜ばれる。これを的確に表現できることがすごいと思います。
谷:
便利さと引き換えに失った切ない感情を逆張りで表現すると。
正能:
関連して、「リミットジェニック」という考え方もあるのではないかと思います。例えば、10秒以内に食べなければいけないわらび餅や、30秒以内に食べなきゃいけない謎のシュークリームといった「リミットスイーツ」と呼ばれるものがあります。この時間以内に食べないと、美味しくなくなってしまうといったものなのですが、これがすごく流行っているんです。
吉田:
「幸せが逃げてしまう」とかスピリチュアルな話ではないんですね。
正能:
フォトジェニックなものは、もう一周したと思うんです。さらにストーリージェニックなものも当たり前になりつつある中で、次に女の子が何をもって楽しみやリア充感を演出していくかということの一つに「リミットジェニック」があるのではないかと。そのときしか買えない、そのときしか食べられない、切り口の一つとしてあるのではないかと思います。
谷:
でもいいですよね。実際に人が行かなければいけないので、そこでしか得られないリアルな体験や感情を経験することができる。キーワードになるかもしれないですね。

■「グローバルなことをローカルに」サービスを世界展開するために必要な視点

--今後サービスを世界に広げていくときに、世界と日本のマーケットの違いを理解しながら、進出するためには何がポイントになるでしょうか?

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木村アリサ祐美氏(Meitu 日本責任者):日本語、中国語、英語のトリリンガルで、日中米で教育を受け、アメリカと日本及び中国のテック業界にて活躍中。 大学入学前から、上海にて不動産コンサル、翻訳、会議通訳関係の業務に3年間携わり、関西学院大学の法律学部在籍中の頃からバイオテクノロジーおよびハードウェア業界におけるいくつかの国際的なM&A案件に参加。 大学卒業後米国でファイナンス、iOSエンジニアニングの学習、及びシリコンバレーにてVC、コンサルティング事業を展開など、グローバルかつ多様な市場・文化での豊富なビジネス経験を有する。 2013年関西学院大学法学部卒業し、スピネーカー・パートナーズ(SPI)のパートナーとなり、ベンチャーキャピタル事業を立ち上げた。 2016年世界中の女子なら誰でも知っているアプリBeautyPlusを開発したMeitu社の日本総責任者として就任。

木村:
日本人は「日本と海外」というような捉え方をすることが多いと思います。本当は「日本と海外」ではなく、アメリカ、イギリス、フランス、それぞれが一つの国なわけです。当然、国ごとに政治・経済・文化は様々です。東京と大阪が違うように、各国の具体的な都市や居住者に市場調査を行うべきだと思います。東京と大阪がどう違うのかを調査するように、海外でも同じレベルでマーケティングを行う。その上でローカライズしたプランニングをするべきだと思います。つまり、グローバルなことをローカルに行っていくことが重要ではないでしょうか。
正能:
海外の人に対して日本の地方のものを売っていくことを考えたときに、私も思うことが二つあります。一つは「可愛い」の定義が日本と世界では全く違うということです。2年前に「NY NOW」という世界最大のギフトショーに行きました。そこでお酒を飲む升を出品したのですが、事前にセントラルパークで「どれが一番可愛いと思いますか?」というボードを持って1日立ち続けました。すると、まず「可愛い」と思う色味が全く違うんですね。日本の女の子であれば白やピンクを可愛いと思うに対して、NYの人たちは原色でパキっとしたものがいいというんです。

もう一つは販路をどう獲得するかということ。深夜の新宿や六本木のドン・キホーテで韓国や中国のアジア系の人がやたら日本のものを買い込んでいる光景を見たことありますよね。日本ではご飯を食べる前に買い物をしますが、アジアの人たちはご飯を食べ終わった後に買い物をするというのです。夕食を食べてからお店に行こうと思ったら、ドンキくらいしか空いてないんですね。だからドンキで買うそうなんです。海外の人たちの習慣をきちんと理解した上で、適切な販路を開拓していかないことには「クールジャパンは成立しないかもな」と思いました。
木村:
日本には日本人しかない、つまりみんなアジア人じゃないですか。でも海外には色んな人種の人がいて、ミックスがいます。こうした人たちの文化を尊敬することはもちろん大事。例えば化粧品の色にしても白を前提にしたら、黒人の人は綺麗じゃないといった印象を与えかねません。こうしたイメージを与えてはいけないということは大事です。
正能:
アニメの影響などもあるかもしれませんが、日本の可愛いは超一元的に感じます。目が大きくて、鼻が高くて、背が小さい。あとは社会経済的にみても、旦那さんが働いて、奥さんが家で待つというのが当たり前の時代もありました。これからは単純に、もっと平均寿命が延びていくなかで働ける期間も増えるし、そもそも日本は労働力不足だし、すべてを旦那さんに任せるという生き方が成り立ちにくくなっています。そのなかで少しずつ"可愛い"の価値観も変わっていくのではないか、働く女子としては変わってほしいなとも思います(笑)

■「ビュッフェキャリア」十人十色のワークスタイルとバランスがあっていい

--今後の日本のとても大きなテーマとして働き方改革があります。女性の活躍や長時間労働の是正を含め、理想的な働き方やワークライフバランスをどのように考えていらっしゃいますか?

木村:
私は働くのが好きなので朝の10時から夜の4時まで働くこと日もあって、その時は全く問題がありません。一方で子供がいる方の場合は幼稚園のお迎えがあるかもしれないので、朝の10時から16時までといったこともあり得る。もしかしたら会社に行かずに在宅で仕事ができるかもしれません。つまり人それぞれ求めるワークライフバランスが異なるので、それが自由に認められる世界が日本でも実現してほしいです。
吉田:
会社にも色んな国のバックグラウンドを持つ人が増えつつありますよね。うちの会社にも様々な国籍の人が増えつつありますが、一緒に働いていると働き方の多様性にすごく気づかされるんです。アメリカ人の場合は17時には家に帰り、ファミリーサービスをするのが当たり前だったりします。日本では逆に仕事優先とされることが多いですが、ここら辺の価値観もフレキシブルにならざるを得ない状況になっていくのではないでしょうか。そうしないことには一人一人の生産性は上がっていきませんし、モチベーションダウンにもつながってしまうかもしれません。つまり色んな国の人が職場にいることで、変化も加速していくと思います。
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谷里穂氏(ホリデー株式会社 コミュニティマネージャー):1991年生まれ。これまで日本全国で地元の人と地元の魅力を再発見/発信するワークショップを90回以上企画開催。訪れた都道府県は46。2017年2月からは熊本と東京でのに拠点生活を開始し、地域と東京をつなぐ活動を行っている。

谷:
私自身が「でかける人を増やす」というサービスをやっていることもあり、でかけることが大好きなんです。そのため、仕事ばかりでお出かけにいけないという人生は違うと思っています。仕事だけではなく、趣味も含めて自分の他の好きなことができるようなワークライフバランスを目指しています。だとすれば、東京でしかキャリアを積めない方法は自分には合ってないのではないかと感じています。ちょうど今月から九州と二拠点生活を始めることになっているので、自分自身が納得した仕事をこなしながら、それ以外の部分を充実させていく生き方にチャレンジしようと思っています。
正能:
私は自分の会社をかれこれ5年続けながら、SONYでも働いています。いわゆるパラレルキャリアです。副業をしていると、一つの仕事を頑張ってきた人からはネガティブに捉えられてしまうことも少なくないんです。でも、ホテルのビュッフェでカレーもパスタもプリンも食べたいときってあるじゃないですか。食べたいものを、食べたいだけ、バランス良く食べる。これは働き方にも当てはまると思っていて、私はこの働き方を「ビュッフェキャリア」と呼んでいます。別にカレーだけを食べたい人が、カレーを食べ続けてもいい。私はSONYという大企業で働きながらも、自分の会社もやりたい。自分の働き方、生き方を好きなバランスで組み合わせて生きられるようになればいいとすごく思います。

「ネオ時短」「ていねいな暮らし症候群」「リミットジェニック」「ビュッフェキャリア」など、様々なキーワードが飛び出した今回のSENSORS SALON。たしかにこうしたキーワードは目まぐるしく変わる時代のトレンドを捉えている。一方で、世代・地域・国籍といった項目できめ細かいマーケティングが必要になるのは各者の共通認識としてあるようだ。2017年以降も、彼女たちのサービスの動向からさらなる女子マーケティングのヒントを探っていきたい。

取材・文:長谷川リョー

SENSORS Senior Editor
1990年生まれ。リクルートホールディングスを経て、独立。『SENSORS』や『WIRED.jp』などで編集/ライティング。『PLANETS』や『HIP』では構成を行う。これまで『週刊プレイボーイ』『GQ JAPAN』WEBなどで執筆。修士(学際情報学)。将来の夢は馬主になることです。
Twitter:@_ryh
Mail: ry.h0508[アット]gmail.com

カメラマン︰松平伊織

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